~最終幕~
ヨウチュバー「ポンチと愉快な家族」はチャンネル登録者500万人を突破し、再生数も落ち着くように。ペット系のチャンネルでは国内トップ3に入るまでに至る。私達は毎日が薔薇色のようにウハウハで過ごした。
動画も様々なアイディアが浮かぶ。ポンチと海へ行ったり、スノボやったり、色んな人気ヨウチュバーとのコラボも毎週のようにやった。誰も私たちの勢いを止める者なんていない筈。そう確信していた。私たち親子は勿論、そのチームの一員となった秋山さんだって笑顔が絶えたことなんてない。
しかし、そんな日々にピリオドが打たれる。
ポンチが行方不明になったのだ。
すぐに捜索願をだしたが、1カ月……3カ月……半年と見つからず。
ポンチと愉快な家族のチャンネル登録者数はみるみる減った。
私がロン毛のカツラを被ってフォークソングを披露しても無駄だった。むしろ逆効果ですらあった。アンチ勢のコメントが爆発的に伸びて、遂に由香里は心を痛めて無気力になる。私はもうヨウチュバーをやめるしかなかった。
「これからどうするのです?」
「わからない。今さら警備の仕事に戻ることなんて」
「私だって今さら訪問介護の仕事に戻ることなんて」
「悪いが今月から給料がだせそうにもない……」
「この新築のお家を売り払ってみては? あとポンチに変わるチワワを迎えたりしてみては?」
「ダメだ!!! 私たちはポンチじゃないとポンチのようには愛せない!!!」
「じゃあこのまま沈みゆく由香里ちゃんも見捨てて野垂れ死ぬっていうの!?」
私も秋山さんも机を大きい音が鳴り響くぐらいに叩いて罵倒し合った。
その時だ。
クゥ~ン。クゥ~ン。
「「この鳴き声は…………」」
クゥ~ン。クゥ~ン。クゥ~ン。
私たちは思わず玄関前まででた。
そこにいたのは大勢のチワワ。ポンチが複数の嫁と子供たちを引き連れ帰還した。
「ポンチ……?」
「由香里!?」
気づくといつの間にか車椅子に乗った由香里が私たちの後ろにいた。
「この色男! おかえり!」
ポンチと由香里が抱き合う。それに覆いかぶさるように私たちも。
しかしヨウチュバーとしてすっかり名が地に落ちた私たちにできることは何もなかった。100匹以上もいるポンチの子供たちの半分を売りにだすしか手立てはない。それでも幸いなことに、受け手の方々が全国から夕暮れに染まる公園にやってきた。
「可愛いですね!」
「そう言って貰えると幸いです……どうか大事にしてやってください」
「はい!」
「元気でいろよ……ポチチユリア……」
女性の受け手が15女を受け取る。ずっと堪えていたポンチの3番目の妻なるマムコが遂に泣き声をあげる。
クゥ~ン! クゥ~ン!! クゥ~ン!!!
マムコの泣き声に共鳴して町中からチワワの泣き声が響く。
公園には新しい飼い主から逃げてきたポンチの子供達が集まった。それに呼応して関係ない野犬たちまで目を潤ませて集う。
「お前たち……!?」
「血は争えませんね」
後ろから新しい飼い主になる筈だった若林支帆さんがやってきた。
「ポンチくんとその家族はどうしても貴方たちと生きていゆきたいそうです」
「そうなのか……どうすれば……」
「私に発想がない訳でないですよ」
「え……それは……」
私たちは大きな土地を買ってドッグパークを開く事にした。
その出資はやはりクラウドファンディングから得たものだった。
また同じような再出発で私たちは多大な成功を手に入れる事になったのだ。
しかしまぁポンチという愛犬になんと振りまわされた人生であった事か。
でも、それでもこの揺るがない愛をお前に贈りたい。
ポンチ――
∀・)読了ありがとうございました♪♪♪野田栄一郎さんを主人公にした作品とコメディ作品を書いてないなぁと思ったのでフェスの最後のほうで書きました(笑)(笑)(笑)というか、コレってヒューマンドラマじゃね?と思われる御方もいるかもしれませんが、冷静にみてコレはコメディです(笑)(笑)(笑)