第十四話「魔法学院の異変と孤高の天才」
第十四話「魔法学院の異変と孤高の天才」
翌朝、健一は宿で朝食を取った後、フィーナ、ルナ、セレナ、リルムの四人を連れて、大都市エルドリアの中央に位置する冒険者ギルド総本部へと向かった。
総本部の規模はファーランドの比ではない。
巨大なホールには、文字通り世界中から集まった多種多様な冒険者がひしめき合い、その熱気と喧騒は健一の胸を高鳴らせた。
壁一面に張り巡らされた依頼掲示板には、国家間の紛争介入、古代遺跡の調査、竜種討伐など、Cランク冒険者だった頃には考えられないような高難度の依頼が並んでいた。
「わあ、すごい……これが大陸の冒険者の中心なのですね」 フィーナが圧倒されたように呟いた。
「へへっ、血が騒ぐぜ!おじさん、俺らにもっとヤバい依頼を受けさせてくれよ!」 ルナは早くも腕を鳴らしている。
「健一様、まずはご自身のギルドカードを更新してください。
ファーランドのCランクのままでは、受けられる依頼が限られます」 セレナが冷静に進言した。
健一は受付に向かい、ギルドカードを提出した。
受付嬢は健一のカードに記載されたCランクを見て、事務的な対応をしようとしたが、その瞬間、健一の**【魔力感知】**が受付嬢の計測器に触れた。
ピーーッ!
ギルドホールの静電気を破るような、けたたましい警告音が鳴り響いた。
計測器は赤く点滅し、エラーコードを表示している。
「な、何事ですか!?」 受付嬢は顔色を変えた。
「魔力量、計測不能!?そんな馬鹿な!」 瞬く間に、ホールの冒険者たちの視線が健一に集まる。
昨日、鍛冶師区画で見せた魔力に匹敵する、あるいはそれ以上の異常値。
「静かに。
測定器の故障だろう」 健一は冷静にそう告げたが、彼の頭の中では、**【無限成長】**によって更に増大した魔力が、計測器の限界を超えていたことを理解していた。
ギルドの職員が慌てて上司を呼び出す中、健一は悠然と立ち尽くしていた。
やがて、ローブをまとった壮年のギルド幹部が現れ、健一を別室に案内した。
「失礼いたしました、佐藤様。
改めて測定を試みましたが、やはり当ギルドの魔力計測器では、あなたの魔力を正確に測定することはできませんでした。
通常、このような場合、Sランク(最高位)以上の実力者と判断されますが……」 幹部は、額の汗を拭いながら、信じられないものを見る目で健一を見つめた。
「形式的なランク付けにこだわるつもりはありません。
ただ、相応の依頼を受けたいだけです」 健一がそう告げると、幹部はすぐに理解したようだ。
「わかりました。
ギルドの規定に基づき、実力測定の結果、暫定Sランクとして登録させていただきます。
これは異例中の異例です!」 こうして、健一は異世界転生からわずかな期間で、一足飛びにSランク冒険者となった。
これは、彼の**【無限成長】**というチート能力と、実戦経験、そしてハーレムメンバーたちの助けあってこそ成し得た偉業だった。
Sランクとして登録された健一がまず選んだのは、昨夜目をつけていた**『エルドリア魔法学院の異変調査』**という依頼だった。
依頼概要: 『学院の地下魔力源に原因不明の異常が発生。
学院の結界が弱体化し、魔力暴走を起こした実験体が脱走する恐れあり。
原因究明と解決を求める。
報酬:金貨100枚+成功報酬(要交渉)』
「魔法学院の依頼か。
セレナの知識が役に立つかもしれないな」 健一がそう言うと、セレナは目を輝かせた。
「はい!魔法学院の地下魔力源は、古代の魔術式で構築されているはずです。
わたくしの魔族としての知識と、健一様から教わった**【古代文字解読】**スキルが役立つかもしれません!」
一行は、厳重な警備が敷かれたエルドリア魔法学院へと向かった。
学院長に面会し、Sランク冒険者としての信任を得て、健一たちは地下魔力源への立ち入りを許可された。
地下魔力源へと続く長い螺旋階段を下りていくと、空気は冷たくなり、異様な魔力の圧迫感が肌を刺した。
「この魔力……何かがおかしい。
まるで、強制的に魔力を吸い上げられているような、不自然な流れだぜ」 ルナが顔をしかめて言った。
獣人である彼女の五感も、異常を察知している。
「これは……まるで巨大な吸血鬼のような魔力式ですわ。
