第45話「陽斗の迷いと新たな決意」
夕食後、一ノ瀬陽斗はリビングのソファでノートパソコンを開いていた。
SNSでは、まだ美玲の文化祭ライブの動画が拡散され続けている。
コメント欄には称賛の声が並び、フォロワーも右肩上がりだ。
――順調に見える。でも、陽斗の表情は曇っていた。
(ここから先、どう動けばいい……?)
文化祭は成功した。だけど、それはあくまで“学内のイベント”。
本当の意味でプロの世界で戦うには――もっと大きな仕掛けが必要だ。
「……悩んでるみたいね」
ふいに母親の声がして、顔を上げた。
「えっ……ああ、うん。ちょっとだけ」
母・一ノ瀬沙耶は、微笑みながら温かい紅茶を差し出してきた。
「美玲さんのこと?」
「……どうして分かるの」
「そりゃあ、毎日楽しそうに話してるもの」
陽斗は苦笑しながらカップを受け取った。
「あなたが何かに夢中になるの、久しぶりに見た気がするわ」
そう言って、母は隣に座る。
「お父さんも私も、あなたの好きなようにすればいいと思ってる。
必要なときは、ちゃんと支えるから」
「……ありがとう」
両親は昔から“干渉しすぎない”タイプだった。
でも、こうして陰ながら見守ってくれていることが、今は素直に嬉しかった。
***
翌日、学校の昼休み。
陽斗は図書室で、美玲と向かい合っていた。
「……これからのことなんだけどさ」
「うん?」
「文化祭は成功した。でも、次にどう繋げるかって考えると、正直……まだ見えてなくて」
珍しく弱音に近い言葉だった。
美玲は少し驚いた顔をしたあと、ふわりと微笑んだ。
「……陽斗くんでも、そんな顔するんだね」
「えっ?」
「全部ひとりで背負わなくていいんだよ。私も、ちゃんと考えるから」
その言葉に、陽斗の胸が少し軽くなった気がした。
***
一方その頃、都内のスタジオ。
氷室紗季は、スタッフから渡されたタブレットを見つめていた。
「これ……結城美玲?」
「はい。文化祭の動画なんですが、業界内でもちょっと話題になってて」
氷室は動画を再生することなく、画面の静止画を見つめる。
そこには――どこか懐かしい面影があった。
(……やっぱり、あの子の娘なのね)
胸の奥で、何かが静かに動き出すのを感じた。
「この件、もう少し様子を見させてもらうわ」
そう告げて、氷室はタブレットを返した。
***
その夜。
陽斗は自室で、新しい企画ノートを開いていた。
美玲と交わした言葉が、頭の中で繰り返される。
(全部を背負わなくていい――か)
でも、だからこそ“支えられる存在でいたい”と思った。
次のステージは、待っているだけじゃ訪れない。
陽斗はペンを取り、ノートに書き込む。
《学園祭――このチャンスを、逃さない》
―――第45話・完―――
こんにちは、一ノ瀬陽斗です。
今まで、自分のことを誰かに話す機会って、ほとんどなかったけど……
今回、少しだけ“支えられている”ことを実感しました。
美玲さんのことを考えると、どうしても「俺が何とかしなきゃ」って思ってしまうけど、
彼女はちゃんと、自分で歩こうとしてるんですよね。
だからこれからは――隣で、一緒に悩んで、一緒に進もうって思います。
次のステージに向けて、まだ課題も山積みだけど……
それでも、止まらずに動き続けます。
もし、そんな僕たちの物語を応援したいって思ってくれたら、
コメントや評価で背中を押してもらえると嬉しいです。
これからも、見届けてください。




