41.船長はご機嫌斜め
【前回までのあらすじ】
砂漠の民と砂上戦闘艦デザートムーン号に助けられたセツナたち。
雇われ船長イレーナはどうにもツンケンした態度。
メイたちが原因ってマ?
船を船員たちに任せて、イレーナとともにバザールの通りを抜ける。
酒場のような建物に案内された。けど、お酒はなくて客は水煙草をふかしていた。
僕らには冷たい飲み物と果物が用意された。
久しぶりのバナナにメイは幸せそうだ。
メイはそっとしておいて、僕がサリヤから事情を訊いた。
現状は、良くないらしい。
砂海宮は砂上船を使った陸の海路の重要中継地点で、東西南北の航路が交差する場所だそうだ。
現在、東の航路は閉鎖中。サンドワームによって十二の村と町が滅ぼされた。
このままだとサンドワームはいずれ、砂海宮にもやってくるかもしれない。
東部砂海出身のサリヤがなんとか討伐しようとしているけど、巨大な化け物を相手に退けるので手一杯。
他の地域の民たちも、私財をなげうってまで戦おうとはしていなかった。
サリヤは最後に締めくくる。
「そこで海戦のプロを雇うこととなり、イレーナ船長をお呼びしたの」
イレーナが胸を張る。
「そーゆーこと。ここなら大嫌いな海魔族とも顔を合わせることがないし……って、思ってたのに、なんなのアンタたち?」
メイのバナナを剥く手が止まる。
「め、メイだって好きで来たわけじゃないが?」
すぐにシャチ子も反応する……かと思いきや。
「ふああああぁ! 水煙草気持ちいいいい」
ダメだこの女剣士。嗜好品に弱すぎる。
ともかくイレーナは下船してからもずっと、メイとシャチ子に敵意を剥き出しっぱなしだ。
「どうしてそんなに海魔族を嫌うんですか?」
イレーナはフンっとそっぽを向く。
「アンタに言う必要とかないしー」
僕にも辛辣だ。サリヤが困ったように眉尻を下げた。
「イレーナ船長。お三方は私たちの故郷の一部を持ち帰ってくれた恩人です」
「砂上船と水瓶だけでしょ?」
「十分に宝ですから」
「アンタにとって恩人でも、アタシの事情を話す理由にはならないし」
人には言えないこと、言いたくないことがあると思う。
僕は小さく頷いた。察して踊り手は小さく息を吐く。
「セツナさんのお話が本当なら、アゼリア村は人が住めるほどに復興しています」
スッと席から立ち、サリヤは舞うように僕に頭を下げた。
「どうかサンドワーム討伐のあとで、各地のオアシス復興をお願いできないでしょうか? 修復士様」
僕らは王都に行かなきゃならない。
急いだ方がいい。
けど――
神官エビルは僕らが死んだと思ってるはずだ。
そもそも砂漠に刺客を送り込んでもこられない。
なによりメイが満月みたいな瞳をキラキラさせて、僕の顔を見つめていた。
「ええ、構いませんよ。むしろ協力させてください。この砂漠で干からびなかったのも、旅の鋭気を養えたのも、砂上船と巡り会えたのも、あのオアシスの村があったおかげです。僕らは皆さんに恩があります」
メイは「さすが先生。もはや神……」とぽつり。
イリーナは口をへの字にした。
「ちょっとサリヤ。何勝手に決めちゃってるのよ? 復興より先にあのデカブツを倒すのが先じゃない? 戦力不足を補う方法、見つかってないわよね」
僕もサリヤに視線を向けた。彼女は悲しげな瞳になる。
「他の部族は東方砂海の悲劇が、この砂海宮でも起こるとは考えていないようです」
「せめてもう一隻、戦闘艦があればアタシの指揮スキルで連係攻撃ぶち込めるのに」
勝つための作戦はあっても、現状では実現不能。
僕のスキルで村や町を戻しても、サンドワームを倒さない限り砂の海に平和は訪れない。
「討伐のお手伝いもさせてください。僕らもアレに追い回されましたから」
サリヤがハッと目を丸くする。
「それはいけません。修復士様を危険な目に遭わせるわけには……」
ずっと水煙草を楽しんでいたシャチ子が豪快に笑う。
「はっはっは! この水煙草という文化が気に入った。私も手伝おう」
メイも触手ツインテールを万歳させる。
「もちろんメイもですとも!」
イレーナはムッとした。
「ま、好きにしたら。けど、アタシの足を引っ張るのだけはやめてよね。海魔族がどうなっても、アタシ……助けないから」
席を立ち酒場から出て行ってしまう。
理由は教えてくれないけど、この嫌いっぷりは徹底してた。
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