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第十二話「神剣への挑戦と無限の才覚」

第十二話「神剣への挑戦と無限の才覚」


リルムの鍛冶場は、健一たちにとって新たな拠点となった。

エルドリアへの旅は一時中断し、健一はリルムと共に『神剣ドラグーンの欠片』の完成に挑むことになったのだ。

小屋の中は、昼夜を問わず熱気に満ちていた。

健一は、リルムの父が残した古文書や、彼女がこれまで書き溜めてきた鍛冶に関するメモを読み解くことから始めた。

【スキル『鍛冶技術』を習得しました!】 【スキル『鉱石鑑定』を習得しました!】 【スキル『金属加工』を習得しました!】 【スキル『魔力鍛造』を習得しました!】 【無限成長】の能力が、ここでも遺憾なく発揮される。

健一は、書物を読むだけで、ドワーフの鍛冶師が一生かけて学ぶような知識を、瞬く間に吸収していく。

リルムが説明するドワーフの伝統的な鍛冶の工程や、特殊な鉱石の性質についても、一度聞けばその本質を理解し、まるで自分が何十年も鍛冶に携わってきたかのような感覚に陥った。

「健一様……まさか、書物を読んだだけで、そこまでの知識を……!?」 リルムは、健一の学習速度に驚きを隠せない。

彼女自身、幼い頃から父の背中を見て、血の滲むような努力を重ねてきたが、健一の成長速度は、もはや人間のそれではない。

「はは、まあ、おじさんは昔から勉強熱心でね」 健一は適当にごまかすが、リルムは半ば呆れたような、そして畏敬の念が混じったような視線を健一に向けていた。


『神剣ドラグーンの欠片』は、見た目こそ黒ずんだ鉄の塊だが、その内部には強大な魔力が渦巻いている。

通常の加熱では変形せず、通常の金槌では全く歯が立たない。

リルムの父も、その硬度に阻まれ、完成に至らなかったのだという。

健一は、リルムがこれまでに試してきたあらゆる鍛冶方法や、鉱石の組み合わせ、温度管理のデータを徹底的に調べ上げた。

そして、ある結論に達した。

「リルム、この欠片を鍛え上げるには、通常の熱源では不十分だ。

そして、通常の魔力だけでは、欠片に宿る強大な竜の魔力に打ち勝つことができない」 健一の言葉に、リルムは首を傾げた。

「では、どうすれば……?」 「俺の魔力を、使ってみる」 健一の提案に、リルムは目を見開いた。

「健一様の魔力を!?ですが、それは危険です!伝説の武具の鍛造は、尋常ならざる魔力と精神力を消費します。

それに、竜の魔力は異質で、相性が悪い場合、健一様の身にも危険が及ぶ可能性が……!」 リルムは、健一の身を案じた。

彼女は、父が命を削って鍛冶に打ち込む姿を間近で見てきたからこそ、その危険性を誰よりも知っている。

「心配ない。

おじさんの魔力は、君が想像するよりもはるかに強大だ。

それに、セレナの魔力暴走を抑えた時に、【異種族魔力同調】というスキルを習得した。

きっと、竜の魔力にも対応できるはずだ」 健一は、リルムを安心させるように微笑んだ。

フィーナとルナ、セレナも、健一の言葉を信じていた。

彼らの目には、健一が不可能を可能にする存在として映っている。

「健一様がそこまで仰るなら……。

わたくしも、全力でサポートさせていただきます!」 リルムは健一の言葉を信じ、強く頷いた。


健一の『神剣ドラグーンの欠片』への挑戦が始まった。

まず、欠片を炉に入れる。

健一は、自分の膨大な魔力を惜しみなく炉へと注ぎ込んだ。

ゴオオオオッ……! 炉の炎が、それまでとは比べ物にならないほど、赤く、青く、そして白く輝き始めた。

その熱量は、小屋の中の空気を歪ませるほどだ。

「こ、こんな熱量、見たことがない……!」 リルムが驚愕する。

彼女の父が作り出せる最高温度を遥かに凌駕している。

欠片は、まるで生きているかのように、炉の中で熱を帯び、ゆっくりと赤く染まり始めた。

「今だ、リルム!」 健一の指示に、リルムは迷いなく金槌を握った。

カンッ! 少女の細腕から放たれたとは思えない、渾身の一撃が欠片に叩き込まれる。

しかし、欠片は依然として硬く、その形は変わらない。

「くそっ、これでは……!」 リルムが焦る。

「焦るな、リルム!もっと魔力を流し込む!」 健一は、さらに魔力を炉へと集中させる。

炉の炎は、まるで太陽そのもののように輝き始めた。

その圧倒的な熱量と、健一の魔力で、欠片の硬度が少しずつ緩んでいくのが分かる。

そして、健一自身も金槌を手に取った。

「私も叩く!」 【スキル『鍛冶技術』がレベルアップしました!】 【スキル『金属加工』がレベルアップしました!】 健一が金槌を振り上げると、彼の全身から、これまでの鍛冶師が持つそれとは全く異なる、洗練された動きが生まれた。

