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69.少女たちの邂逅

【前回までのあらすじ】

闇に閉ざされた未来も、今からならきっと変えられる。

信じて神殿都市を発つセツナたち。

エビルの刺客? 死んだんじゃないのぉッ!?

 砂漠を船は行く。

 本物の海を目指したスターティアラ号は帆に風を受けて快走した。


 小型望遠鏡を手にした船員が、帆の上から操舵席に声を上げる。


「イレーナ船長! 前方になんかいますぜ!」

「なんかってなによッ! 報告は正確になさい」

「女の子でさぁ!」

「こんな砂漠のど真ん中に女の子がいるわけないでしょ?」


 舵を副船長に任せてイレーナは船の舳先へさきへ。

 望遠鏡で確認すると――


「なによアレ? 巫女さんかしら?」


 赤い袴姿の狐巫女がスターティアラ号に手を振っていた。


「遭難者ね。まったくもぅ」


 イレーナは指揮スキルで船員全員に命じた。


「減速! 取り舵10度! 微速前進!」


 船長の声が船員たちに行き渡り、スターティアラ号の巨体はまるで生き物のように進路を微調整するのだった。



 狐巫女フゥリィが獣魔大森林から旅だったのは、セツナたちの二週間後のことだった。

 森長ルプスに「世界を見て見聞を広め、これからの開かれた大森林発展のための知識を蓄えたいのじゃ」と懇願したのだけれど――


 ルプスからは「もう私も森も大丈夫だから、自由に生きて欲しい」と送り出された。


 かすかに残る少年の匂いをたどり、巫術で行く先を占いながら追いかけて追いかけて、砂の海を前に手がかりが途切れてしまった。


 会いたい。

 セツナに。

 彼と離れて改めて、自分の中に芽生えた気持ちが抑えきれなくなったとフゥリィは悟った。


 セツナには想う相手がいる。

 けど、それでも構わない。


 命をかけて戦ってくれた。

 死を覚悟したフゥリィに死ぬなと言ってくれたのだ。


「うう、セツナぁ。最後に一目会いたいのじゃ。わちきにあの時、子を授けてくれておれば森で大切に育てることもできたというのに……ああ、けれど、恨んではおらぬ。あの時に死んだはずのこの身じゃ。自業自得……。おお、なんと砂漠に船が浮かんでおる。人が乗っているようじゃのう。おーいこっちじゃ~! ああ、ついに熱さで幻覚を見るようになってしまったようじゃ。もしくは三途の川の向こうからのお迎えかのぅ」


 砂漠を知らないフゥリィは、無謀にもセツナの足跡を探して放ろうした。

 結果――

 遭難して死にかけている。


 回らない頭で船に手を振る。戦闘艦はゆっくりと狐巫女の元に巨体を近づけた。



 スターティアラ号は帆に風を受けて進む。

 瓶いっぱいの水で生き返った狐巫女は、女船長にこれまでのいきさつを語った。


「やだ……ちょっと……大変だったのね。けど、その恩人って奴のおかげで家族も仲間もみんな救われたんだ?」

「そうなのじゃ。一度は別れを受け入れたのじゃが、身を焦がす想いに駆られて、わちきは無謀な砂漠越えをしようとしてしまった。助けてくれて感謝するぞイレーナ」

「べ、別にたまたま通りかかっただけよ。それに……実はあたしもね……最近、助けてもらったっていうか。ちょっと奥手の坊やなんだけど、ここぞって時にはすんごい肝が据わってて。そいつがさ……お節介焼きで困ってる人を放っておけない奴で……ちょっと、影響受けちゃった……みたいな?」


