64.お部屋に呼ばれる流れ……ウッ(二度目)
【前回までのあらすじ】
聖女の神託スキル、全部偽物でした。
嘘か誠かそれさえも怪しいのだが――
ノックをすると部屋の中から「はぁ~い。どうぞぉ」と、甘ったるい声が返ってきた。
「失礼します」
部屋に入る。中にあったのは豪華な装飾の施された天蓋付きのベッドだ。
ピンクのスケスケとした下着みたいローブに身を包んで、ちょこんと座っていた。
僕が女性の部屋を訪問すると、決まって薄着なのはどういうことなんだろう。
神の意志が介在してるんだろうか。
「ふあぁ~あ。あらぁセツナちゃん、メイド服着るのが癖になっちゃったのぉ?」
「事情があるんです」
あくび交じりで少女は眠そうに目を擦る。
こっちの視線のやり場がない。
白い肌がうっすらピンクになっていた。最近、女の人の裸と何かと縁がある。
「ちょっとぉ? こっちちゃんと見て? ね?」
「お話があるなら服を着てください」
「パジャマ着てるでしょでしょ?」
ベッドから「よいせ」と降りて、聖女はとてとてと幼女みたいに僕の元まで駆け寄った。
メイよりも発育が良い胸がぷるぷる揺れる。
まるで全身、マシュマロでできてるみたいな柔らかさだ。
触れてもいないのに理解させられる。
「僕だけ呼び出した理由を教えてください」
「あのねあのね、夢……ぜんぜんダメダメなの。神託降りてきそうもなくて」
元々、プリムに神託スキルは備わっていない。と、チェーンは言う。
筆頭メイドの言葉を全面的に信じるなら……だけど。
どれだけ背伸びをしても、がんばっても降りてくるはずがない。
「あまり無理しないでください。焦らずに。大丈夫ですから」
「わぁ! セツナちゃんって優しいんだぁ。その優しさで何人の女の子を泣かせたのかなぁ」
「僕は誰も泣かせたりしてないですよ?」
「ん~そうかなぁ。見える……見えるよぉ! 三人くらいかなぁ?」
当てずっぽうだと思うけど……。
なぜか頭にシャチ子とフゥリィとイレーナの顔が思い浮かんだ。
「本題を進めてくださいプリム様」
「うふふ♪ かわいーんだぁ。あのねえっとね、メイちゃんのこと……本人よりもそばにいるセツナちゃんに教えてもらう方がいいかなって。客観的? みたいな」
「メイのこと……ですか?」
「どうして旅をしてるのかとかぁ、神様に会いたい理由とか? 知らないから神託ちゃんが遊びに来てくれないのかもかも」
口ぶりはふんわりしてるけど、プリムの表情は真剣だ。
本気でメイのためにがんばってくれている。
すべてを伝えてしまっていいのだろうか。
伝える意味さえないのに。
下手に情報を教えれば、プリムを海魔族の権力争いに巻き込みかねない。
「セツナちゃん、辛そう? おなか痛い? ベッドでご休憩する? 膝枕くらいならしてあげよっかな」
「遠慮しておきます」
「変なセツナちゃん。あのね、つらいときはつらいって言わないといけないの。人間は助け合って生きてるんだって。チェーンちゃんもよく言うの。困った時はお互い様って」
特攻服メイドと僕は全然違う。なのに、ところどころ被っていた。
孤児院出身で、奴隷にされかけて、守るべき人がいる。
座右の銘まで一緒だ。
「お互い様……か」
「うんうん! 聖女のお仕事は、そんな困った人のためにあると、あたしは思うんだぁ」
隠す必要はないかもしれない。
ただ、知ってもらうだけでも十分だ。
メイが海魔王の器だということ。
玉座を捨てて普通の人間になりたいという願い。
僕は聖女プリムに、今日までのいきさつを伝えた。
メイの過酷な現状を。
望まぬ力を生まれ持ち、魔王にならなければ死ぬしかないと同族に刺客を差し向けられる……ごく普通の少女の運命を。
すべてを語り終えた時――
「ひどいよ! あんまりだよ! その神官エビルって! メイちゃんは何も悪くないのに……うっ……うぇ……うぇえええええええええあああああああんん!」
大粒の真珠みたいな涙をぽろぽろこぼして、プリムはメイのために泣いてくれた。
僕に抱きついてぎゅっとしながら、目を真っ赤にする。
「あのねあのねセツナちゃん。あたしにはチェーンちゃんがいてくれたの。メイちゃんにはセツナちゃんとシャチ子ちゃんがそばにいるよね? 絶対にメイちゃんを独りにしないであげてね!」
