34.復興支援の達人セツナ
【前回までのあらすじ】
職人が装備を作る→銘品以外は時間を素材にまで戻してやり直し。これが鍛冶職人ブートキャンプだ。なまった腕を酷使してがんばれドワーフここにあり!
それからしばらく――
鉱山町に活気が出始め、工房の煙突から煙りが途切れなくなった。
列車の運行が始まり、人と物の流通が再開されると町もだんだんと賑やかになる。
血が通ったような活気だ。
僕らの仕事は終わった。これ以上は滞在できない。
間もなく、次の満月だ。
酒場の店主兼、鍛冶職人のゴルドンが店で僕に小剣を差し出した。
「これは俺からの個人的な感謝の印だ。使ってやってくれ」
「いいんですか?」
「ああ。最高の玉鋼を鍛え上げた、今の俺が打てる一番良いやつだ」
スッと鞘から抜くと磨き込まれた白刃が姿を現した。
シャチ子が「ほぅ」と声を上げる。
港町で買った普及品の小剣とはレベルが違うらしい。剣の素人の僕にはよくわからないけど、柄は手に吸い付くような感じだし、重さも振り切れるちょうど良いギリギリのところだった。
「メイには! メイにはありませんか?」
「あっ……いやその、まいったな」
メイが剣をほしがると思っていなかったようで、ゴルドンは困り顔だ。
シャチ子がメイの前で膝を着く。
「メイ様の剣はこの私です。ご安心ください」
僕も続けた。
「そうだね。もしメイが剣を手にしたらシャチ子さんの立場が危うくなっちゃうし」
実際、触手ツインテールが武器を持つと、結構強いんじゃないかとは思う。
メイは金色の瞳を満月みたいに丸くした。
「あー! なるほどー! じゃあ無しの方向性で!」
納得したみたいでなによりだ。
僕は新しい小剣をベルトに提げた。
「しかしセツナさんはすごいな。一週間もしないうちに町を生き返らせちまった」
「みんなが頑張ったからですよ。僕はきっかけを作っただけで、元々この町にはがんばれるだけの力があったんだと思います」
「そう言ってもらえるだけで、報われた気がするぜ。町で上がった利益については、きちんと俺が管理する。バカ領主が契約を反故せんように目を光らせておくさ」
「ありがとうございます。けど、貯めておくばかりじゃもったいないので、僕の取り分はゴルドンさんの判断で町の投資に回してください」
そういえば百年契約で1%なんて話をしてたっけ。
「わかった! 元金の十倍にしてやるぜ!」
ギャンブルで買ったら倍にして返すみたいな感じだ。ま、こっちからお願いしたことだし、いいんだけどね。
ゴルドンは僕の手を両手でぎゅっと握った。
「本当にありがとうな。嬢ちゃんに姐さんも。もし、三人に困ったことがあったら言ってくれ。武器が欲しいとなりゃ頼って欲しいんだ」
「はい。武器のことは一番に相談します」
「俺らの代じゃ無理かもしれないけど、必ずこの町から大業物級の武器と、そいつを鍛え上げられるだけの職人を輩出してみせる。今後は鉱山開発も計画性をもってしっかりやっていく。やり直すチャンスを与えてくれて、本当にありがとう」
別れの挨拶を済ませて、僕らは列車運行が再開した駅へと向かった。
といっても、列車に乗るわけじゃない。
乗車中に襲撃されると、他の人を巻き込んでしまう。
近隣の地図を見ると、紅い荒野の先は『砂の海』という砂漠だった。
列車は砂漠を大きく迂回して王都方面に伸びている。
僕らも迷子にならないように、線路を道しるべにして次の町を目指すことにした。
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