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第23話 推しが迫ってきたけど、壁ドンも顎クイもアウトだからな!



突然の告白からの推しの「本性」バレの翌日。

アキは今日も騎士団の雑用係をしていた。


心配していたクビはなく、むしろ王宮での仕事が宙ぶらりんになったところで。



「おかわり!今日もアキさんのご飯は美味しいっす!」

「嬉しいですヴォルトさん〜」

「だろう?おかわりは2回までだからな」



スッとヴォルトが何とも言えない顔で笑う。


分かるよ。

配膳している私の隣にお玉を持ったアレンがいるのだから。


(……ほんとに、俺の嫁感出すのやめて欲しい)


もう、アレンは何も隠す気はないらしい。

何かと隙を見つけては、こうして分かりやすく私の側にやって来る。どうやら外堀を埋めるつもりらしい。

因みに団員達は巻き込まれないように見て見ぬ振りだ。


(……皆、酷くない?)


誰かこの奇行を止めてくれ。

そう思ったが、騎士団長に刃向かえる者はいないだろう。



「あ、いたいた。ちょっと団長、何やってるんです?仕事溜まってるんですが」

「!ジュードさん!」



ガチャリと食堂の扉を入って来たジュードに、アキは思わず目を輝かせた。

いた。1人だけ。

この騎士団で唯一アレンに遠慮なくズケズケ言える救世主が。

チラリとアレンを見るとムッとした表情でジュードを見ていた。しかし、仕事が溜まっている事は事実らしく渋々お玉を置く。



「さっさと終わらせてくる。また来るか…」

「来なくて良いです」



食い気味に即答するアキ。

何とも悲しそうな顔でアキを見つめるが「いい加減にして下さい」と言ったジュードに引きづられていった。



「はぁぁ〜」



ため息と共にお玉を見つめるアキ。


昨日の今日でこれである。

この変わりよう、まさに小説で見たアレンの行動パターンと一緒だ。

だとしたら次は行動はライトなストーキングが始まるはず。



「アキさーん、食材買い出しお願いできます?」



厨房から声がかかる。チャンスだ。

今日は商業街で市が立つ日だ。うまく行けば半日は外に出られる。



「任せて下さい!」



そう大声で了承すると、さっさと食器の片付けをし、朝ごはんを済ませると、全力で飛び出した。

言わずもがな、アレンに見つかりたくないからだ。

ーーーが。



「……ん?」



門を抜けた先に、アレンがいた。

どうやら、もうストーキングが始まったようである。

 


「……怖」

「ん?何か言ったか」



何故出掛けるのが分かったのかはこの際置いといて。



「さっき仕事が溜まってると言われてませんでした?」

「終わらせた」

「えっ」



(たったの数十分で?)


アレンは全般的に能力が高いが、有能さをここで発揮しないで欲しい。

ストーキングするためなら特にな!

そんなアキの心の中を知ってか知らずか



「これから市井の見回りがあるから、ついでに一緒に行こう」



と言って手を伸ばした。



「……何ですかその手は」

「迷子防止に」

「ならねぇわ!」



思わず突っ込んだ。

この人、この世界に来たばかりの私に地図を押し付け、さっさと行けと言ったセリフを忘れたのだろうか?

残念なイケメンとは、正しくこの人の事だろう。



「とにかく、私は忙しいので、これで」

「あ、待て…!」



足早に通り過ぎ、門を出たところでアレンに再び腕を掴まれた。



「っ!何…!」

「そんなに分かりやすく避けなくても良いだろう!」

「わ、分かった、分かりましたからっ!痛いんで離して下さい!!」



アレンの力強さはデフォルトのようである。と言っても、昨日よりはだいぶ加減をしてくれているようだ。

アキの了承で直ぐに離してくれたアレンだが、言いたい事はあるようで続けざま口を開いた。



「確かに君に対する今までの態度は、紳士ではなかった。避けたい気持ちも分かる。だが、化粧もせずスカートでもない姿で女だと思う方が無理だろう!」

「おまっ…謝罪が先でしょーが!それに少しは取り繕ってくれません!?」

「今更猫被れるか!それに俺は元々女嫌いなんだ!」



知ってるわ!

そう思ったが、何故か近付いて来たアレンに本能的に逃げるアキ。

そして、ドン!と背中に衝撃を感じる。どうやら門にぶつかったようだ。



「っちょ、これ以上来ないで…」

「ーーー自分でもどうしたら良いか分からんのだ!」



またバン!と音を立てて壁に手を押し付けるアレン。

その整った容姿が直近まで迫り、思わずアキは直視できずに顔を背けた。



「今まで男かと思ってきた奴が苦手な女で、その上苦手な筈なのに気になって仕方ないし、誰かとデートしたと聞いたらイライラするし…こっち向け!」



グイッと顎を掴まれ、無理矢理正面を向かせるアレン。

思わず目を合わせると、その燃えるような瞳は一層赤く染まり、整った容姿の眉間に皺が刻まれていた。


……何とも悩ましいほどの色気だ。

美形の嫉妬姿とは、ここまで破壊力があるものか。


つい、自分でも抑えられない程に心臓が跳ねるアキ。

きっと今の自分は相当顔が赤いはず。

でもーーー忘れてはいけない。この人は私の憧れである推しではなく、残念なイケメン。


(小説では手を握るだけでも「大丈夫ですか?」って聞いてたじゃん!どこの誰だよコイツ!!)



「っまず謝罪!それから告白!全部すっ飛ばしたからやり直し!!」

「は!?」

「それに紳士な人が好きって言ったでしょーが!!こんな力一杯顎クイする紳士いるか!」

「っなら、紳士にすりゃ付き合ってくれるんだろうな!」



しまった。

ついうっかりそんな事を言ってしまってー…そして、ふと、隣にローブ姿の男がポップコーン片手に立っていることに気付いた。



「んー。さすが残念男。そんな横暴な態度、中々治らないと思うよ?」

「………あ」 

「お付き合いは、暫くお預けだね」



でん…

言い終わらない内に近付いてきたウィルが振りかぶりー……スパン!と小気味良い音が辺り一体に響くのであった。




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