この世界は魔女のもの
この世界は、魔女たちによって作られたと言われている。
火の魔女が光を灯して世界を照らし、水の魔女が枯れ果てた大地に恵みをもたらした。風の魔女が空気を巡らせ、土の魔女が確かなる足場を生み出す。
さらに無数の魔女たちがそれぞれの力を振るい、世界に豊かな色彩を添えていった。そうしてすべての営みの土台が完成したのだと。
それゆえに、この世界では魔女の信仰が根付いている。人々は皆、彼女たちへの感謝を胸に抱き、日々の歩みを進めているのだった。
「私の可愛いがってる子がね! 今度、結婚するみたいなの!」
プランテアが淹れたハーブティーの香りが漂う部屋に、甲高い声が響きわたる。
花の魔女であるプランテアの目の前で、動物の魔女であるアルミナは興奮のあまり頬を紅潮させ、頑丈な木の机を両手でバンバンと激しく叩いていた。
「お前さんの可愛がってる子ってあれかい。何かどっかの国で、親衛隊長をやってたわよね」
「アルバードよ。アルバード・アルミナって、ちゃんとかっこいい素敵な名前があの子にはあるのよ」
「お前さん、自分の名前をそのまま人間に与えてるのかい」
「あら、別にいいでしょう。あの子は私の自慢なんだから」
長く美しい髪を背に流しながら、アルミナは誇らしげに語った。
そして、彼女の激しい机叩きに驚いて一時は部屋の隅へと避難していた小動物たちが、トコトコと警戒を解いて戻ってくる。
その気配に気づくと、アルミナは先ほどまでの勢いが嘘のようにふっと優しい笑みを浮かべ、すぐ傍らに寄り添ってきたウサギや小鳥たちに手際よく木の実を分け与えていく。
「アルバードはねえ、昔から仕事一筋の生真面目人間だから、恋なんて今まで何一つしてこなかったの! 私はとっても……ええ、とっ〜ても心配していたのよ!」
「それで何かい。わざわざあの『恋の魔女』であるアイーシャにでも相談しに行ったのかい」
プランテアはあきれたように息をつきながら、頭の中にあの浮かれたピンク髪の女を思い浮かべる。
人間の営みに『恋』などというややこしい感情を持ち込み、繁殖の妨げとなる劇薬を撒き散らした、自分勝手な同胞のひとりだ。
「いいえ! あんなトラブルメーカーの魔女に相談するまでもなく、私は私の力で、あの子の心に恋の芽を生い茂らせてやったのよ!」
ふんすと誇らしげに胸を張り、アルミナは自分の掌を空へと向けた。
きらきらと光の粒が舞い散り、まるで静まり返った水面に波紋が広がるように、空間にぼんやりとした色彩が浮かび上がる。やがてそれは鮮明になり、男女の姿を空中へと映し出した。だが、プランテアはそこで首を傾げる。
「そう言えば、アルバードは男なのかい? 女なのかい? どっちだい」
「アルバードって言ったら、どう聞いたって男の子の名前でしょ! もう、プランテアは普段から人間に無関心すぎるんだから」
「お前さんだって、昔から動物にしか興味がなかったじゃないか。似た者同士だろ」
プランテアの尤もな指摘に、アルミナは「ふん」とそっぽを向く。しかしすぐに思い出したように、うっとりと両手で自分の頬を包み込んだ。
「でもね、アルバードだけは特別なの。あの子は本当に、世界一可愛くて愛おしいんだから!」
すっかり恋する乙女の顔になって身悶えるアルミナ。その足元では、創造主の熱すぎる愛情を理解しているのかいないのか、リスがのんびりと木の実の殻をカリカリと齧っていた。
やがて、アルミナが指をパチンと鳴らすと、空中に浮かんだ映像の中心がスッと切り替わり、一人の男の顔が大きく映し出される。
そこに写っていたのは、茶色い髪を後ろで一つにまとめ、日に焼けた浅黒い肌に、鋭い片目が潰れた、いかにも歴戦の猛者といった佇まいの屈強な男だった。
「熊みたいで可愛いでしょ」
「さあ。アタイは人間を動物の基準で測ったことはないねえ」
空中に浮かぶ映像は、相変わらずアルバードの姿ばかりを追っている。たまに結婚相手であろうもう一人の人物がフレームの端に掠めるものの、映るのはせいぜい衣装の裾や、真っ白な手、あるいはほっそりとした肩のあたりだけで、肝心の顔は一向に見えてこない。