学院の安全のためではなく、何か別の目的のために、魔力が集められている……?」 セレナが魔力式の設計図と現状を照らし合わせながら分析する。
魔力源の中心部にある巨大な魔力炉に辿り着くと、異変の原因がはっきりと見えた。
魔力炉の周囲には、無数の古びた符が貼り付けられており、それらが魔力炉の安定した魔力を、不規則かつ暴力的なサイクルで吸い上げ、どこか別の場所へと送っているのだ。
「これは、呪いにも似た魔力干渉術だ。
非常に高度で、悪意に満ちている」 健一の**【魔術書解読】スキルと【魔力制御】**スキルが、その術式の危険性を瞬時に分析した。
「誰がこんなことを……!」 セレナが怒りに震える。
その時、地下通路の奥から、冷たい声が響いた。
「まさか、たった数日でここまでたどり着く者がいるとはね。
さすがはSランク冒険者といったところかしら」 現れたのは、一人の女性だった。
銀色の髪をポニーテールにまとめ、知的な眼鏡をかけた、すらりとした美人だ。
年齢は20代後半といったところか。
彼女は学院のローブを身にまとっているが、その瞳は冷たく、そしてどこか孤独の影を宿していた。
「貴様が、この異変の首謀者か」 健一が問うと、女性は嘲笑した。
「首謀者、ね。
私はただ、研究を完成させようとしているだけよ。
私、アリア・グレイシアこそが、この学院、ひいてはこの大陸最高の魔術師。
そして、私は、誰もが諦めた**『時空間魔術』**を完成させるわ」 アリアは、自身の研究を邪魔されたことに苛立ちを覚えているようだ。
彼女の全身からは、セレナとはまた違う、強大だが歪んだ魔力が放出されていた。
「その研究が、街に危険を及ぼすというのか!」 ルナが身構える。
「危険?ふふ、凡人には理解できないかもしれないけれど、この程度の犠牲で、世界は**『時空間魔術』**という新たな扉を開けるのよ!そのために、この学院の魔力を少し拝借させてもらっているだけだわ」
アリアは、健一たちを無視し、魔力炉に手をかざした。
「さて、あなたたちには、私の研究の邪魔をしてもらうわけにはいかないわ」 彼女は、詠唱を始める。
【無限成長】によって【時空間魔術の知識】すらも読み取っていた健一は、アリアがこれから何をするのか瞬時に理解した。
彼女は、魔力炉の不安定なエネルギーを使い、健一たちを別の時空間へと転移させようとしているのだ。
「させない!」 健一は**『無双剣・虚無』を構え、アリアへと飛びかかる。
しかし、アリアの詠唱の方が早かった。
「『時空障壁』!」 健一の剣がアリアに届く寸前、彼女の周囲に目に見えない歪み**が生じ、健一の剣を弾き飛ばした。
「無駄よ。
私の時空間魔術は、物理法則すら超越するわ!」 アリアは勝利を確信したように微笑む。
「健一様!」 セレナが援護に魔法を放つが、アリアの放つ空間の歪みに吸い込まれてしまう。
フィーナの矢も、ルナの拳も、全て空間の壁に阻まれてしまう。
「魔力遮断の剣でも、空間そのものには干渉できないか……!」 健一は、チート装備**『無双剣・虚無』ですら、アリアの時空間魔術**の前には決定的な一撃を与えられないことを悟った。
「さようなら、凡人たち。
あなたたちは、時の狭間で永遠に彷徨うがいいわ!」 アリアの詠唱が完成する。
魔力炉の符が激しく発光し、健一たちの足元に青白い転移陣が出現した。
「諦めるな!【無限成長】!」 健一は、極限の状況下で、自身の**【無限成長】スキルを頼った。
【ユニークスキル『時空間魔術』を習得しました!】 【スキル『時空跳躍』を習得しました!】 【スキル『理論構築』がレベルアップしました!】 転移陣が起動し、健一の視界が歪む瞬間、健一の全身から、アリアのそれとは比較にならない膨大な魔力が放出された。
健一は、【無限成長】で一瞬にして習得した時空間魔術の知識を応用し、アリアの術式を解析**し、上書きした。
「なっ……馬鹿な!私の術式が……!?」 アリアは、自分の術式が、まるで子供の落書きのように簡単に書き換えられていくことに、恐怖と驚愕の表情を浮かべた。
健一が書き換えた術式は、健一たちを転移させるのではなく、アリア自身を転移させるものだった。
ゴオォォォッッ!!
