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56.トーナメントの意味

【前回までのあらすじ】

王国中が注目するビッグイベント! メイドの頂点メイドル目指してみんながんばれがんばれ!

なお、出場者64人中、62人は男性の模様。

 チェーンは闘技場のフィールドを黒馬で駆け抜ける。砂煙が巻き上がった。

 そのまま進んで馬を降りるなり、審判員から拡声魔導具をむしり取る。


「オイコラてめぇら! お行儀良くトーナメントたぁつまんねぇことしてんじゃねぇよ! 今からこの場で全員で殴り合いだコラァ! 立ってた8人で決勝トーナメントすっぞ! おらすっぞ!」


 うおおおおおおおおおおお!


 と、男たちが声を上げた。いきなりバトルロイヤルッ!?

 メイドたちは嬉しそうだ。


「俺、チェーン様と逆のブロックだったからチャンスじゃんか!」

「三人で囲めばチェーン様だって倒せるんじゃねぇか?」

「誰でもいいから殴りてぇ」

「みんなメイドの心を忘れてるよ? ちゃんと強そうな人から順におもてなししないと」

「強者はただ勝ち残り、敗者は地面に這いつくばる。それだけのこと」

「チェーン様に凸を決めるのはオレだあッ!!」


 突然のルール変更に文句の一つも出なかった。お祭り好きの集まりって怖い。


 シャチ子が叫ぶ。


「セツナ様はメイ様を連れて安全な場所に待避を!」

「う、うん! そうした方がいいみたいだね。行くよメイ」

「ええぇ!? メイもどさくさに紛れたし」


 ここにもいたよ。お祭り好き。


 とどまろうとするメイをお姫様抱っこで掬い上げて、僕は闘技場のフィールドから、選手が入退場する通用口まで逃げ伸びた。


 実況席に黒い神官服の実況者。解説役として隣に聖女プリムが座る。


 プリムの前にはお椀型のゴングがあった。


「それじゃあまとめてぇ~試合開始ぃ!」


 拡声魔導具から聖女の声とともにカーン! と心地よい金属音が響いた。

 瞬間――


 目と目があったメイド同士の殴り合いが始まる。

 チェーンの元に屈強たちが一斉に襲いかかった。


 そこへ――

 猫耳と尻尾を風に揺らしてシャチ子が飛び込む。


「多勢に無勢とは卑怯なり」


 チェーンがニヤリ。


「来やがったか魚女」

「貴様とは決勝で戦うつもりだ」

「なら雑魚散らし手伝えや」

「言われるまでもないッ!!」


 猫耳メイドと特攻服メイドは互いに背中を預け合う。右から左から前から、時には上から襲ってくる無数の筋肉ダルマメイドをちぎっては投げていった。


 実況席で黒衣の神官が言う。


「おーっと! 早くも十人が優勝候補チェーン様と謎の猫耳メイドの手により玉砕爆砕粉砕瞬殺ぅ! いったいこの猫耳は何者だ!? えー……手元の資料によりますとシャチ子! 猫耳海魔族メイドのシャチ子だああああ!」


 と、ハイテンションな紹介がされた。


 会場は大盛り上がり。シャチ子が海魔族だからか、ブーイングも起こっていた。


 そこかしこで血湧き肉躍る打撃戦が展開されるなか、地味に寝技で関節を極めるメイドやら、痩身のご老体ながら攻撃をすべてさばききるカウンター型古式風メイドなどなど、強者の顔ぶれが少しずつ見え始めてきた。


 僕にお姫様抱っこをされたままメイが言う。


「シャチ子もいないし先生と二人きり。なんだか初めて出会った頃みたいですか?」

「今、このタイミングで思い出に浸るの!?」

「ありゃぁ。ロマンチックならず。メイは経験が足りませんが、先生とならその……もっと経験……増やしたいなぁって」

「ちょっとおかしな経験は現在進行中で増えてるんじゃないかな」


 メイドたち(64人中62人が男性)の殴り合いを間近で見ながら思い出語りなんて、なかなかできることじゃないし。


 こうして僕らが見守る中――

 シャチ子はチェーンと互いの死角を埋め合って、見事な共闘っぷりを観衆に披露した。

 最初のブーイングもシャチ子の強さに収まり、一人メイドを張り倒すごとに声援と拍手に置き換わる。


 チェーンとのコンビネーションも、まるで何年も前から良く知る二人のような、あうんの呼吸だ。


「左カバー甘いぞコラァ!」

「そちらこそ右目が開いていないのではないか?」

「うるせぇわかってっから」

「貴様には決勝で敗北をプレゼントしてやろう」

「言うじゃねぇか魚類が! 魚肉ソーセージにして喰っちまうぞ!」

「私は魚ではないッ!!」


 二人の拳が同時に巨体を吹っ飛ばした。男たちは砂の地面を転がって動かなくなる。


 普段、メイにぞんざいに扱われ気味なシャチ子が楽しそうだ。

 戦いといえば生死がかかるのが当たり前だったけど――


 たまには息抜きみたいな戦いが、シャチ子には必要なのかもしれない。



 ぶちのめされた男たちが死屍累々……と、死んではいないけど、フィールドのあちこちに散乱する中――


 カーン! カーン! カーン! と心地よい鐘の音が響いた。


 フィールドに立っていたのは、シャチ子とチェーンを含む八人の精鋭。

 このバトルロイヤルを生き残った者たちは、みんな歴戦の勇士の顔つきをしていた。


 実況席からプリムが宣言する。


「はーい! じゃあ怪我人ちゃんたちの治療が終わるまでちょっと休憩ねぇ」


 開会式がそのままベスト8進出決定戦になったため、運営側はてんやわんやだ。

 これだけ同時に負傷者が出たのも想定外っぽい。


 メイの触手ツインテールが僕の背中をつんつんする。


「先生! お手伝いですね!」

「そうだね。治癒士の人たちも困ってるみたいだし」


 僕らはフィールドに戻って、治癒士に混じり怪我人を元の状態に「戻し」ていった。

お読みいただき、ありがとうございます!


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