アルミナはそんなことお構いなしに、アルバードがどれほど強くて勇ましく、それでいて野良犬や小鳥たちに優しいかを熱っぽくまくし立てていた。
子供のころのアルバードはこうだった、初めて酒を口にしたときのアルバードはひどくむせ返っていた、最近は目尻の皺が増えてきたけれどそれもまた素敵だ――。
何度も聞かされたような、もしくは初めて聞くかもしれないアルバードの武勇伝と惚気話を、いつもの如く右から左へ聞き流しながら、プランテアは面倒くさそうにすいっと指先を動かした。
「あっ! ちょっと、どうしてアルバード以外を映すのよ!」
「何さ。結婚相手の顔くらい見せてくれたっていいだろ。あいにく、アタイの興味はアルバードの相手がどんな奴なのかに向いてるんでね」
そう言って、プランテアが強引に視点をずらしたその先――映し出された結婚相手の姿を見て、彼女は思わずぐったりと大きなため息を吐き出した。
アルバードの隣にぴったりと寄り添っていたのは、今まさにプランテアの目の前で茶を啜っているアルミナと、髪の毛の一本に至るまで瓜二つの女性だったからだ。
「お前さん、これは……」
アルミナは、わざとらしくフンと顔を背け、気まずそうにぷるぷると唇を尖らせてみせる。
「……ホムンクルス、というやつよ。文句ある?」
ホムンクルス。それは、魔女の直接的な御業や加護を一切借りず、健気な人間たちの知恵と技術。『錬金術』によって生み出された、人造人間。
「だってだってだって、嫌じゃない! 育て上げた私の可愛いアルバードが、名も知れぬ人間の女なんかに奪われるなんて! でもねえ、それと同じくらい、あの子の血筋が此処で途絶えてしまうのも私は我慢できなかったのよ!」
「別にアタイは何も言ってないだろ。好きにすればいいさ」
「いいえ! さっきからその冷ややかな瞳が、何か言いたげに私に向けられていたわ!」
興奮して捲し立てるアルミナを横目に、プランテアは呆れたように肩を竦めた。
「それにしても、随分とまた上手く出来てるじゃないか。正しく、お前さんの生き写しだ。どうやって造ったんだい? まさか人間が編み出した一般的なレシピではないだろう」
プランテアが興味深げに尋ねると、アルミナは自慢げにふふんと胸を張った。
「当然よ! ありふれた素材なんて使ってないわ。若い人間の死体に、長い時を経て魔力を失った魔女の抜け殻。それから、とっておきのスパイスとして――私の心臓の一部をほんの少しだけ混ぜて造り上げた、まさに私自身の分身とも言える『渾身のホムンクルス』よ!」
それは、もはや錬金術の範疇を超えた、禁忌の領域だった。人間の死体、魔女の殻、そして自身の心臓。死と再生、肉体と魂の冒涜。
例えそれが愛情という名の衝動から生まれたとしても、人の理も魔女の秩序も外れた、ただの『化け物』と呼ぶべき存在。
プランテアはそう確信したが、アルミナのあまりに純粋で狂気じみた熱意を前に、ただ静かにクッキーを一つ摘み上げ、一口かじって黙り込むしかなかった。
「人間の知識から起きる現象なんてせいぜい小さな奇跡の真似事止まりよ。けれどね、私たち魔女の圧倒的な業であれば、もっと大きくて鮮やかな奇跡を生み出すことができるの。そして、あのホムンクルスこそは私の奇跡を現実にするために産み落とされた最高傑作よ。そう、私とアルバードの間に新しい命を授かり、子供を産むという奇跡をね!」
得意満面に言い放つアルミナに対し、プランテアは冷めた茶をひとくち飲み、ぼそりと釘を刺す。
「魔女法では、人間との繁殖は厳禁とされていなかったかい」
「だからこそのホムンクルスよ! 法律の網を華麗に潜り抜けるための最高の手法だわ!」
「呆れたねぇ。そこまでして執着するってことは、お前さん、もしかしてあの人間に恋でもしてるのかい」
プランテアの乾いた問いかけに、アルミナは「げっ」とでも言いたげに露骨に顔をしかめた。
「恋? この私が、ちっぽけな人間に? もう、プランテアったら冗談がきついわね。私がアルバードに向ける感情なんて、そんな陳腐なものじゃないわ。そうね、例えるなら――手塩にかけて育て上げた愛しい子らに対する、底なしの愛着よ!」
