第十話「新たな旅立ちと、さらなる仲間への予感」
第十話「新たな旅立ちと、さらなる仲間への予感」
ファーランドの街での生活は、健一にとって実に刺激的だった。
冒険者としての名声は日増しに高まり、街の住民たちからの信頼も厚い。
『無双の老兵団』という冗談めいたパーティー名もすっかり定着し、今や街一番の期待の星となっていた。
酒場『迷宮亭』の女将からは「健一さんたちがいなくなったら寂しくなるわねぇ」と冗談交じりに言われるほど、すっかり街に溶け込んでいた。
しかし、健一は現状に満足していなかった。
「なあ、みんな。
この街もすっかり平和になったし、そろそろ次の街へ行かないか?」 ある日の夜、宿屋の部屋で、健一はフィーナ、ルナ、セレナの三人に提案した。
三人は、健一の突然の提案に、少し驚いた表情を浮かべた。
「次の街、ですか?」 フィーナが問いかける。
彼女は健一に助けられて以来、この街で健一と共に過ごす日々が、生まれて初めての安らぎだった。
ルナは腕を組み、不敵な笑みを浮かべた。
「へぇ、いいじゃねぇか!この街の魔物も弱っちいのばっかになったし、そろそろ物足りなかったところだぜ!」 セレナは、健一の提案に少し寂しそうな表情を浮かべたが、すぐに頷いた。
「健一様がお決めになることなら、わたくしはどこへでもお供いたします」 健一は三人の顔を順に見渡した。
フィーナは銀色の髪を揺らし、健一を信頼しきった瞳で見つめている。
ルナは琥珀色の瞳を輝かせ、新たな冒険への期待に胸を膨らませている。
セレナは赤い瞳に、健一への深い忠誠心を宿している。
三者三様だが、皆、健一と共に歩むことを望んでいる。
そのことが、健一の心に温かいものを灯した。
「この街も居心地はいいんだが、俺たちはもっと広い世界を見たい。
それに、まだ見ぬ強敵や、困っている人々が、この世界のどこかにいるはずだ。
おじさんのチート能力が、本当にどこまで通用するのかも試してみたいしな」 健一の言葉に、三人はそれぞれ納得した。
「では、健一様は、どこへ向かわれるのですか?」 フィーナが尋ねる。
健一は、ギルドでもらったこの世界の地図を広げた。
ファーランドの街は、大陸の東側に位置する、比較的平穏な地方都市だ。
「この地図を見る限り、大陸の中央には、もっと大きな国や、危険なダンジョン、強大な魔物の巣窟なんかもありそうだな。
まずは、この西にある大都市『エルドリア』を目指してみようか」 エルドリアは、大陸の中でも有数の商業都市であり、冒険者にとっても拠点として非常に魅力的な場所だと、ギルドや酒場で聞いていた。
「エルドリアですか!そこは、様々な種族が集まる、とても大きな街だと聞いています!」 フィーナが目を輝かせた。
ルナも興奮した様子だ。
「よっしゃ!それなら、もっと強いやつと出会えるかもしれねぇな!」 セレナは地図を覗き込み、静かに頷いた。
「エルドリアには、国立図書館があります。
もしかしたら、私の魔族としてのルーツや、魔族の里を追われた経緯に関する情報が見つかるかもしれません」 それぞれの目的が一致し、新たな旅立ちが決まった。
翌日、健一たちは冒険者ギルドへと向かった。
「あら、健一様たち!次の依頼ですか?」 受付嬢が笑顔で出迎える。
健一は、旅立ちの意思を伝えた。
「ええ、我々はファーランドを発ち、次の街へと向かおうと思います。
これまでの依頼、ありがとうございました」 「まぁ!そうですか……。
寂しくなりますが、健一様たちなら、きっとこの世界中で名を馳せることでしょう!」 受付嬢は残念がりつつも、健一たちの旅立ちを応援してくれた。
ギルドを後にすると、女将が心配そうに立っていた。
「健一さん、本当に旅立っちまうのかい?あんたたちがいなくなったら、うちの酒場の売り上げががた落ちだよ」 「はは、大丈夫ですよ、女将。
いつかまた、きっと顔を出しますから」 健一はそう言って、女将の肩をポンと叩いた。
