第二十二話 新たな脅威と、王家の宝珠
第二十二話 新たな脅威と、王家の宝珠
リリア王女を救出した健一たち無双の老兵団は、王宮内の貴賓館へと戻った。リリアは、セレスの献身的な看護と、健一のスキル 精神汚染解除による魔力治療によって、徐々に回復の兆しを見せていた。しかし、彼女の心には、神託の民によって受けた深い傷跡が残っていた。
「リリア様は、異界の魔力に長く晒されていたため、精神的な疲労がかなり大きいわ。心のケアも必要ね」
アリアが、リリアの魔力状態を診断しながら言った。
「わたくしが、リリア王女の傍におります。もう、二度とあのような悲劇は繰り返させません」
セレスは、リリアの手を強く握りしめた。彼女の瞳には、王族としての責任感と、妹のようなリリアへの深い愛情が宿っていた。
健一は、王女と宰相に、使徒の正体と、神託の民の真の目的について報告した。異界からの使徒の存在、そして王都の破壊と真の神の降臨という目的は、王国の高官たちに大きな衝撃を与えた。
「まさか、神託の民の背後に異界の存在がいるとは……。そして、彼らが王家の宝珠を狙っていると」
宰相は、顔を青ざめさせた。
「はい。使徒は、王家の宝珠が彼らの目的達成のために必要だと明言しました。宝珠が、王都全体の結界の中核を担っている以上、彼らがそれを無力化すれば、王都は無防備になります」
健一は、淡々と状況を説明した。
王女は、深刻な表情で健一を見つめた。
「佐藤様。王家の宝珠は、王都の地下にある聖なる洞窟に安置されています。そこは、王族の血を引く者でなければ入れない聖域。そして、守護者も配置されています。ですが……」
王女の言葉の続きを、セレスが引き取った。
「その守護者も、既に神託の民の手に落ちている可能性があります。父の事件、リリア様の件といい、王宮内は深く侵食されています」
「なるほどな。ならば、俺たちが王家の宝珠の守護に向かうしかあるまい」
健一は、王家の宝珠を守ることを決意した。それは、王都の運命を左右する重要な任務となる。
その日の午後。
健一たちは、王女から渡された地図を元に、王家の宝珠が安置されている聖なる洞窟へと向かった。洞窟の入り口は、王城の地下深くに隠されており、厳重な魔術的結界と物理的な障壁で守られていた。
アリアとセレナの協力により、結界と障壁は難なく解除された。洞窟の内部は、幻想的な光を放つ魔晶石が散りばめられ、清らかな魔力が満ちていた。
しかし、その聖なる空間にも、不穏な空気が漂っているのを健一は感じた。洞窟の奥へと進むにつれて、魔力感知スキルが、異質な魔力の残滓を捉えていく。
「この魔力……神託の民の使徒が残したものでしょう。どうやら、彼らは既にここに侵入していたようね」
アリアが、険しい表情で言った。
洞窟の最奥部。そこには、巨大な水晶の台座があり、その上に、眩い光を放つ宝珠が安置されていた。それが、王都の結界の中核を担う、王家の宝珠だった。
しかし、宝珠の周囲には、黒いローブをまとった数人の人影があった。彼らは、宝珠に向かって何らかの儀式を行っており、宝珠の輝きが、徐々に弱まっているのが見えた。
「健一様!宝珠の魔力が、吸い取られています!」
セレナが叫んだ。
「貴様たち、何をしている!」
セレスは、怒りに声を震わせ、ロングソードを構えた。
「ふふっ……まさか、ここまで追ってくるとはな。Sランク冒険者よ。だが、もう遅い。我々は、この宝珠を完全に無力化し、王都に真の神を降臨させる!」
ローブの男の一人が、嘲笑した。彼の魔力は、以前対峙した使徒ほどではないが、バルドよりもはるかに強大だった。彼は、神託の民の新たな幹部、あるいは使徒に匹敵する力を持つ存在だった。
「新たな使徒か……!」
健一は、男の魔力から、異界の存在の気配を感じ取った。
「健一様!あの男が持っているのは、**『虚無の石版』**です!宝珠の力を吸い上げ、異界へと送るための道具です!」
アリアが、その石版の正体を見抜いた。
「させるか!」
健一は、無双剣 虚無を構え、使徒へと飛びかかった。フィーナ、ルナ、リルム、セレナ、セレスも、健一に続いて使徒の眷属たちへと攻撃を開始した。
フィーナの聖なる矢が、ローブの男たちの動きを封じ、ルナの素早い体術が、敵を吹き飛ばす。リルムの強化された投擲武器が、敵の防御を貫き、セレナの魔族魔法が、闇の魔物を焼き尽くす。
セレスは、王家の宝珠を守るべく、使徒の眷属たちと激しく剣を交えていた。彼女の剣技は、健一との出会いを経て、さらに研ぎ澄まされていた。
健一は、無双剣 虚無を振るい、使徒へと肉薄した。使徒は、虚無の石版から放たれる闇の魔力で健一を迎え撃つが、無双剣 虚無の全属性無効化の特性によって、その全てが吸収されていく。
「ぐっ……!この剣、やはり厄介だな!」
使徒は、健一の剣が自身の魔力を吸収していくことに、焦りの表情を浮かべた。
「お前たちの企みは、ここで終わりだ」
健一は、無双剣 虚無に自身の膨大な魔力を注ぎ込み、使徒の虚無の石版へと突き立てた。
キィィィィン!