「愛着ねぇ……。じゃあお前さんにとって、そのアルバードって男は、お前さんが世界に創造した動物たちと何ら変わりないってわけかい」
やれやれと首を振りながら、プランテアは皿の上のクッキーを指先で細かく砕き、ちょいちょいと手招きをする。
すると、気配を察したモルモットたちがどこからともなくちょろちょろと集まり、プイプイと愛らしい鳴き声を上げてクッキーの欠片を懸命にむしゃむしゃとかじり始めた。
その愛くるしい光景に目を細めたアルミナは、モルモットの一匹をひょいと両手で掬い上げ、自分の頬にすりすり押し当てながら甘ったるい声を漏らす。
「ふふ、もちろん私が世界に生み出した動物たちも世界一可愛いわ。でもね、アルバードはそれとは少し違うのよ」
アルミナはふと、窓の外の青空の向こう――人間の住む街の方角へと、冷ややかな瞳を向けた。
「だってあの子は、あの忌々しい『人間の魔女ヒューミィ』がこの世界に創り出した、愚かな生き物。正直に言うとね、私の子を害する人間なんて全員消えてなくなればいいと思っているわ。もっと言えば、あの傲慢なヒューミィ自身が大嫌い。……いいえ、そもそも、自分が一番偉いとでも言いたげなヒューミィを心の底から愛している魔女なんているかしら? 私たちがせっかく慈しんで創造したこの美しい楽園において、一番不要で、一番邪魔な害虫――それが、人間の魔女ヒューミィが産み落とした、人間という生き物よ」
「それを分かっていながら、どうしてアルバードの血を残したいんだい」
プランテアの淡々とした問いかけに、アルミナは遠い目をしながら、ふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「もう、何十年も昔のことよ。退屈を持て余して人間の街の近くを散歩していたら、森の奥から私の子らに呼ばれたのよ。それでね、言われるがままに足を運んでみると、本当に驚いたわ。沢山の動物たちが、まだ物心もつかない一人の人間の赤ん坊に群がっていたのよ」
「へぇ。たまにいるさね。動物や魔物と深い心を交わす、変わった人間ってのがね」
「そんな凡百の人間と一緒にしないで。意思疎通すらままならない赤子の頃から、あの子は群れの主のように自然に動物たちを従えていたのよ。だからね、私も興味を惹かれて、シカに姿を変えてこっそりあの子の様子を観察していたのよ」
懐かしい思い出を愛おしむように感嘆の息を吐き出しながら、モルモットを離し今度は肩に乗るリスの柔らかい毛並みを優しく指先で撫でる。
「凄いわ、アルバードは。動物の魔女である私と同じくらい、いや、時にはそれ以上に、この子たちと純粋に心を通わせるのよ……。あんな風に動物たちから愛される人間なんて他にはいないわ。そんなの、最高に決まっているじゃない。ええ、だからこそ私は、あんな奇跡のような才能を持ったあの子の血統を、たった一代で終わらせるなんて絶対に許されないと思ったのよ」
「……じゃあ、万が一にもそのホムンクルスから生まれたアルバードの子が、お前さんの期待に反して動物たちに愛されなかったらどうするんだい」
プランテアの問いに、アルミナは微塵の迷いもなく胸を張ってみせる。
「あら、そんな心配はいらないわ。そのためにこそ、私の心臓の欠片をホムンクルスに混ぜ込んだのですもの! 最初はね、ちゃんとアルバードにも普通に人間の女と子供を作らせようかとも考えたわ。でも、そうして生まれてくるのは、あの『人間の魔女ヒューミィ』の気配が色濃く混じった、どこにでもいる雑多な人間よ! せっかくのアルバードの純粋な資質が濁ってしまうわ。……もっとも、本音を言えば、いくら人造人間だとしても人間の死体なんて使いたくはなかったわよ。でも、魔女の抜け殻と私の心臓だけじゃ器として形を保てないし、流石に法に引っかかるかと思って妥協したのよ」
涼しい顔でとんでもない狂気を語る親友を横目に、プランテアはそっと内心で頭を抱えた。
(これ、今すぐ『魔女監督院』に正式に通報した方がいい案件なんじゃないかい……?)
