第25話 初めて気付いたキモチ
アキの独白パートです!
今回はギャグありません。
快晴の空の下、商業街の通りを歩く賑やかな人々の声が耳に届く。
活気に溢れた街並みに、アキは一人、歩いていた。
「……はぁ。やっと静かになった」
思わず漏れた本音。
アレンと離れられた事に、ほんの少しホッとした自分がいた。
(だって……急過ぎて全くついていけないし)
昨日の今日でのアレンの変貌具合に、どう対処したら良いのか自分でも分からないのだ。
(……でも、さすがにさっきのは言い過ぎ…たよね?)
売り言葉に買い言葉で、思い切り言いたい放題してしまった。
天下の騎士団長に「やり直せ」なんて言ってしまったのは、さすがにマズかったのでは。
そう思いながら、露店の並ぶ通りを歩く。
ふと、目を引いたのは雑貨屋さんだった。
ちょうど給与も入っていたし、気分転換も兼ねてお土産でも買って帰ろうかと、足を止めた。
「んー、ヴォルトさんは朝弱いから目覚まし時計かな。
ジュードさんは…あ、このメガネ拭き綺麗〜」
1人1人顔を思い出しながら買い物していく。
最後にアレンには、少し悩んでから、小さな石がついたお守りを選んだ。
銀の装飾に紅が映える、小さくて不思議な色の石。
まるで、彼の瞳のような石だ。
(……別に。謝りたいだけだし)
そう、これを渡して言い過ぎた事を帳消しにしてもらうのだ。それだけ。
そんな風に自分に言い訳しながら、アキは用事を終わらせて騎士団に戻るのであった。
◇◇◇
「………え?」
めい一杯溜めて出した声は、自分でも分かるほどに震えた。
雑用を終わらせ、空いた時間で各人にお土産を配って行った先、ジュードから聞いた話を聞いての反応である。
「……な、何で……急に?」
「さあ?私も団長に聞いただけなので。明日から2週間ほど、隣国のご令嬢の警護らしいですが」
全く、その間の代理はどうするんでしょうね?
困ったジュードの声が、やけに遠く感じた。
「へ……へえ…」
なんとか笑ってごまかし、この場を去るアキ。
でも内側はずっとザワついていた。
(王宮で……ミアと……)
あの、小動物系可愛い女子の主人公と。
(いや、良かったんだって!これで小説通りになれば、問題なくない?元々私を好きな方がおかしいんだし、それにあの人紳士じゃないし?)
ーーーそう。私が好きなのは、小説の中の“アレン”。
礼儀正しくて、凛々しくて、いつもミアを気遣う紳士。
でも独占欲とか執着が強めで、時折見せちゃうような完璧な推しキャラ。
(現実は……違うし)
すぐ怒るし、口悪いし、眉間にシワ寄せてばっかりだし、その上力強いし。迫り方全く紳士じゃないし。
別にこのまま好かれても、それはあの“推し”に好かれてるわけじゃない。
そう思ってたでしょ?
(……元々、ミアと結ばれる運命なんだし?)
……まさか、本当にその2週間で結ばれて……?
その瞬間、胸の奥がぎゅっと縮こまった。
(いや、だから良かったんだって!)
だって距離ができて、ホッとしたでしょ?
暫くあの人の顔見なくて済んだって。会ったらどう反応すればいいか分からないし。
……本当に?
本当に、そう思ってる?
自分の中から聞こえた問いに、アキは答えられなかった。
ずっと、見ないようにしてた。
目をそらして、心に蓋をして。
でも、いつもアレンを目で追っていた。
「これは小説の世界」と言い聞かせれば、傷つかずに済むと思ってた。
それなのに。
掃除していても、洗濯していても、ご飯を作っていても。
ふとした瞬間、思い出すのはアレンの御尊顔。
「……なんで、今更」
ぽつりと漏れた声は、誰にも届かない。
(たった2週間なのに。こんなに考えて……馬鹿みたいじゃん)
わかってる。気のせいだと思いたい。
でも、
(ーーー私、あの人のこと、好きなんだ)
気づきたくなかった気持ちに、やっと名前をつけた瞬間。
アキは、そっと目を伏せた。
誰もいない厨房で、アキは泣きそうになってその場にしゃがみ込んだ。
ここまで読んで頂きありがとうございますー!
コメント、ご意見大歓迎です!




