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68.闇に閉ざされて

【前回までのあらすじ】

本当の神託を手にしたセツナたち。

だけど「神様には会えない」と出てしまった。

あんまりだぁ! メイは夢半ばで儚く散ってしまうのか?

 ーー翌朝。

 神託は失敗した。

 チェーンは悔しげだ。


 人払いをした神託の間に暗い影が落ちた。


「なんも言葉が降りてこねぇ。こんなこと初めてだ。全部が闇で塗りつぶされちまって……クソッ!」


 特攻服メイドは自身の手のひらに拳を打ち付ける。


 シャチ子がムッと顔をしかめた。


「貴様、メイ様がお先真っ暗とでも言いたいのか?」


 メイがそわそわする。


「メイの未来は暗黒ですか?」


 チェーンは「ウッ」となると応えられない。

 聖女プリムも困り顔だ。


「あのねあのねメイちゃん! チェーンちゃんもきっと調子が悪かったんだと思うの」

「お調子がお悪いのですか?」


 メイの肩にそっと手を置いて言う。


「お加減がすぐれないって感じだよメイ」

「お達者で!」

「多分……お大事にかな?」

「お大事に!」


 逆にクラゲ少女に心配されてチェーンは姿勢をただすと頭を下げる。


「約束したのに、すまねぇ」

「メイは暗黒もかっこいいとおもいますから! ごめんしないで! だ、だいじょぶですし!」


 僕もチェーンを責めるのは筋違いだと思う。


「むしろ包み隠さず教えてくれださって、ありがとうございます」

「おれもどうしていいか……けど、プリムは正直な方がいいって言いやがるんでよ」


 メイは神には出会えない。

 幸せを求めても、未来は暗く閉ざされている。


 神託スキルは曖昧な言葉を並べるけど、本物だ。

 チェーンは真剣な眼差しを僕に向けた。


「やっといてなんだけどよ。おまえなら、神託をひっくり返せる。しっかり頼むぜ」

「ひっくり返す……ですか?」

「ああ。結局よぉ。未来ってのは今からでも変えられるんだ。神託授けても運命をありのまま、受け入れた奴に幸運は訪れなかった。だよなプリム?」


 聖女が豪奢ごうしゃな椅子で脚をぷらんぷらんさせながら「うんうんそだよぉ~!」と頷く。


 今のままだと闇が訪れる。

 きっと「警告」だ。

 メイの運命を変えるには、旅を続けなきゃならない。


 プリムが言う。


「セツナちゃんたちはこれからどうするのぉ?」

「予定通り、王都に向かおうと思います。メイを人間にする方法を探してみます」

「じゃあじゃあチェーンちゃん。三人が無事に王都にたどり着けるように、送ってってあげて」


 特攻服メイドが腰に手を当て胸を反らす。

 たゆんと揺れる双丘に一瞬、意識が持って行かれそうになった。


「おうよ! 任せておきやがれ! 護衛してってやっから」


 メインの触手ツインテールが僕の脇腹をツンツンする。


「んもぉ。先生はおっぱい大好きですか? メイも早く大きくなりますから、ご期待ください」

「ち、違うって。誤解だから!」


 とっくに見抜かれてるみたいだ。形ばかりの否定にメイは「よろしくてよ。おほほほ」と令嬢っぽい口ぶりになる。


 シャチ子がチェーンの前に一歩進み出た。


「待て。護衛などしてもらうわけにはいかぬ。貴様を海魔族の争いに巻き込む訳には……」


 ガバッと動いてチェーンはシャチ子と肩を組む。


「おれらは殴り合った仲じゃねぇかダチ公? 遠慮すんなって。王都に入っちまえば一安心なんだろ?」

「クッ……こういうノリは……嫌いじゃない」


 道の途中、海魔族の刺客と遭遇するかもしれない。

 一緒に戦ってくれるなら心強い。


「お世話になります。チェーンさん」

「まかせとけって。あとなセツナ。例のパンチは毎日磨いておけよ?」

「はい。ありがとうございます!」


 教わった高速拳打を思い出し、僕は右手を強く握り込んだ。



 神殿都市の正門前に聖女プリムが直々に見送りにやってきた。

 仕えるメイドたちも勢揃いだ。


 黒馬にまたがり先陣を切るのは特攻服メイドのチェーン。

 筆頭を先頭に武闘大会参加者の屈強な男性メイドたちが紡錘陣形を敷く。


 僕らは陣の中程、中央に包まれるようなに配された。


 チェーンの声が響く。


「行くぞ野郎ども! 王都までノンストップだ!」


「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」


 合戦でも始まるみたいな野太い雄叫びが響いた。


 プリムが拡声魔導具で後方から言う。


「また困ったら神託受けに来てねぇ!」


 シャチ子の馬に同乗するメイが「んしょ」と女剣士の身体をよじ登り、肩車して両腕と触手ツインテールをプリムに振った。


 筆頭メイドが号令する。


「いざ出陣だコラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 砂煙をまき散らし、護衛のメイド軍団とともに僕らは街道を爆走した。

