VS.シンジュ:2 破滅の根
「銀の…剣!?」
シンジュは、自分に刺さったものを見て目を見開いた。月に照らされ、赤と銀のコントラストが映える。
「ゔぁぁぁぁ!!」
悲鳴を上げて悶え苦しむシンジュ。
(銀…)
「っし…!」
「…誰だっけ?確か加速する刃術持ってる女がいたはずなんだよな…」
シンジュの体温が上がる。
(まずい…!)
〈全員離れて!多壁はシンジュの周囲に刃術を展開!それ以外は逃げることに集中して!〉
「確かあの女、本陣にいたよなぁ…それに、あんな銃みたいな速度で剣なんて投げられない。射出したんだろ?加速するリングでさ…撃たれた方向は覚えてる。だから…」
シンジュは指を鳴らした。
「まず君から殺す。総崩れにさせてやる」
直後、シンジュの足元から無数の木の根が伸び、多数の[調査隊]戦闘員に突き刺さった。
「…あ…あ」
一人の戦闘員が呻き声を上げるが、何を言っているかは聞き取れない。意味のある言葉を発しているのかすら怪しいが。
「危なかった…指示に従ってて良かったよ」
系糸はシンジュに銀剣が突き刺さった後、指示に従って迅速にその場を離れていた。
いくら身体能力が高い刃血鬼と言えども、流石に一度の跳躍で、地面からビルの屋上まで行けるわけではない。しかし系糸の場合、血刃をビルの屋上に向かって投げれば、後は糸を高速で巻き取ることで簡単に上まで上がれるのだ。
「…にしても、なんだあの樹。生命の一部みたいに脈打ってる」
系糸は地獄の様相を呈している地上を見下ろしつつ分析をしていた。
「…顔が青くなっている。それに、縮んで…待てよ?刺さっているのは根…」
系糸は通信機をオンにし、思い切り息を吸った。
「根に触れないでください!“何か”を吸われます!」
〈…何かって何?〉
返答したのは血走だった。
「それは分からないですけど…でも、根が刺さっている人はどんどん身体が萎れてます。しかも根が脈打ってるんですよ。血管みたいに、何かを送り出しているような」
〈血とかかな。青くなってるんでしょ?まさか団長みたいなチート刃術でも無さそうだし…〉
「多分そうだと思います。…違ったとしても、あれじゃ致命傷は避けられませんけどね…」
系糸は通信を切り、もう一度地上を見下ろした。
(銀剣刺さってるんだよな?なんであそこまで動ける?あの銃弾の痛みは、溶かす寸前まで熱した鉄のドリルを突き刺されているようだった。明らかに銃以上の速度で放たれた剣を身体に刺したままで、なんでまともに戦える!?)
「…ふぅ。やっぱ人の血ってのは美味しいものだね。気分も落ち着いてきた。じゃあ、腹一杯飲んだところで…」
シンジュはその場から消えた。
通信機から、血走の悲鳴が聞こえた。
―――
「…崎。起きろ谷崎」
「あ…?んだよてめェ…殴ってきたくせに起こしやがって…」
「力を貸せ。脱出できるかもしれん」
「なんでてめェに…」
(面倒くさいな…元はと言えば貴様の理不足だろうが…)
心做は軽い爆発を起こせそうな怒りを押し潰し、優しい声で言った。
「…現状、今の人員の中で一番素のパワーがあるのは谷崎だ。谷崎でなければあの樹は破壊できない。頼む」
「…土下座だ」
「あ?」
「土下座して頼みやがれ。謝罪と同時になァ!」
心做はノータイムで谷崎に血刃を刺した。
「緊急事態だと言うのに…結局はこうなってしまうのか」
「終わったらちゃんと返しなさいよ〜」
「分かっている。では、谷崎。やれ」