しかし次に脳裏へよぎったのは、もし監督院にチクったことがバレたが最後、怒り狂ったアルミナによって自分の育てている庭の植物や花々を根こそぎ食い荒らし、枯れ散らかされるという阿鼻叫喚の未来図だった。
長年の付き合いゆえの処世術として、プランテアは「見なかったこと、聞かなかったこと」にするのが身のためだと瞬時に悟り、静かに目を伏せることに決めた。
そもそも、大半の魔女たちは口を揃えて「人間なんて大嫌いだ」と吐き捨てるくせに、いざ自分たちが創造したものに深い愛を注ぐ人間の個体を見つけると、なぜか急に面白がり、面白半分で人里から誘拐したり、自分の庭に監禁したり、果ては自分好みの血を残そうと強引な繁殖を要求したりと、トラブルの種が尽きることはない。
まさか、あの理性的なはずのアルミナまで、そんなどす黒い独占欲に呑まれる一員になってしまうとは。
人間を創造したヒューミィも、自分が生み出した「人間」という存在が、同胞である魔女たちの狂気をここまで狂い咲かせる原因になるとは思っていなかっただろう。
ヒューミィという奴は、本当に何とも罪深く、そして厄介な生き物を創り出してくれたものだと、プランテアは渋い顔でカップに残ったハーブティーを飲み干す。
「ふふっ、アルバードのことになると、つい熱が入って長話をしすぎちゃうわね。ちょっとはしたなかったかしら」
アルミナは上品にふふっと笑いながら、紅潮した頬をパタパタと両手で仰いでクールダウンさせる。
「ああ、それでね。本題はここからなの。私の可愛いアルバードと、私の最高傑作であるホムンクルスがめでたく結婚することになったでしょう? その件でね、長年の親友であるプランテアに、ちょっと折り入ってお願いがあるのよ」
「はいはい、何だい。嫌な予感しかしないけど、一応聞いておくさ」
「ねえ、二人のために素敵な花畑を作ってくれないかしら。そうね、こぢんまりとした、でもどこまでもロマンチックなプライベート花畑。そこで、ひっそりとあたたかな結婚式を挙げたいのよ」
「ちょっと待ちな。アルバードの国だって、それなりに立派な教会くらいあるだろうに」
「あるわよ、もちろん! でも、そこはほら、愚かで俗な人間がいっぱい群がっているでしょう。私もせっかくの晴れ舞台に出席するんだから、人間の作った建物や、見知らぬ人間どもがわんさかいるような場所で式を挙げさせるなんて耐えられないわ!」
指先を合わせて、理想のウェディングプランを次々と早口でまくし立てる。
「そうね、場所の条件としては、すぐ傍にきらきら光る綺麗な湖が欲しいわね。周囲は静寂に包まれた深い森で完全に囲って、お花の品種は純白のユリは絶対に欠かせないわ。それから、せっかくの大きなお祝いだもの、私の可愛い妹たち――水底で気ままに暮らしている『魚の魔女』や、豊かな森の音楽隊である『虫の魔女』も全員招待して、盛大にお祝いしたいの!」
「……おいおい。そんな盛大に魔女たちが集まって人里離れた森に特設会場なんて作ったら、さすがに魔女監督院の連中にすぐバレるさね。それに、アルバードは人間だろ? だったら彼にも彼なりの人間関係や、式に呼びたい友人知人くらいいるんじゃないのかい」
すると、先ほどまで少女のように華やいでいたアルミナの表情から、ふっと光が消え失せた。
「呼びたくないわ。ヒューミィの子なんて、一人たりとも私の晴れ舞台の視界に入れたくないもの」
そしてぷいと顔を背け、忌々しそうに語りだす。
「……それにね、実は厄介なことに、アルバードの部下である一人の男が、私の造ったホムンクルスに対して『どうも様子がおかしい、何か裏がある』なんて勘繰ってきてね。あまつさえ、アルバードから引き離そうと、連日あの手この手で邪魔をしてくるのよ」