 本日、王都までの道は聖女の「神託」で危険なため一時通行止め。


 貸し切りの道を騎馬軍団が一陣の風となって突き進む。


 と――


 神殿都市から出て五分ほどで、海魔族の刺客が道の前に立ち塞がった。


 全身が暗褐色で体中に突起のようなものがある、ぬめっとした肌をした人型の海魔族だ。


「我が名はママナコ! 海魔王の器を手にして支配者と君臨する者なりぃッ!!」


 手にした通真珠から神官エビルの姿がぼんやり浮かび上がる。


「ママナコさん。ずいぶんと待った甲斐がありましたね」

「ヌッハッハッハ! 聖女のいる神殿都市に連中がいるのはわかっていたのだぁ!」

「どうして侵入なさらなかったのですか?」

「焦りは禁物ぅ! 待ち伏せして確実に仕留めるのが我が闘法よぉ!」

「他の刺客に先を越される危険がありましたが……」

「聖女なんてもんがいる町だ。もし失敗すりゃ王都からヤバイ連中がやってくるかもしれねぇし。行く奴ぁおつむが足りてねぇんだ」

「なるほど。リスク管理でしたか。大変頭が良いですね」

「それによぉ聖女ってのは神託ってのができるんだろ? こっちの侵入もバレてるかもしれん。暴れようって奴のことを事前に知ってたら、てめぇさんはどうする?」

「検問所で即検挙でしょうか」

「つーわけよ。だからここは待ちが鉄板ってわけだヌッハッハッハ!」


 幻影の神官がうやうやしく礼をした。


「かつて、あのカニバーンさんさえも手玉にとった貴男の手腕、期待していますよ」

「我がキュビエ器官に絡みつかれたものは身動きを封じられ悶絶絶頂のうちに服従を強いられるのだぁ! ヌハハッ! 海魔王になった暁には、お前の望みをなんでも叶えてやるぞエビル!」

「それは楽しみ。ですが……前を見た方がいいかもしれませんよ」


 エビルの姿がフッと消えた。

 同時に――


 黒馬が前足を上げた。ナマコ海魔族の顔面を踏んでそのまま地面に沈める。

 馬上でチェーンが吠えた。


「どけどけどけどけよコラァ! 本日は公道貸し切りだぞッ!! 轢き転がされてぇのかッ!!」

「ぎょわああああああああああああ!」


 踏み潰したあとで確認しても手遅れだけど――


 ナマコ男の上を荒くれメイドたちの駆る馬が踏み抜けて行く。


「セツナ様ッ! ここはメイ様を頼むッ!」

「メイ! こっちに移れるかい?」


 手を伸ばすとクラゲ少女が触手ツインテールを僕の腕に絡ませた。

 引っ張ってこっちの馬に移乗させる。


 シャチ子は名刀月光を抜くと、鞍からあわや落馬寸前という感じで「横乗り」になった。


 刀は下段。石畳に切っ先の火花を散らしながら、踏みつけられて身動きのとれないナマコ海魔族目がけて刀を引く。


「むざむざやられに出てくるなど、笑止ッ!!」

「や、や、やめろおおおおおおおおおおお!!」


 ナマコ男が口から白い糸状の粘液を吐き散らす。

 メイが吠えた。


「気をつけるのですシャチ子よ! そのネバネバは危ないのですから!」

「我が剣に断てぬものなどありませんッ!!」


 シャチ子の一閃は空気を切り裂き、ふわりと広がる粘液もろとも、ナマコ海魔族を両断した。

 ナマコ男の手にした通真珠がパキリと割れる。


 刺客と遭遇してものの十数秒――

 馬上に戻ったシャチ子が刀を鞘に収める。


 僕らはメイド男たちに守られて王都への道を上っていった。

お読みいただき、ありがとうございます!


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