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29.甦る命

【前回までのあらすじ】

魔王化のきざしを見せながらメイの触手が腐敗竜を蹂躙する。

セツナに抱かれて我に返ったクラゲ少女。

魔王の力も使いようだが、お目付役の女剣士はハラハラしっぱなしなのだった。

傷ついた狐巫女も癒やし、セツナの力が今、獣魔大森林に救いをもたらす。

「群生地はこの辺りかな?」


 窪地の底の地面に触れる。汚泥のような穢れは腐敗竜が消えて綺麗さっぱり消滅した。

 失われたシンセン茸の育成環境ともども。


 フゥリィが尻尾を揺らす。


「うむ。その辺りと言わず窪地の内側全域じゃな」

「わかった。じゃあ……やってみるね」


 僕は範囲を窪地の地表全体に限定して時間を戻した。

 一年ほど……十二秒の後に――


 狐巫女が声を上げる。


「こやああああああああああああん! なんと! シンセン茸が復活ではなのじゃ!」


 窪地は苔むして白いヒラタケのようなキノコがそこかしこに生える。

 フゥリィが僕の手をとった。


「主様はこれでもっとずっと長く生きられる! 死んでいった者たちの慰めにもなろう! それに、わちきの命も救ってもらった。セツナは獣魔大森林に住まう者、すべての恩人じゃ!」


 少女の頬を涙がぽろぽろ伝って落ちる。

 それを見て僕自身も「よかった」と心から思えた。


 メイが触手ツインテールと両腕を腕組みして「ふふん♪ 先生の凄みが世間に発見されて、メイも鼻が高いのだった」と得意げだ。


 あんまり目立つのも良くないんだけどね。


「ありがとうセツナ! お主こそこの森の救いの神じゃ!」


 なんだか大変な持ち上げられっぷりだ。


 けど、感謝は素直に受け取っておこう。


「どういたしまして。困った時はお互い様っていうからね」


 狐巫女は笑顔を弾けさせた。


「ではもし、セツナが困るようなことがあれば頼ってほしいのじゃ。この森の総力をもってお助けつかまつるぞ!」

「ありがとう。とっても心強いよ」


 と、頭の中に透き通った声が響く。


『スキルレベルが50になりました。範囲がさらに拡大しました。単位に年が追加されました』


 群生地を甦らせる経験がさらに力を覚醒させた……ってこと?


 僕たちは必要な分のシンセン茸を採取して、獣魔族の集落に戻った。



 屋敷でルプスに報告を終えると、深々と頭を下げられてこっちが困惑するくらいだ。


「セツナ殿。かたじけない。我々には何も差し出せるものはありませんが……」

「いいんですよ。それより顔を上げてください」

「ではせめて、今日はこのまま屋敷にとどまってください。ささやかながら感謝の宴を開きたく存じます」


 ますます丁寧なルプス。その頼みを無碍にもできず、僕らは宴席でもてなされることになった。


 獣魔大森林の各地からそれぞれの集落の代表が土産の品を持参して、夜まで準備が進められる。

 その間、僕たちはフゥリィに引っ張り回されて獣魔族の有力者たちに紹介された。


 一部、黙っていて欲しいこと(主に僕のスキル関係)については、狐巫女に口止めしてある。


 有力獣魔族たちは口々に言う。


「なんと素晴らしい!」

「これを物語として語り継がねばなりますまい」

「森を救う英雄が人間とは驚きだ」

「ルプス様をお救いいただいたこと、誠に感謝いたします」

「言葉では足りぬ! うちの娘を娶ってくだされ!」

「なに!? 抜け駆けは許さんぞ!」

「当家の娘はみな気立てが良いですよセツナ殿!」

「いやいや、うちの娘が先だ!」


 と、雲行きが怪しくなったので「ルプスに呼ばれてたかも……」と言って退散した。


 日が暮れて――


 屋敷はまるで祭りのような賑わいだ。

 楽隊が神楽という音楽を奏でる。雅な中にもどこか楽しげな明るい曲調だった。


 大広間に森の恵みをふんだんに使った野性味たっぷりのごちそうが用意され、宴席にはずらりとケモな美少女たちがずらり。


 主賓席でルプスと並んで座る。族長がそっと耳打ちした。


「今宵のお相手をお選びください」

「あの、そういうのはちょっと……」

「選びきれませんか。では十人でも二十人でもまとめて……」

「もっとダメですよ」

「みな寂しいのです。一年前の惨劇の未亡人や娘たちですから。父や夫の魂を救ってくださったあなたに恩義を感じております」

「余計に気を遣うんですけど」

「ではやはりフゥリィを娶っていただけるということでしょうか?」

「そうはならないですよね、今の会話の流れ的に」


 病床から復活した蒼毛の狼獣魔はノリノリだ。

 僕があまりに拒むと――


「ふむ。そうでしたか。これは気づきませんでした。今宵は私がお相手いたします」

「はい!?」

「ウケてタチましょう。どちらでも」

「いやいやいやいや」


 僕が女の子より男の人に興味があると、勘違いしたみたいだ。

 うーん、この人、口ぶりも柔らかいし丁寧でいい人には違いないんだけど、ヤバイ人かもしれない。


 助けを求めて視線をシャチ子に向けると――


「ぷはあああああああ! かああああああああ! この酒はなんと濃いのだ! おかわり! おかわりをくれ! こんがりとしたイノシシ肉も美味いぞ! 酒が進む!」


 頬を赤らめ肉をむさぼりながら酒で流し込む。

 完全に出来上がっていた。

 普段の気丈な姿を知るだけに、こんなに胸元をはだけさせだらしなく酒に溺れるなんて……まあ、色々と溜まってたんだろうな。


 メイはといえば……。

 フゥリィにぴったりくっついて回っていた。


「フゥリィちゃんはメイちゃんって呼べ!」

「ぬぅ、お主にも命を救われたとはいえ……」

「さあ呼べ! すぐに! 今! 早く!」

「め、めうぅ……」

「めう違う! メイちゃん! さんはい!」

「め、メイ……ちゃん……」

「よくできましたー! おーよしよしよしよし!」


 フゥリィの頭を抱っこしてメイは激しく頭をなでなでする。

 狐巫女もメイに助けられたからか無抵抗だ。

 命の恩義から義務仲良し。けど、そのうち普通に打ち解けられるかもしれない。


 宴は進み、フゥリィが列席者に僕らを改めて紹介した。

 試練の洞窟を浄化しシンセン茸を復活させた英雄。

 広間を喝采が包み、楽しい夜はあっという間に過ぎ去っていった。

お読みいただき、ありがとうございます!


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