63.聖女の秘密
【前回までのあらすじ】
空を切り裂く拳の簡単なつくりかた。
まず正しい「型」を覚えます。次にその「型」と身体の習熟度を100年分の修練で磨き上げます。
今回は時間スキルで先に修練しておきました。(料理番組感)
はいできあがり。……めしあがれ!
庭園のベンチに並んで座る。チェーンはこっちは見ないで、まっすぐ前を向いたままだ。
「プリムには神託なんてスキルはねぇんだ」
「そうだったんですね」
「驚かねぇんだな」
別に確信があったわけじゃない。
「僕にはチェーンさんがプリム様を必要以上に守ろうとしているように見えました」
「あいつは何にも知らねぇんだ。実はプリムのスキルはわかんねぇんだよ。鑑定前に奴隷商人ぶちのめしたし」
「じゃあ、今までの神託は?」
筆頭メイドの眉間に薄く皺が寄る。
「全部それっぽいことを並べてやっただけだ。神託を受けることになった人間は、神殿でしばらく生活してもらう。その間に、おれが他のメイドたちの見聞きした依頼人の情報を分析して、もっともらしい神託をでっち上げる。で、朝になったらプリムにそっと伝えんだよ」
依頼者が聖女神殿に数日滞在する本当の理由は、情報収集だ。
「騙したんですか?」
チェーンがこちらに顔を向ける。
「けど、どいつもこいつも満足してる。おかげで五年先まで予約でいっぱいだ」
嘘も方便という割に、チェーンはどことなく気まずそうだ。
「僕に教えて良かったんですか?」
「あのパンチにゃそれくらいの価値がある。それに……」
「それに?」
間を置いて筆頭メイドは表情を引き締めた。
「神を探す……メイの目的ってのは並みの願いじゃねぇ。おまえが神託の仕組みを知ってりゃ、間違った方にばく進しねぇよな?」
嘘だと正直に話してくれた。と、思う方がいいかもしれない。
「わかりました。善処します。けど、やっぱり不思議です。プリムさんはどうやって聖女に選ばれたんですか?」
「そ、そりゃあアレだよ。おれが裏で色々がんばったんだ! 文句あっかコラァ!」
急に焦り出したぞ、この特攻服メイド。
まだ何か、隠しているのかもしれない。
「文句なんてないですよ! プリム様は聖女としてみんなに慕われてますし、しっかり役目を果たしてると思います」
「なんかよくわかんねぇけど、あのふわふわってしてるとこがいいんだろうな。聖女っぽくてよ。おれなんかと違って、愛されるのはあいつの才能だ」
チェーンはベンチから腰を上げた。
「秘密は他言無用。バラしたら殺す」
「命がけの守秘義務ですね。わかりました」
「明日までにはプリムに神託を囁くんで、適当に見切りをつけて出発しろ」
僕の返事を待たずに特攻服メイドの背中の夜露死苦が遠のいていった。
やっぱりちょっと納得がいかない。
神託が嘘っぱちだったから。じゃないんだ。
ハッタリだけで聖女になんて、なれるんだろうか。
いくらメイドたちから噂を集めても、さすがに無理があるんじゃ……。
と、その時――
神殿に仕える若いそばかす顔のメイドが、僕を見つけるなりやってきて言う。
「プリム様がお昼寝からお目覚めになられました。あなたを呼ぶようにと……」
「僕だけですか?」
「そのように仰せつかってます」
メイとシャチ子抜きで?
「わかりました。すぐにうかがいます」
「こちらです。ご案内します……けど、その格好でいいんですか?」
「脱ぐに脱げない理由があるんです」
僕は現在、メイとのかくれんぼの真っ最中だ。メイドに紛れたという設定が生きている間は、クラゲ少女に発見されるまでメイド姿を維持しなきゃならない。
恥ずかしいけど。
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