甲高い音と共に、虚無の石版から異界の魔力が噴き出すが、健一の剣によって完全に遮断される。そして、石版は、まるでガラスが砕けるかのように、光の粒子となって消滅した。
虚無の石版が消滅すると、王家の宝珠の輝きが再び強まり、その魔力は、洞窟全体、そして王都の結界へと満ちていく。
「宝珠の魔力が、回復していくわ!」
セレナが歓喜の声を上げた。
使徒は、虚無の石版を破壊されたことに激怒し、自身の身体から闇の魔力を爆発させた。彼の身体は、異形へと変貌し、巨大な怪物と化した。
「よくも、私の計画を邪魔したな、Sランク冒険者!だが、この**『虚空の番人・改』**の力の前では、貴様ごとき無力!」
使徒は、咆哮と共に健一へと襲いかかった。彼の身体からは、虚空属性の魔力が噴き出し、周囲の空間を歪ませる。
健一は、使徒の変身した姿を見て、眉間に皺を寄せた。以前、エルドリア地下ダンジョンで対峙した虚空の番人よりも、遥かに強大な魔物と化していた。
「虚空の番人・改か……。だが、俺には、お前を倒す力がある」
健一は、無双剣 虚無に自身の虚空属性攻撃の力を込め、使徒へと肉薄した。彼の剣は、使徒の影のような身体を容赦なく切り裂き、その存在そのものを消し去っていく。
「グオオオオオオオオッ!」
使徒は、断末魔の叫びを上げ、光の粒子となって完全に消滅した。
使徒を撃破し、王家の宝珠を守り抜いた健一たち。洞窟には再び清らかな魔力が満ち、王都の結界も完全に回復した。
「健一様……またしても、王都を救ってくださいましたね」
セレスは、王家の宝珠の輝きを見つめながら、健一に深々と頭を下げた。
「いや、これもみんなの活躍があってこそだ。リリア王女も、これで安心できるだろう」
健一は、仲間たちを見渡し、彼らの活躍を労った。
その日の夜、リリア王女の意識は完全に回復した。彼女は、健一とセレスに深々と頭を下げ、感謝の言葉を述べた。
「佐藤様、セレスお姉様。私のために、ここまでしてくださって……本当にありがとうございます。私は、神託の民によって、ずっと苦しめられていました」
リリアは、健一とセレスの優しさに触れ、涙を流した。
「もう大丈夫だ、リリア王女。これからは、俺たちが君を守る」
健一は、リリアの頭を優しく撫でた。リリアは、健一の温かい手に触れ、その表情に安堵の色を浮かべた。
「わたくし……佐藤様たちに、何かお礼がしたいです。わたくしには、王家の宝珠を操る力があります。もし、王都を脅かす敵がいるのなら、わたくしも、その力を役立てたい」
リリアは、健一にそう告げた。彼女は、病弱な自分では何もできないと絶望していたが、健一との出会いを経て、自分にもできることがあると気づいたのだ。
「王家の宝珠を操る力、か。それは、頼もしいな」
健一は、リリアの申し出を快諾した。彼の【無限成長】は、新たなスキルの習得を告げていた。
スキル 王家の宝珠制御 スキル 結界魔術強化 スキル 光属性魔力増幅。
こうして、健一は王家の宝珠の力を操るスキルを手に入れ、リリア王女という新たな協力者、あるいはハーレムメンバーとなる存在を得たのだった。神託の民との戦いは、まだ続く。しかし、健一と彼の無双の老兵団は、どんな困難にも立ち向かう準備ができていた。
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