「これ、餞別だよ。
道中の足しにしておくれ」 女将はそう言って、大きな肉の塊と、いくつか焼いたパンを包んで健一に渡してくれた。
温かい心遣いに、健一は感謝の気持ちでいっぱいになった。
街の広場まで来ると、何人かの住民が健一たちを見送りに来ていた。
彼らの顔には、寂しさとともに、英雄を見送るかのような敬意が浮かんでいた。
「健一様、ご武運を!」 「お気をつけて!」 健一は、手を振って声援に応えた。
(前世では、こんなに見送ってくれる人なんていなかったな……) 健一は、じんわりと胸が熱くなるのを感じた。
これも、異世界で手に入れた大切なものだ。
ファーランドの街を出て、一行は一路、西の大都市エルドリアを目指す旅に出た。
道中は、野盗や魔物との遭遇もあったが、もはや『無双の老兵団』にとっては敵ではなかった。
健一の圧倒的な剣技と魔法、フィーナの精密な弓、ルナの俊敏な格闘術、そしてセレナの広範囲魔法と的確な状況判断。
彼らの連携は完璧で、どんな敵も寄せ付けない。
特に、セレナは健一によって魔力が安定したことで、その潜在能力が覚醒しつつあった。
彼女の魔法は以前よりも遥かに強力になり、時には周囲の地形すら変えるほどの威力を発揮する。
「健一様、この魔物の反応……もしかしたら、かなり強力な個体かもしれません。
通常であれば、この道には現れないはずです」 ある日、セレナが警戒するように言った。
健一も、その言葉に頷いた。
セレナの魔力感知能力は、今や健一に匹敵するほどだ。
一行の前に現れたのは、通常のオーガよりも一回り大きく、全身に岩のような皮膚を持つ異形の魔物だった。
その手には、巨木を削り出したような棍棒を構えている。
「グルアアアアッ!」 オーガが咆哮を上げ、地面を揺らした。
「あれは……ロックオーガだ!こんな内陸で見るなんて……」 フィーナが驚きの声を上げる。
「へぇ、なかなか骨がありそうだぜ!おじさん、私にやらせてくれ!」 ルナが目を輝かせ、一足飛びにロックオーガへと向かおうとする。
「待て、ルナ!」 健一が叫んだが、ルナの勢いは止まらない。
ロックオーガの巨体に、ルナの拳が次々と打ち込まれる。
しかし、岩のような皮膚にはダメージを与えられない。
「クソッ!硬すぎる!」 ロックオーガは、ルナの攻撃をものともせず、棍棒を大きく振り上げた。
その時、健一の全身から、かつてギルドの測定器を振り切った魔力が噴き出した。
「『爆炎』!」 健一が放ったのは、習得したばかりの広範囲火魔法だ。
炎の渦がロックオーガを包み込み、凄まじい爆発音と共に、周囲の木々を焦がす。
「グギャアアアアアッ!」 ロックオーガは、岩のような皮膚を焦がされ、断末魔の叫びを上げてその場に倒れ伏した。
光の粒子となって消滅する直前、その巨体がわずかに痙攣していた。
「おいおい、おじさん、いきなりやりすぎだぜ……!」 ルナが目を丸くして健一を見た。
フィーナも、セレナも、健一の圧倒的な力に改めて驚いていた。
「まあ、いざという時のために、色々と試しておかないとな」 健一は軽く肩を竦めた。
「ピコン!」 【スキル『爆炎魔法』がレベルアップしました!】 【スキル『広域攻撃魔法』を習得しました!】 【経験値を獲得しました!】 健一の脳内では、今日も無限の成長が続いていた。
エルドリアへの道は、平坦ではなかったが、彼らの旅は順調に進んでいく。
そして、旅の途中で立ち寄った小さな村で、健一たちは思いがけない出会いをすることになる。
それは、古びた鍛冶場で、黙々と鉄を打ち続ける、小さなドワーフの少女だった。
彼女の瞳には、ひたむきな情熱と、誰にも言えない秘密が隠されているようだった。
健一のハーレムは、さらに拡大する予感を秘めていた。
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