47.迫る船長
【前回までのあらすじ】
沈められた船を元通り戻してサンドワーム倒して超有能スキル持ちで優しかったら――
惚れてまうやろがい!
主人公セツナの貞操が危ないッ!?
「メイの夢を叶えた後なら、お手伝いできます」
「アタシはその次……か。どうして先にセッくんと出会えなかったのかなぁ。もう……バカバカ神様のバカ-!」
イレーナは僕にぎゅっと抱きついてきた。
大きな膨らみをぐいぐい押しつけてくる。
「じゃあじゃあ……チューくらいしてよ。それからイレーナちゃんよくがんばりまちたねえらいえらいって、バブらせて」
「バブ……え?」
「アタシを甘えさせなさいって言ってんのよ!」
急にドスの利いた声を出してきた。何言ってんだこの人は。
「セッくんならアタシのママになってくれるって思ったの! もうね、恋人になれないならママでいい! いや、むしろママがいい!」
「落ち着いてくださいイレーナさん!」
「ああんもうオギャらせてぇ! ねえセッくんってさ修復士っていうけど、時間とか戻してるっぽく見えるのよね。アタシを赤ちゃんにしてちょうだい! ミルクちょうだい! おむつ換えてほしいの!」
「ずいぶん尖った性癖ですね」
「セッくん面倒見いいからきっと良いママになれると思うのよ! 才能あるってアタシが保証してあげる!」
「いりませんよそんな保証!」
「じゃ、じゃあじゃあ……せめて頭なでなでちて? そうしてくれたら、あの二人の会話の内容、聞き取れた範囲内で教えてあげるから」
「二人を裏切るような真似はできません。言えないことや、聞かれたくないことだからわざわざ海魔族語で話してるんだし」
イレーナは顔を上げてじっと僕の瞳をのぞき込む。
「んもう! 何よ! 本当にいい人じゃない」
「はい?」
「あの二人……っていうかメイメイだけど、セッくんのことを褒めてばっかりなんだから。海魔族語で秘密にしてるっていうよりも、海魔族語でも褒め称えてるみたいな感じ」
「そうだったんだ」
「けどメイメイって、人間語だとポンな感じだけど、中身は結構しっかりしてるわよ。海魔族語の時は高貴な立場の大人物みたいな話し方だし」
「あ、えっと……うん」
やっぱり王族らしく振る舞っているんだろうな。と、思うばかりだ。
「はい! 教えてあげたから良い子良い子してちゅっちゅしてねママ」
「ママじゃないですよイレーナさん」
「あのね、うっかりエッチな気分になっちゃった時のために、こうして部屋に招いたんだけど……」
潤んだ瞳は真剣だ。
イレーナから大きな好意を感じた。
熱して赤く輝きを増した鋼鉄のような想いがあふれ出す。
僕は……。
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改修を終えたスターティアラ号が、船員を乗せて砂の海へと出港する。
船のへさきで船長帽子が風に揺れた。
「ほんとバカ-! アンタなんて知らないんだからねーッ!!」
口で文句を言いながら、イレーナは小さな身体を目一杯に伸ばして腕をぶんぶん振った。
メイが吠え返す。
「バカって言った方がバカなんだがー!? このちびっ子おっぱいが!」
「アンタだってチビじゃないのさー!」
巨大な船体が離岸してゆっくりと遠のいていった。
進路は南西。砂漠を越えて蒼い海を目指すらしい。
僕らと同じく、見送りに来た踊り手サリヤが目元の涙を拭う。
「イレーナ船長の新しい船出で幸アレ。船という家があれば、きっとまた団を復活させられるでしょう」
言うとサリヤは舞うように僕に一礼した。
「このたびは砂漠の民のみならず、イレーナ船長の心までお救いくださりありがとうございますセツナ様」
「僕は自分ができることをしたまでです。頭を上げてくださいサリヤさん」
ゆったりと優雅に顔を前に向けると、踊り手の目元がほころんだ。
「その友愛、我々は決して忘れません。皆様の出港の支度も調っております」
港に小型の砂上船が入港してくる。真新しい白い船体だ。
「あの、えっと……これは?」
「アゼリアの砂上船はアゼリアの民のものですから、新しく用意させました。東部貿易航路の再開で、止まっていた物流も再び動き出しましたし。せめてものお礼です」
白い砂上船の帆にはクラゲを模した紋様が描かれている。
シャチ子が「ほぅ」と頷いた。
「良いデザインだな。メイ様が乗る船に相応しい」
サリヤも「気に入っていただけて幸いです」と楽しげだ。
メイは両腕と触手ツインテールを万歳させた。
「先生! クラゲですよ! メイと同じですね! これは捗る!」
「そこは捗るじゃなくて……ええと、テンションが上がるってことかな?」
「テンション上がってきますねぇ! このクラゲ号は!」
船の名前が決まってしまった。まあ、メイらしくていいと思うけど。
サリヤが僕をじっと見つめて告げる。
「砂漠の四部族はいつでもセツナ様の味方です。困りごとがありましたら、なんなりとお申し付けください」
「ありがとうございます」
「船には羅針盤も取り付けてあります。進路は北西にとるのがよろしいかと。地図に集落の位置も記しておきました」
砂上船はなだらかの砂地と風があってこそ自在に動かせるため、行けるのはサリヤの記した村までだ。
船はそこで預かってもらって、いつでも僕らが帰ってきて乗れるよう整備しておいてくれるということになった。
王都で調べ物が終わったら、安全な砂漠にいつでも戻ってこられそうだ。
もし、メイが人間になれたなら――
海魔族の王の器でなくなる……ってことになると思う。
神官エビルがメイの命を狙う理由だって消えてしまう。
そうしたら港町に戻って、静かに暮らせそうだ。
なんとしてでも、メイを人間にしよう。
決意を固めた僕に踊り手サリヤは続けた。
「砂の海を北西から抜けた先には、灰色石の森という岩石地帯があります。その辺りで最も栄えている神殿都市まで行けば、王都までもあと少しというところです」
「はい。まずはその町まで行ってみたいと思います」
ここからが正念場だ。砂漠で死んだと思われているメイだけど、砂漠で満月を迎えた時に王の波動が出てしまっている。
砂の海を出れば待ち伏せの可能性もあった。
ちょっと心配だけど――
メイの手が僕の手をぎゅっと握る。
「参りましょう先生。ついでにシャチ子も」
もう片方の手でメイはシャチ子の手を握った。
「つ、ついでとは悲しいですメイ様」
「じゃあオマケで!」
「もっとひどくなっているではありませんか!? セツナ様……メイ様の人間語の先生なのだから、この責任はセツナ様にあるぞ!」
「ええっ!?」
僕らのやりとりにサリヤは目を細めて「ふふふっ」と上品に笑った。
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