第33話「広がる波紋と、新たな光」
朝、教室の窓際に座っていた僕――一ノ瀬 陽斗は、
スマホの画面に表示された通知の数に、思わず息を呑んだ。
(……フォロワー、昨日の倍以上になってる)
昨夜投稿した新しい動画。
学園掲示板用に制作した、美玲の“日常と想い”をまとめた短いドキュメントだった。
制服姿での登下校風景。
空き教室で練習する様子。
笑ったり、真剣な表情でノートを開いたり。
そこに、美玲のナレーションが重なる。
《夢を語ることって、恥ずかしいって思ってた。
でも、誰かと歩けたら、きっと――前に進める》
その動画が、SNSで“バズっていた”。
《#結城美玲》《#学園から本気》《#青春ドキュメント》
ライブのパフォーマンスよりも――
「学校で夢に向かって頑張っている」その等身大の姿に、多くの人が心を動かされたらしい。
(狙い通り……でも、予想以上だ)
神谷がまとめた分析グラフでは、視聴の中心層は10代女子と20代女性。
さらに、新しく立ち上げたファンサイトの登録数も急上昇していた。
スマホに、新しい通知が届く。
《○○ウェブマガジン編集部です。
結城美玲さんの特集記事を検討しており、取材をお願いできませんか?》
「……来たか」
***
放課後、メンバーがいつもの図書室に集まる。
「なにこれ、やばいじゃん!」
瑠夏が画面を指さして騒いでいた。
その隣で、美玲は画面を見ながら、ただただぽかんとしていた。
「え、え、私って……今、そんなに見られてるの?」
「それだけのことを、やってきたってことだよ」
陽斗の言葉に、美玲は照れくさそうに笑った。
「でも、見られるのに慣れてないから、変な汗出てきた……」
「いいじゃん、そういうのも“リアルで刺さる”ってウチの分析班も言ってたし」
神谷が軽く肩をすくめる。
「で、問題は――これ」
陽斗が、プリントアウトしたメールを机に置く。
「ネットメディアから、取材申し入れが来てる。
“学校で夢を追うリアル女子高生アイドル”ってテーマで、記事化したいって」
「わっ……すごいけど、……どうしよう」
美玲の手が、わずかに震えていた。
「断ってもいいんだよ。無理して出る必要はない」
「でも……見てくれてる人がいるって思ったら、やっぱり、伝えたい気持ちもあって……」
迷っている。けれど、逃げたいわけじゃない。
陽斗はそっと言葉を重ねた。
「大丈夫。一緒に考えよう。何を伝えるか、どう伝えるか」
美玲は、少しずつ頷いた。
「……ありがとう。頼ってばっかりだけど、やっぱり陽斗くんがいると安心する」
***
その夜。
陽斗は、パソコンの前で資料をまとめていた。
インタビュー内容の想定。
過去の似た特集の傾向。
質問に対する回答のトーンと、伝えたいテーマの軸。
そこへ、チャットが届く。
《神谷:お前、ここまでやれるとは思ってなかったわ。正直、感心してる》
《瑠夏:っていうかマジですごい。いつか専属スタイリストにしてよ?》
《梓:放送部でも、また特集組みますね。校内の反応、めちゃくちゃ良かったです》
《葉山:俺、記事に載るなら背景の校舎、描きたい! 使ってくれ!》
そのやり取りを見て、陽斗は少しだけ笑った。
(“俺たち”になってる)
最初は、彼女を守りたくて――
次第に、支えたいと思って――
気づけば、こんなにも多くの人が彼女のそばにいた。
(でも、きっと――彼女自身が、その“輪”を広げてるんだ)
***
翌朝。
美玲の机の上に、色とりどりの付箋が貼られた手紙が置かれていた。
『ライブ楽しみにしてます!』『テレビで見たよ!』『頑張って!』
クラスメイトや後輩たちからの、小さな応援の声。
「……これ、全部……」
「みんな、ちゃんと見てるよ。今の“君”を」
美玲の目元が、ほんの少し潤んだ。
でも、笑顔だった。
―――第33話・完―――
こんにちは、結城美玲です。
読んでくださって、本当にありがとうございます!
最近、学校でも少しずつ声をかけられるようになってきて――
正直、ちょっとだけ……いえ、けっこう恥ずかしいです(笑)
でも、こうやって「誰かと一緒に頑張る」って、こんなに心強いんだなって毎日思っています。
ステージに立つのはまだまだ緊張しますが、
隣で支えてくれる人たちがいるから、ちゃんと前を向いていられる気がします。
次のお話も、少しずつ変わっていく“わたし”を、見ていてもらえたら嬉しいです。
感想やコメント、よかったらぜひ残してくださいね!
いつも読んでくれて、本当にありがとう――!
またね。




