第10話 逃げる雑用係と追う団長
最近、あの雑用係に避けられている。
なるべく自然に偵察しようとしてるのに、何故か気配を察知したようにいなくなるのだ。
洗濯場に行けば
「あ!煮込み料理の下処理忘れてたわー」
と言いながら小走りに去る後ろ姿が見え
食堂に行けば、
「うわー漂白剤廊下に置きっぱなしだった!」
と焦るようにさっさと退室。
廊下に向かえば既に姿はなく、仕方なくヴォルトに聞けば
「え、アキさん?“そろそろ脱水終わった”ってさっき洗濯場に行きましたよ〜」
と言われる始末。
……おかしい。
どこに行っても、姿が見えない。
わざとか? わざと避けてるのか?
「……おい。雑用係は今どこだ」
「ーーーはあ?いい加減、雑用係より仕事してくれません?」
呆れたジュードに言われて初めて、机の上に山のように積まれた書類の存在に気付くアレン。
(………マズい)
いや違う。問題はそこではない。
何故だ。何故、“この俺”を避けるんだ。
昔から女にはキャーキャー言われてきた自信はある。
俺が笑えば勝手に惚れ、手を振れば頬を染める。
そして、気付けば背後にいるのが“女”ではないのか?
―――なのに、あの雑用係は近寄ってこないどころか、逃げていく。
それが、何故か気に食わない。
「ーーークソ、忌々しい…」
静かに吐き捨てたアレンに、ジュードはいつもの目を向ける。
「……残念なイケメンって、本当にいるんですね」
「何か言ったか」
「いえ別に」
一方的に“避けられている”と感じている男と、
実際に“全力で避けている”女の攻防は、今のところアキの勝利で終わっている。
だが、まさかコレが、今後の関係の大きな契機になるとはこの時思いもしなかったのである。
こじらせ男子アレン。
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