「もちろんです」
「約束だよ? 指切りげんまんなんだから」
僕はプリムに手を取られて小指同士を絡め合い、リズミカルに指切りげんまんする。
聖女は目をこすって涙を落とすと、キリッと極め顔を作った。
「あたしも約束するねセツナちゃん。必ず神託を降ろして、メイちゃんの探す神様の居場所……ばしっと見つけてあげるから!」
気合いを込めて拳をぎゅっと握るプリム……だけど――
彼女に力は無い。神の居場所が見つかるかは望み薄だ。限りなくゼロに近い、偶然の当てずっぽう。
僕がきちんと「聖女の神託」を解釈しなくちゃいけない。
プリムは言う。
「けど、今夜は女子会だから、明日まで待っててね。メイちゃんのこともわかって、ばっちり神託がビビッと来る気がするの」
「ありがとうございますプリム様」
「んもー! プリムちゃんでいいのに。秘密を打ち明けてくれた仲なんだし」
「さすがに聖女様をちゃん付けで呼ぶのは勇気が要ります」
「あっ! そかそか。チェーンちゃんが怖いもんねぇ」
泣いていたかと思えば、カラッと笑ってプリムは万歳する。
「はい! じゃあセツナちゃん、ぬんぎして?」
「ぬん……ぎ?」
「脱がせるの! メイドさんでしょ? お仕事お仕事」
「僕は別にメイドの仕事をしているわけじゃなくて、ただの女装少年ですから」
自分で言ってて何言ってんだこいつって思った。
「それじゃ不審者の変態さんだよ。メイドさんのお仕事してればギリギリセーフみたいな? 早くしないと最強警備の筆頭メイド呼んじゃうよぉ?」
「けど、プリム様の服……スケスケの一枚だけだし。それを僕が脱がせたら……」
「そしたらクローゼットのお洋服を着せるの」
「それくらい一人でやってください」
プリムは胸をぷるんと張った。
「メイドさんのお仕事がなくなっちゃうでしょ? 聖女として失業者対策に自信ありなんだからぁ」
仕事を与えるのが仕事。そういう考え方もあるのか。
「ほらぁずっと腕あげてたら疲れてきたかも。しびれちゃうぅ! ぬんぎしてぇ!」
メイよりも幼女感丸出しだ。
仕方ない。本人の希望だし。
「わかりました。目……閉じてますんで」
「はぁい♪ もぅ恥ずかしがり屋さんなんだから」
僕はプリムのローブに手を掛け脱がす。目は閉じたままだ。
と、その時――
トントンと廊下側から音が響く。聖女の寝室の扉がノックされたんだ。
プリムがまったり返答する。
「はぁいどーぞー」
「しつれーしまーす!」
ガチャリと扉が開いた。一声でメイだと気づいたが、もう遅い。
プリムのローブを脱がしている真っ最中で手が止まった。
目を開く。
扉の前に立つメイと視線がピタリ。
クラゲ少女の触手ツインテールが天井にガコン! と、突き刺さった。
怒髪なんとやらなのか!?
メイが叫ぶ。
「あああああああああああああああ! 先生がプリムちゃんをバナナにして食べちゃううううううう! らめぇえええええええ!」
「食べないよ誤解だから!」
「メイもぉ……クラゲのおつまみになりたい人生でした」
触手ツインテールを短くして、天井に髪の毛でぶら下がりながらメイは振り子みたいに揺れる。
ブランコがなくてもブランコ遊びができるんだ。すごいなぁ。
プリムがメイに語りかける。
「ほらほらメイちゃんも聖女様のあたしのお着替えをお手伝いして? いいよね?」
「なぬ!? お着替えですか?」
「そうよぉ? セツナちゃんはメイドさんだから、お着替えのお仕事をしてもらったの。食べられたりしないから、安心してね」
「先生! メイは……早とちりでした。すっかり女装変態メイドさんになっちゃったかと……うっかり者にて、これはセップクです」
「いやうんあのね。メイは何も悪くないからね」
誤解を招いたのはメイでも僕でもない。強いて上げればプリムだけど、一番悪かったのはタイミングだ。
ひとまず――
明日にもう一度、プリムが神託チャレンジをする。
その時にはチェーンのフェイク神託がプリムに伝わっているはずだ。
僕が上手く解釈する。そうしたら王都に向けて再出発しよう。
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