表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/72

第16話「はじめての取材と、その先へ」

週末の午後。

 白鷺台高校の校門を出て、僕――一ノいちのせ 陽斗はるとは、少し早足で歩く結城ゆうき 美玲みれいの後ろ姿を追いかけていた。


 今日は、美玲にとって初めての取材の日。

 ストリートライブでバズった彼女に、ネットメディアからインタビューのオファーが届いたのだ。


     ***


 カフェの一角に設けられた撮影スペース。

 スタッフは思ったよりも少人数だったけど、それでも美玲は少し緊張している様子だった。


「結城さん、少しリラックスしても大丈夫ですよ」


 記者の女性が優しく声をかける。

 白石さんもそっと横で見守っていた。


『無理しないで、いつもの美玲ちゃんでいいから』


 その言葉に、美玲は小さく頷く。


     ***


 取材は、思ったよりも順調に進んでいった。

 最初は定番の質問。


「いつから歌を始めたんですか?」

「普段はどんな学校生活を送っていますか?」


 でも、途中からは少し踏み込んだ内容も増えていった。


「今後、どんな活動をしていきたいですか?」

「アイドルとして目指すものは?」


 そのたびに、美玲は真剣な瞳で、でも飾らない言葉で答えていた。


「歌うことが、やっぱり一番好きです。だから、もっとたくさんの人に届けられるようになりたい」


 その言葉は、僕の胸にもまっすぐ響いていた。


     ***


 取材が終わり、ホッとしたようにカフェのソファに座り込む美玲。

 白石さんが、そっと水を差し出す。


「お疲れさま。すごく良かったよ、美玲ちゃん」


「……ありがとうございます」


 美玲は小さく笑って、水を飲んだ。


「初めての取材、緊張した?」


「……はい。でも、楽しかったです」


 その表情は、どこか晴れやかだった。


     ***


 帰り道。

 僕たちは夕暮れの街を並んで歩いていた。


「一ノ瀬くん……今日は、本当にありがとう」


「俺は何もしてないけどな」


「でも、近くにいてくれるだけで、安心するから」


 その言葉に、少しだけ心臓が跳ねた。


「……これから、もっと忙しくなるかもだけど」


「うん。でも、やりたいことだから」


     ***


 一方その頃。

 取材に立ち会っていた記者は、事務所に戻る道すがら、スマホをいじりながら小さく呟いていた。


「この子……本当に見つかっちゃったかもね」


 すでに、いくつかの大手メディアが彼女に注目し始めている。

 そして、その裏では業界の大物たちの名前も、少しずつ動き始めていた。


     ***


 夜。

 僕は自室でノートを開いていた。

 これからのプランを書き出しながら、思う。


(これから先、きっともっと大きな壁が来る)

(でも、それを越えるために――俺はここにいる)


 画面の向こうで、美玲の歌声が、今日も誰かの心に届いている。


―――第16話・完―――



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


作品への感想や評価、お気に入り登録をしていただけると、とても励みになります。

作者にとって、皆さまの声や応援が一番の力になります。


「面白かった!」「続きが気になる!」など、ちょっとした一言でも大歓迎です。

気軽にコメントいただけると嬉しいです!


今後も楽しんでいただけるように執筆を続けていきますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