転移陣は、アリアを中心に収束し、彼女の全身を青白い光が包み込む。
「くっ……覚えてなさい!私は、必ずこの研究を……!」 アリアの叫びは、光の中に消え、彼女の姿は魔力炉の地下から完全に消え去った。
アリアが消えた後、健一はすぐに魔力炉の符を全て破壊し、魔力暴走を鎮圧した。
「ふぅ、危なかった。
まさか、時空間魔術の使い手に遭遇するとはな」 健一は額の汗を拭いながら、安堵の息を漏らした。
「健一様……今のは、一体……」 フィーナは、何が起こったのか理解できずにいる。
「おじさん、あんたも時空間魔術を使えるようになったのか!?」 ルナは驚きに目を丸くした。
「ああ。
まぁ、この能力のおかげで、咄嗟に魔術を組み替えることができたんだ。
これで、学院の異変は解決だ」
健一たちは学院長に報告し、金貨100枚の報酬と、特別ボーナスを受け取った。
そして、学院長は健一たちに、学院の特別顧問としての地位を依頼した。
健一はこれを快諾し、エルドリアでの新たな拠点を確保した。
数日後。
健一は、学院の地下魔力源の修復作業を監督していた。
魔力炉は安定を取り戻し、街の結界も正常に機能している。
その時、目の前に、時空間の歪みと共に、アリア・グレイシアが現れた。
彼女はボロボロのローブを身にまとい、転移の反動で酷く疲弊していた。
「あなたは……なぜ、あの時私を殺さなかったの?」 アリアは、冷たい瞳で健一を見つめた。
「殺す必要はなかったからな。
君はただ、研究に没頭しすぎて、周りが見えなくなっていただけだ。
君の才能は、この世界に必要だ」 健一の言葉に、アリアは戸惑いを見せた。
これまでの人生で、彼女の才能を評価する者はいたが、その存在意義を肯定する人間はいなかったからだ。
「わ、私の才能を……」 「ああ。
君の時空間魔術は、確かに危険だったが、その理論は素晴らしい。
君の知識と才能は、邪悪なことに使うべきじゃない。
俺たちの仲間に加わり、その力を世界のために使ってみないか?」 健一は、優しく手を差し伸べた。
アリアは、差し出された手と、健一の温かい瞳を交互に見つめた。
彼女の孤独な心は、健一の「おじさん力」に触れ、徐々に溶けていく。
「……ふふ。
おかしいわね。
この私、アリア・グレイシアが、一介の冒険者の誘いに乗るなんて……」 アリアは自嘲したが、その表情には、どこか安堵の色が浮かんでいた。
彼女は、健一の手を掴んだ。
「わかったわ。
佐藤健一。
あなたの理論構築能力と、その底なしの魔力には興味がある。
ただし、私の研究は続けるわよ」 「もちろん。
大歓迎だ、アリア」 健一は満面の笑みを浮かべた。
こうして、孤高の天才魔術師、アリア・グレイシアが、健一の**『無双の老兵団』に加わった。
彼女の加入により、健一のハーレムは、知性と最強の魔法力**という、新たな次元の力を手に入れたのだった。
読んで下さりありがとうございました!
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