99.希望を求めて
お茶会で今後の方針を話し合った。
王国は海魔族穏健派と和平に向けて動き出すという。もちろん女王エル主導の提案だ。
海魔族側の窓口はシャチ子の父親である、海魔将軍サカマタ。領海問題に取り組み、海魔族側の生存権を脅かすような行動をしないというスタンスになる。
海魔族が魔王を求めるのも、人間への対抗手段という側面が強い。新女王のリーダーシップが試されることになる……とは、シャチ子の言葉だ。
海運網については、イレーナを筆頭としつつも実際のところは裏方のフゥリィが担当することになった。
僕らが獣魔大森林を出発してから、半ば追いかけるような格好で世界を知るため旅に出て、イレーナに拾われた狐巫女。
元々有能だったらしく、あっという間にスターティアラ号船長の右腕になり、実務を重ねて船長以上に仕事ができるんだとか。
元々、船を動かしたり指揮するのが得意な表舞台担当のイレーナと、相性ぴったりだったみたいだ。
エルとフゥリィは王都で諸々、詰めていくことになった。
僕とメイとシャチ子……それにイレーナを加えた四人は――
静かな夜。砂の海を砂上船でクルージングする。
キャビンのついた中型船は、砂の民サリヤが貸してくれたものだった。
王家の地下墳墓の巨大壁画や書庫で見つけた資料の写しも持ち込み、月の砂漠を疾走する。
聖祖ルシフが降り立ったという金字塔が、地平線のどこかにあるんだ。
夜風を頬に受けてイレーナが舵を切る。
「ん~! さすがサリヤね。船体サイズの割には小回りも利くし。しかもセッくんのスキルに合わせて改造してるから、シャワーまで浴び放題なんて。砂漠で贅沢すぎるわよね!」
夜の冷え込み対策もばっちりで、キャビンには暖炉がついていた。
シャワーにせよ暖炉にせよ、使ったあとで僕が戻せば再利用可能だ。
食料も飲み水もたっぷり詰め込んである。
「砂漠の夜って静かなんですねイレーナさん」
「今はちょうどサンドワームが根城にしていたあたりよ。アイツが生きてたら、きっと今頃襲われてたかも。セッくんのおかげね」
「みんなで倒したんです。僕だけじゃ……」
「メイメイとシャチ子は?」
「キャビンで休んでるよ」
「あは~ん! なら二人っきりじゃない! そっと砂漠に置き去りにして、逃げちゃいましょ」
「そういうのは無しにしてください」
「んも~! 冗談に決まってんでしょ! 目、笑ってなくて怖かったけど」
「ご、ごめんなさい」
「ほーんと、セッくんって時々ガチるとちょっと怖いかも。ま、危険な香りがする男って嫌いじゃないけど」
あんまり意識したことは無かったかも。旅の間に命のやりとりが普通になったから、肝が据わったんだと思う。
「舵、代わります。イレーナ船長もそろそろ休んでください」
「この船の船長はセッくんだから、イレーナって呼んで」
「イレーナ……さん?」
「ぶっぶー! って、さんづけで呼ぶのに疑問系にしてる時点で察してたでしょ? アタシの儚い乙女心! メイと同じく呼び捨てにしてよ」
「目上の方には敬称をつけたいんですけど。シャチ子さんみたいに」
「アタシが良いって言ってんだから良いのよ! でなきゃ教えてあげないわよ?」
「教えるって?」
「目的地、だいたいの見当は付いてるの。サリヤは探すのに何日もかかるって、この船を貸してくれたけど」
舵から片手を離してイレーナは星々を指さした。
「あれは天極星っていって、船乗りが目印にする不動星なの。出航前に見せて貰った王家の絵図の写しにもあったでしょ?」
「あったんですか!?」
立てた指を女船長は左右にスイングさせる。
「ちっちっち天これだからシロートはぁ。砂の海の地形や環境はサンドワームの影響もあって激変しちゃったけど、いくらあの化け物でも不動星は動かせなかったみたいね」
「じゃあ、見つかるんですね!? 聖祖ルシフが降り立った場所が!」
「千年前でしょ? 資料の絵からして、オアシスがもっと多かったみたいだし、地形ばかり見てちゃ無理かもだけど……船乗りを連れてきたのは大正解よセッくん」
イレーナから舵を譲られる。彼女は伸縮式の単眼鏡を伸ばして星の位置を確認した。
「ナビするわ。操船よろしくねセツナ船長」
「は、はい!」
「返事がよろしい!」
やっぱり僕独りじゃ見つけられなかったと思う。
みんなの協力を無駄にしないためにも、必ず聖祖ルシフの足取りから神を探す方法を見つけてみせる。
星の隠れる夜明けまでが勝負だった。
【書き溜めに入ります】
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