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第32話 告白しようとしたら、2人から来た


着いた先は、庭園だった。

この2日間で常連ばりに来る羽目になった庭園の中を通り、指定されたベンチに並んで座る。



「……その目、どうしたん“ですか”?」



唐突に敬語で話され、思わず恐ろしいモノを見る目で隣のアレンを見上げる。



「な、何ですか急に……」

「泣いたん“ですか”?」



無意識に鳥肌が立ったようで、両腕を摩るアキ。

その姿を、笑ってない目元のアレンが笑いながらアキを見つめた。



「“紳士”がお好きと言ったので、努力してるんですよ。……なのに、その態度は心外ですね」

「いや…確かに言いましたけど」



敬語にすれば良いってもんじゃない。

余計に怖いわ。


(……でも、私の言ったことを覚えて、ちゃんと変えようとしてくれたんだ)


そう思ったら、嬉しくて。

アキは少し顔が熱くなるのを感じた。



「ーーー質問に、答えてくれないんですか?」

「え?……あ、えーと……」



アキは氷嚢を握りしめながら、視線をそらす。

アレンの目が真っ直ぐすぎて、心の奥を見透かされそうで怖い。



「やっぱ、とりあえず気持ち悪いんで敬語なしでお願いします」

「………」



スゥとチベスナ顔になるアレン。

そして、長いため息を付いて、髪を掻き上げた。



「……君はいつもそうだな」

「え?」

「こっちは、君が泣いたんじゃないかと……もしかして、“昨日の事”で君を傷付けたのではと思ったのに。口調なんてどうでも良いだろ」



すぐさま元通りの口の悪さに戻るアレン。

何故だろう、敬語キャラが好きなはずなのに、こっちの方が安心するのは。


(……それより、昨日の事って、やっぱ自覚あるじゃん)



「分かってるなら、聞かなくて良いですよね?」

「はあ?分からないから、聞いたんだ。君は、どうやら色々な男に愛想を振り撒くのが得意らしいからな」

「ーーーは?」



何それ。

ついポカンと口を開ける。



「街で知らない男と2人きりになるし、ヴォルトや団員とは仲良いし、さっきの男とは早速街デートか。そんなに尻軽なら、昨日の件だって傷付かないかも知れないだろ?」



(………え?マジで何言ってんの?)


まさかの嫉妬?それに、軽くディスり入ってんだけど?

自分は……ミアに惹かれてるクセに!

思わずアキは、アレンに告白するのも忘れてくってかかる。



「ーーーそっちこそ、私を好きだって言ったのに、ミアを抱き締めてたじゃん!!」

「……は!?あれはどう見ても事故だろう!何故そうなるんだ!」

「誰だってあれを見りゃミアを好きだと思うわ!そのせいで泣いてこんな顔になってんのに!!」



ーーーしまった。

変なタイミングで口が滑った。

一気に羞恥心が上がり、咄嗟に赤くなった顔を隠そうとそっぽを向こうとしてー……


視線が空を向いた。



「……へ?」

「ーーーやっぱり、アレが原因で泣いたんじゃないか!」



いつの間にか、アレンがアキをベンチに押し倒していた。

上から見下ろすその目は、いつか見た紅く燃えるような瞳で。



「何を勘違いしてるのか知らないが、俺が好きなのは、君だけだ!」

「えっ……」

「というか何度も好きだと言ってるだろう!何故信じないんだ」



思わず息を飲み込むアキ。



「……だって奇声は上げるし、貧乳だし、髪梳かさないし、お洒落しないし、男に間違われるし」

「………自覚はあるのか…」



少しだけ遠くを見るアレン。しかし、再びアキに視線を合わせる。



「良いか。俺は君の性根が好きなんだ。よく笑って、怒って、俺から逃げて、仕事は妥協しなくて……今まで俺の知ってるどの女とも違う。……そして、気がついたら……いつも君を目で追ってた」

「っ……」



言葉が出ない。心臓が早鐘のように打っている。



「この際貧乳でも良い。本当に君が好きなんだ」

「……っ…言い方…!」



「ほんと、残念野郎だな」そう言ったアキの声にキレがないのは、溢れた涙が邪魔だったからだ。

アキの暴言に苦笑したアレンは、そっとアキの手を取り、その伝った涙を拭いた。



「言ったろう?俺から逃げられんと」

「っ……!」



心臓を鷲掴みにされたような感覚。息が、苦しいほど熱くなっていく。

真剣にアキを見るアレンの顔を見れば、ほんの少しだけ狂気が混じっていた。

それはもう、アキが求めていたアレンそのものだった訳で。


(……何なのよ…!こっちから告白してやろうと思ってたのに!)



「ーーーもう、ずっと前から捕まってるんだけど!」



悔しくて、つい声を上げて答えた。

その瞬間大きく目を見開いたアレン。

暫く硬直していたが、やがて、深い笑みを浮かべると繋いだアキの手の指先にそっと唇を当てた。



「……じゃあ、これで正式に、付き合ってくれるんだな」

「っ!」



アレンの美しい顔がゆっくり近付いてくる。

もう少しで、彼の唇が触れそうになった、その瞬間だった。



「まあ!情熱的な告白ですこと!」



ミアの声が庭園の奥から炸裂した。

驚いたアキは、咄嗟にアレンを頭突きして跳ね除ける。



「っミア、私……」

「それ以上はいけませんわ!!」

「何、それ…」

「アキ様は、私のお姉様になる方よ!決して、アレンハルト様には渡しません!」

「………………」



「ん?」

長い間を置いて、アキが呆けた声を漏らす。

ミアはそのまま走って近寄ると、アキをぎゅっと抱きしめた。



「アキ様!お願いですから兄様と婚約なさって!そして、私のお姉様になってくださいまし!」

「………え?」



なんで?

ふとアレンに視線をやると、彼はおでこを摩りながら、本当に残念なものを見る目でミアを見つめていた。




「………ん?」



あれ、ミアって、私が好きだったの?


遠くで、1人残されたカインが「そうだよ」という顔で、こちらの様子を見つめていた。


どうやら、勝手に私が勘違いしていたみたいだった。ミアの好きな人は、まさかの私だったようだ。


この際貧乳でも良い。

押し倒しておいて、とんでもない発言です。

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