 イレーナの頬が赤らんだ。


「なんじゃイレーナ? はは~ん、さてはお主、そやつに惚れておるな?」

「わ、悪い!? 顔だって悪くないし、たぶん付き合ったらすっごく恋人の事、大切にするタイプなのよ!」

「ではなぜここに、そやつがおらぬ?」

「今は大事な使命があって、旅を続けなきゃいけないの。あたしっていい女だから、そういうの邪魔できないし」


 船長はぐいっと胸を張った。小柄な割に大きな胸がゆっさたゆんと波打つ。


「お主ほどの女子おなごを置いて行ってしまうとは、世界の危機でも救おうというのかのぅ」

「できれば世界よりも、あたしをとってほしいけどね」

「自分と世界を天秤に掛けよるか」

「え!? 女の子ってそういうもんじゃないわけ? あんたはどーなのよ? 世界より君を取る! って言われたら」

「そ、そりゃあ……嬉しいぞ。女冥利に尽きるという奴じゃ。身も心も捧げても良いのぅ」

「でしょでしょ? ああんもう。あいつのこと思い出したらなんだかムカついてきちゃった。どうしてあの時……ぎゅっと抱きしめてくれるだけじゃ、物足りないのよ!」

「接吻か?」

「その先まで欲しいのに、あいつってば……おっぱい揉んどきゃ良かったって今頃きっと後悔してるに違いないんだから!」

「変なところで意気地なしじゃの」

「あっ! うちのダーリンの悪口やめてくれますぅ? そっちの男こそ、どーなのよ?」

「うっ……わちきらは人間よりもストレートじゃから、素直に『お主の子種が欲しい』と願い出たんじゃが」

「もしかしてノーだったってわけ?」

「そ、そうじゃ」

「ひっどーい! 女の子にそこまで言わせておいて! そいつこそ据え膳食えない意気地なしじゃない?」

「恩人の悪口を言うでない! お主も命の恩人には違いないが、あやつは森の民すべての恩人じゃ! 英雄じゃからのぅ!」


 二人はにらみ合うも、同時に肩を落として力なく笑った。


「惚れた弱みってあるのよね。なんだかわかるわ」

「そうじゃのう。好きになるということは喜びばかりと思っておったのじゃが」


 イレーナはフゥリィの手を包むように両手で握る。


「ね! 闇雲に探すよりも、うちの船員になんなさいよ?」

「なんじゃ藪から棒に」

「その恩人ってのも旅をしてるんでしょ? ずっと砂漠に居るとも限らないし」

「ふむ、確かに」

「これから船は海に戻って、武装交易船として沿岸を回る予定よ。あんたの恩人はかなりすごいっぽいし、そのうち別の場所で見つかるかもしれないじゃない?」

「なるほど。……森育ちで世間を知らぬわちきじゃが、雇ってくれるか?」

「ま、厨房とか船員の服の洗濯とかそういう仕事しか無いけどね。他になんか得意なことってある?」

「炎系巫術なら獣魔大森林でも一番の使い手じゃぞ。この船に砲はあるか?」

「自由砲塔のバリスタが四つ。側面に砲座が各二十門ってとこね」

「その数であれば、わちきの護符を貼り付けて火炎弾にしたりもできるのぅ」

「マ!? ちょっとあんたもしかして強い奴なわけ?」


 フゥリィは誇らしげに尻尾を立て、ふわりふわりと揺らして見せた。


「家事手伝いもするが、戦闘でも頼ってくれてかまわぬぞ。他ならぬ命の恩人のお主の頼みじゃ」

「べ、別に頼んでないけど……て、手伝いたいっていうなら勝手にすれば?」

「ほほぅ、これが人間のツンデレというやつじゃな。では、やっかいになる!」


 こうしてスターティアラ号に新たな船員が加わるのだった。


 二人を出会わせた人物――セツナ・グロリアスの知らないところで。

【書き溜めに入ります~!】


お読みいただき、ありがとうございます!


『面白い』『続きが読みたい』と思ったら、広告下の☆☆☆☆☆から評価をいただけるとこれは……ありがたいッ!!


応援よろしくお願いいたします~!

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