それは、まるで長年、鍛冶の道を極め続けてきた職人のような、無駄のない、研ぎ澄まされた動作だった。

カンッ、カンッ、カンッ! 健一の金槌は、正確無比に欠片の最も効果的な一点を打ち抜き、リルムの金槌と交互に、まるで一つのリズムを刻むかのように打ち続けられた。

そのたびに、欠片からは光の粒子が飛び散り、徐々にその形を変えていく。

健一とリルムの魔力と技術が融合し、欠片の内部に宿る竜の魔力と拮抗しながら、徐々にその支配権を奪っていく。

「健一様、凄いです……!わたくしでは、到底到達できない領域です……!」 リルムは、健一の鍛冶の才能に、ただただ圧倒されていた。

彼女の父もなし得なかった、伝説の武具の鍛造。

それが、健一の手によって、今、現実のものになろうとしている。

炎と汗と、そして魔力が渦巻く鍛冶場の中で、健一とリルムは一心不乱に鉄を打ち続けた。

フィーナ、ルナ、セレナも、息を呑んでその光景を見守っていた。

数時間が経過し、健一の額からは汗が滝のように流れ落ちていた。

魔力の消費も激しく、さすがの健一も疲労を感じ始めていた。

リルムもまた、限界を超えて金槌を振るい続けている。

「もう一押しだ、リルム!」 健一が声を張り上げると、リルムも歯を食いしばって頷いた。

健一は残された魔力を全て叩き込み、欠片は眩いばかりの光を放ち始めた。

その光は、竜の咆哮を思わせるような力強い波動を放っている。

「これで、最後だ!」 健一とリルムは、渾身の一撃を、同時に欠片へと打ち込んだ。

ガアァァァンッ! 全ての音が飲み込まれるかのような、けたたましい音と、眩い光が鍛冶場を包み込んだ。


光が収束すると、そこには、もはや黒ずんだ鉄の塊はなかった。

代わりにあったのは、竜の鱗のような装飾が施された、見事な片手剣だった。

刀身は見る角度によって色を変え、まるで生きているかのように微かに脈動している。

柄頭には、小さな竜の瞳のような魔石が嵌め込まれ、神秘的な光を放っていた。

健一とリルムは、その剣を前に、疲労困憊の身体を支えきれず、その場にへたり込んだ。

「や……やった……!」 リルムは、その剣を呆然と見つめていた。

父が夢にまで見た、伝説の武具の完成。

それが、今、目の前にある。

「完成した……『神剣ドラグーン』が……」 リルムの瞳から、大粒の涙が溢れ落ちた。

それは、父の遺志を継ぎ、成し遂げたことへの感動と、健一への感謝の涙だった。

健一は、そっとリルムの頭を撫でた。

「君の努力が、実を結んだんだ。

リルム、君は立派な鍛冶師だよ」 「ピコン!」 【スキル『神級鍛冶』を習得しました!】 【ユニークスキル『竜鍛ドラゴンスミス』を習得しました!】 【称号『伝説の鍛冶師』を獲得しました!】 健一の脳内には、新たなスキル習得のメッセージが大量に流れていた。

伝説の武具を鍛えたことで、彼の鍛冶スキルは一気に最高峰へと到達したのだ。

健一は、完成した神剣を手に取った。

ずしりと重い。

しかし、その重さ以上に、剣から伝わる竜の魔力は、彼の身体と共鳴し、無限の力を与えてくれるかのように感じられた。

「これが……『神剣ドラグーン』……」 健一が呟くと、剣はまるで応えるかのように、微かに輝きを放った。

「健一様、おめでとうございます……!」 フィーナ、ルナ、セレナも、健一とリルムの偉業を心から喜んだ。

「おじさん、これ、あんたの剣にするのかい!?」 ルナが目を輝かせて尋ねる。

健一は、完成した神剣をじっと見つめた後、ゆっくりと首を横に振った。

「いや。

これは、リルムの努力と、お父さんの遺志が詰まった剣だ。

俺が持つべきじゃない」 健一は、神剣をリルムへと差し出した。

リルムは驚き、目を丸くした。

「ですが……健一様がいなければ、決して完成しませんでした。

それに、健一様こそ、この剣を扱うにふさわしいお方です……!」 「君が作ったんだ、リルム。

だから、君が持つべきだ。

あるいは、君が本当に信頼できる誰かに託すんだ。

お父さんの想いを、君が次に繋げるんだ」 健一の言葉に、リルムは瞳を潤ませながら、震える手で神剣を受け取った。

「健一様……わたくし、健一様の忠実な鍛冶師として、これからも健一様のために、最高の武具を作り続けたいです……!」 リルムは、そう言って健一の前にひざまずいた。

「立て、リルム。

君はもう、一人じゃない。

俺たちの仲間だ」 健一はリルムの肩を優しく抱き寄せた。

こうして、『神剣ドラグーン』は完成し、健一と『無双の老兵団』の名声は、この小さな村だけでなく、エルドリアへと向かう途中の人々にも瞬く間に広まっていった。

そして、健一は新たな仲間であるドワーフの鍛冶師リルムと共に、次の目的地エルドリアを目指し、再び歩み始めるのだった。


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Youtubeにて作品公開中!

再生リスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLmiEOdmheYJxhNyR4Frew0S0BXZP3KUUd


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