第22話「星と星が交わるとき」
週が明けた月曜日。
僕――一ノ瀬 陽斗は、ライブを終えた余韻をまだどこか引きずりながら、白鷺台高校の校門をくぐった。
でも、学校の空気はすでに変わっている。
「あのライブ見た?」
「やっぱ結城さん、すごいよね」
「もうプロのアイドルって感じじゃん」
そんな声が、あちこちから聞こえてくる。
それだけ、彼女は“特別な存在”になり始めていた。
***
放課後。
僕と美玲は、いつもの帰り道を歩いていた。
ライブ後の反響や、次のイベントの話。
そして――気になっている名前。
「……星咲 燈、知ってる?」
僕の問いに、美玲は少しだけ目を伏せた。
「もちろん。知らない人のほうが少ないよね……トップアイドルだもん」
業界で知らない人はいない存在。
美玲がこれから進もうとしている道の、そのずっと先にいる象徴的な存在。
「でも、怖いとかはないんだ?」
「……ううん。怖いっていうより――すごいなって、思うだけ」
その声は、決して怯えてはいなかった。
ただ、自分にないものを認めているだけ。
(彼女は、ちゃんと前を向いている)
***
その夜。
星咲燈は、自身のスタジオでレッスンを終えた後、マネージャーと話していた。
「結城美玲、か……」
「直接会う機会が近いうちにあるかもしれません」
「楽しみね。どんな子か、自分の目で確かめたいし」
その目は、挑戦者を受け入れる余裕と好奇心に満ちていた。
「強い子ならいいな。中途半端な子なら……それまでだけど」
***
翌日。
事務所から、美玲に新しいイベント出演の話が届いた。
その出演者リストには、明らかに一際目立つ名前があった。
――星咲 燈。
「……いよいよ、か」
僕は美玲と顔を見合わせ、少しだけ息を呑んだ。
***
ライブイベント当日。
控室で待機する僕たちの耳に、遠くから聞こえてきたのは――圧倒的な歓声。
その中心にいるのは、間違いなく“あの人”だった。
「星咲さん……やっぱりすごいね」
美玲が小さく呟いた。
でも、その表情は、恐れではなく――むしろ、憧れに近いものだった。
「……負けないよ」
その小さな声が、誰よりも強く感じられた。
***
そして、楽屋裏。
イベントの合間。
偶然か、それとも必然か。
僕と美玲の目の前に、彼女は現れた。
「結城美玲ちゃん、で合ってる?」
星咲燈。
業界のトップに立つ少女が、目の前で微笑んでいた。
「ふふ……今度のステージ、楽しみにしてるから」
その言葉は、まるで宣戦布告のようで――
でもどこか優しさも混じった、真っ直ぐな声だった。
***
僕たちの物語は、次の段階へと進もうとしている。
―――第22話・完―――
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