第19話「ライブのその先へ」
ライブから一夜明けた朝。
僕――一ノ瀬 陽斗は、ベッドに寝転びながらスマホを眺めていた。
SNSは、昨日のライブの余韻でまだ盛り上がり続けている。
『結城美玲、やばすぎた』
『この子、もっと売れてほしい』
『MCも歌も自然体で好き』
コメントは次々と更新され、フォロワーもさらに増えていた。
あの場にいた誰かが投稿したライブ映像は、もう再生数が数十万を超えている。
(……これが、彼女の実力か)
嬉しさと同時に、少しだけ背筋が伸びる。
これから先は、きっと今まで以上の期待と視線が彼女に向かう。
(……俺にできることを、もっと増やさないと)
***
学校に行くと、教室は案の定ざわついていた。
「結城さん、昨日のライブ見た!」
「すごかった……本物のアイドルだわ」
「もしかして、テレビとか出るのかな?」
美玲はそんな声を受け止めながら、静かに微笑んでいた。
その様子に、周囲はますます注目していく。
でも、美玲は変わらない。
あくまで自分のペースで、目の前のことを大事にしている。
(……だからこそ、俺がしっかり支えないと)
***
放課後。
僕たちは帰り道を歩きながら、自然と次の話を始めていた。
「……次、何か決まってるの?」
「事務所からは、しばらくイベントやインタビューが増えるって」
美玲は少しだけ気を引き締めたような表情を浮かべた。
「ちゃんと、準備しないとね」
「俺も、何か手伝えることある?」
「ふふ、頼りにしてるよ。一ノ瀬くん」
その笑顔は、以前よりずっと強く、柔らかいものだった。
***
一方その頃。
事務所内。
マネージャーの白石梨沙は、デスクで書類を整理しながら、上司と話していた。
「ここから先は、さらに競争が激しくなりますね」
「ええ。特に――星咲の次のプロジェクトと被る可能性もありますから」
その名前に、白石は少しだけ表情を引き締めた。
(星咲 燈……業界のトップアイドルの一人)
(彼女と美玲ちゃんが交わる日も、そう遠くない)
***
夜。
僕はまた、ノートを広げて次の動画やSNSの企画を考えていた。
彼女の魅力をどう届けるか。
もっと多くの人に、どんな形で知ってもらうか。
(まだまだ、やれることはある)
そして、彼女の隣にいる限り、俺も止まっていられない。
***
その頃。
とある高層ビルの一室。
星咲燈は、大きなガラス窓の外を見ながら、静かに笑っていた。
「ふーん……結城美玲、か」
その目は、どこか楽しそうで、しかし鋭い光を宿していた。
「面白いじゃない。……どこまで登ってこれるか、見せてもらおうかな」
***
僕たちの物語は、次の舞台へと動き出している。
もっと高く。もっと遠くへ。
そして、まだ知らない世界へ。
―――第19話・完―――
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