表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/72

第32話「交差する声と、隣にいること」

昼休み、教室の端っこ。

 僕――一ノいちのせ 陽斗はるとは、スマホで投稿用の素材をチェックしていた。


 ライブ映像。テレビ出演のダイジェスト。

 そして、校内放送の反響も。

 すべてが、少しずつ“動いている”。


「……投稿タイミング、悩むな」


 思わず独り言が漏れたとき――


「食う?」


 隣から唐突に差し出されたのは、袋入りの大福だった。


「……葉山?」


「うん。お前、最近なんか難しい顔してるからさ。糖分、必要かなって」


 葉山はやま あおい

 同じクラスの男子。天然というか、空気を読むのか読まないのかよくわからないタイプ。

 でも、なぜか誰にでも好かれていて、空気を和らげるのがうまい。


「……ありがとう」


「てかさー、あのさ……結城さん、やっぱすごいよな」


「……急にどうした」


「いや、この前の放送聞いて、ちょっと感動したっていうか。

 なんか、“同じ学校にこういう人いたんだ”って、素直に思った」


 葉山は照れもせずにそう言って、また大福を口に入れた。


「でさ。そういうの、支えてる一ノ瀬ってのも、ちょっとかっこいいなーって」


「……別に、かっこよくなんかないよ。裏でこそこそしてるだけだし」


「でもさ、陰で誰かを支えるって、けっこうできないことだと思うよ?」


 その一言が、なぜか少しだけ胸に残った。


     ***


 放課後。


 撮影素材の整理と編集のため、美玲と僕、そして瑠夏と神谷が図書室に集まっていた。


「ちょっと! この照明の角度じゃ、髪のツヤが死んでるじゃん!」


「はいはい、角度補正するから落ち着いて」


「そもそもこの字幕、もう少しふんわりしたフォントにできないの?」


「データ軽くしたくて、標準書体にしたんだよ」


 言い合いながらも、どこか“家族みたいな空気”があった。


 そんな中、図書室の入り口から手を挙げて入ってきた人物がいた。


「おーっす。なんか面白そうなことしてんなーって思って」


「……葉山?」


「なんか手伝えることある? 俺、機械は苦手だけど、ポスター描くのとかはけっこう得意だよ?」


「ポスター……?」


「うん。放送室の前に掲示するライブポスターとかさ。告知、目立つほうがいいでしょ?」


 あまりに自然なノリで入り込んできた彼に、誰も拒む理由を見つけられなかった。


「……まあ、賑やかなのも悪くないか」


「やったー、じゃあ俺も仲間ってことで!」


     ***


 そんな彼の提案で――急きょ、学園内に貼る“ライブ告知ポスター”を作ることになった。

 場所は、校内の掲示板、昇降口前、そして購買横の人気ポイント。


「この写真、よくない? 自然な感じでさ」


「うん、ナチュラルな笑顔がいいね」


 梓も合流して、ポスターに使う写真やキャッチコピーを選ぶ。


 あの静かな図書室が、いつの間にか“熱を持ったチームの部屋”になっていた。


     ***


 帰り道、美玲がぽつりと呟いた。


「……なんか、すごいね」


「何が?」


「みんなが、こんなふうに集まってくれてるの。

 前は、ひとりで全部やろうとしてたから。……ううん、ひとりじゃなきゃいけないって、思ってた」


「でも、今は違うでしょ?」


「うん。違う。……陽斗くんが、“違う”って教えてくれたから」


 彼女の笑顔は、どこかあたたかかった。


「これからも、こうして歩いていけたらいいなって、思うの」


「うん。……ずっと、隣にいるよ」


 そんな何気ない言葉が、照れくさいくらい自然に出てきた。


―――第32話・完―――


こんにちは、結城美玲です。


読んでくださって、本当にありがとうございます!


最近、学校でも少しずつ声をかけられるようになってきて――

正直、ちょっとだけ……いえ、けっこう恥ずかしいです(笑)


でも、こうやって「誰かと一緒に頑張る」って、こんなに心強いんだなって毎日思っています。


ステージに立つのはまだまだ緊張しますが、

隣で支えてくれる人たちがいるから、ちゃんと前を向いていられる気がします。


次のお話も、少しずつ変わっていく“わたし”を、見ていてもらえたら嬉しいです。


感想やコメント、よかったらぜひ残してくださいね!

いつも読んでくれて、本当にありがとう――!


またね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