予想外のトラブルの告白に、プランテアは思わず大きく目をパチクリと見開いた。そして、脳裏に浮かんだ「常識的な人間の部下」の苦労を想像して、こらえきれずにお腹を抱えて笑い出す。
「あはは、あははは! なんだいそいつは! 上司の不可解な結婚に、必命でブレーキをかけようとしている忠実な部下じゃないかい! 最高だねぇ、よっぽど苦労してるんだろうねえ、その人間の部下は!」
「もう、プランテアってば、何がおかしいのよ。笑いごとじゃないわよ、こっちは真剣なんだから!」
ジト目で睨みつけてくるアルミナをよそに、プランテアは涙を拭いながらなおもからかうようにニヤニヤと笑う。
「いやぁ、人間の中にもたまに鼻の利く厄介なのがいるもんだねぇ。で、どうするんだい? その邪魔な部下は。まさか、お前さんの可愛いペットの肥やしにでもするつもりかい」
「殺めたりなんてしないわよ。そんなことをしたら、ヒューミィの鼻が利いて、数秒後にはすっ飛んでくるもの。あいつは自分の子の運命が魔女に左右されるのを極端に嫌うからね」
「どの魔女も似たようなものさね。だからこそ、魔女法なんてものができたのだから」
「……なんにせよ、せっかくここまで慎重に育て上げてきた私の計画が、一発で全部おジャンになっちゃうわ」
アルミナは頭を抱えるように両手でこめかみを押さえ、ため息をつく。狂気に満ちた愛情の裏で、その計算高さとヒューミィに対する警戒心だけは、さすが何百年をも生きる魔女のそれであった。
「それにしても、魔女の造った完璧なホムンクルスをそこまで鋭く怪しむなんてねぇ。もしかしたらその部下の人間、ただ勘がいいだけじゃなくて、あのヒューミィが裏で何かしら干渉しているかもしれないねえ」
プランテアが面白そうにニヤリと笑いながら紅茶を啜ると、アルミナの血の気がすっと引いた。
「えっ……!? そんな、魔女による干渉が許されていいわけ!?」
「さあねえ。ヒューミィは、自分の可愛い我が子である人間たちが、私たち魔女に誘拐されたり、いいように弄ばれたりしている現状をずっと問題視してたからね。だから最近では、人間の中に魔力や不自然な異変にやけに敏感な個体を紛れ込ませている。なんて噂も、囁かれているさね」
「そんなのってアリ!? もし本当にあの薄気味悪いヒューミィが裏で関わっているのだとしたら……ねえ、いっそ一か八か、その邪魔な部下を丸ごと消し去るために奇襲でも仕掛けてみる? いいえ、でも、ここで下手に人間の姿を消したりしたら、アルバードの結婚相手が魔女による介入だって悟られる可能性の方が高いかしら……あぁ、もう! 本当に、どこまでいっても邪魔くさい魔女ね! ねぇ、プランテア、何か最高にスマートで完璧な解決方法はないかしら!」
「人間の魔女を出し抜く方法かい?」
「ええ! 私と愛しいアルバードの最高に素敵で平穏な結婚生活を邪魔する、すべての障壁を取り除くための妙案よ!」
深刻に頭を抱えて地団駄を踏むアルミナを尻目に、プランテアは「やれやれ」と肩をすくめながらも、その瞳にはどこか楽しげな悪戯の色が浮かんでいた。
魔女たちの優雅で不気味なお茶会は、いつまでも愉快げに、底意地の悪い笑い声とともに続いていく。
その華やかなティーテーブルの裏で、突然人生の歯車を狂わされた当の人間たちの意思や都合など、そこには一片たりとも存在しない。
そう、ここはそういう世界だ。
気まぐれな魔女たちの目に留まり、気に入られてしまったが最後。
人間はただの愛玩動物のように、あるいは着せ替え人形のように、魔女の思うままに、好きなままに、その人生のすべてを鮮やかに、そして無慈悲に支配されていくのだった。
読んでくださり、ありがとうございます。
感想などをいただけると、執筆の励みになります。
これからも小説を投稿していこうと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。




