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26.突入! 試練の洞窟

【前回までのあらすじ】

病は一旦治ったものの、時間が経てば一年で族長は死に至る。

腐敗病を抑え込むキノコがあるというのだが、群生地は「穢れ」に汚染されてしまった。

それでもキノコを求めて洞窟に挑むことを決めたセツナたちだが……。

 集落から北に向かって十分ほどで試練の洞窟に到着した。


 フゥリィ曰く――


 本来であれば、年に一度、成人した獣魔族の若者が洞窟の奥まで行って、族長のためにシンセン茸を取ってくる成人の儀に使われていたとのことだ。


 今は誰も立ち入ることはできないという。

 ルプスのためにシンセン茸を取りに行った者は、穢れに取り込まれて戻らず。

 一度、フゥリィが精鋭とともに奥まで向かったが、そこで見たのは汚染されたシンセン茸の群生地だった。


 何も持ち帰ることはなく、犠牲者が増えただけだった。 


 中は暗い。

 カンテラを用意する。


「このメイが闇を切り裂く光となりましょう!」


 メイが照明係を申し出た。が――

 フゥリィが腕組みをしてにんまり笑った。


「ふふん遅れておるのぉ海魔族は。ここはわちきに任せるのじゃ」


 懐から紙切れを取り出して、狐巫女は「巫術蛍火」と唱えた。

 紙には紋様みたいな文字が並んでいる。フゥリィが指から放すと紙切れは宙に浮かんでぽわっと青白く光った。


「熱を持たぬ光を放つ護符巫術じゃ。わちきに随伴するように光るでのぅ。手も塞がらず楽ちんなのじゃ」


 これは確かに便利かもしれない。洞窟探査なんてしたことないから、頼りになるな。


「フゥリィさんはすごいんだね」

「さん付けなどする必要は無いぞセツナ。主様を救ったお主は……か、家族も同然じゃ」


 僕がじっとフゥリィを見つめると、彼女は尻尾をだらんとさせて視線を背けた。

 メイが浮かんだ光る護符を指でつつく。


「こんなのメイだってできますしー! うりゃああああ!」


 触手ツインテールの先端が同じように青白く光る。が、すぐにメイは息切れを起こした。


「はぁ……はぁ……案外しんどい」


 メイは額に汗を浮かべた。女剣士がさっとハンカチで拭う。お付きのメイドさんみたいだ。


 一方フゥリィは涼しい顔で言う。


「わちきの巫術は事前に護符に巫力を込めてあるのでのぅ。発動してしまえばあとは制御するだけなのじゃ」


 メイが触手ツインテールを「?」にした。


「わ、わけわからんし!?」

「ん~わからぬかぁ。そうかそうかぁ仕方ないのぅ。ではクラゲ娘は大人しくカンテラでも持っていることじゃ」


 狐少女はどや顔だ。


「誰がクラゲ娘ですか!? はい! わたしですけど! メイにはメイってお名前あるでしょ? フゥリィちゃん!」

「わちきをちゃん付けとはいい度胸じゃのう!」

「いい根性ですが? なにか!?」


 二人は威嚇し合う猫のように一触即発(?)だ。

 ちょっと止めないといけないかも。


「こらこら二人ともケンカしない」


 触手ツインテールと右手でメイは敬礼した。


「先生がそうおっしゃるのであれば! メイはいい子ですからケンカなどしないです」


 フゥリィもどこかばつが悪そうだ。


「ぬ、ぬう。お主が言うなら……わちきだっていい子じゃからな」


 なんだろうこの感じ。

 ちょっと懐かしい。孤児院で下の子たちの面倒を見てた時みたいだ。


 僕の肩にシャチ子がそっと手を置く。


「モテ期のようだなセツナ様。くれぐれも……メイ様を悲しませるようなことはしてくれるなよ?」

「あの、肩握りしめないでください痛いですよ痛い痛い痛いですってばシャチ子さん。そろそろ行きましょう」


 このままだと肩の骨ごと握りつぶされそうだ。

 フォーメーションを決めて僕らは試練の洞窟に入った。



 案内役のフゥリィ。次に僕。メイ。しんがりをシャチ子が務めた。


 正直、シャチ子が先頭でもいい気もするけど、女剣士は「セツナ様なら正面の見えている敵を相手に時間稼ぎは十分だろう」と、僕を楯にする気満々だった。


 様付けされても扱いは変わらないな。その方が気楽でいいけど。


 メイを守るための適材適所だと思う。

 シャチ子はメイのそばで後方警戒。

 正面の攻撃をフゥリィが担当した。


「穢れが発生してからというもの、モンスターどもに腐敗属性が付与されてしまってのぅ」

「腐敗属性ってなんですか?」

「様々なモノを腐らせるのじゃ。しかも生き物だけでなくモノにまで効果がある。武器や鎧などすぐボロボロにされてしまって、奥に進むのも一苦労という感じでの」


 腐敗だけじゃなく腐食も起こすみたいだ。

 シャチ子が一瞬、自分の刀の柄に視線を落とした。が、すぐに僕を見て口を「あっ」とさせながら、瞳を輝かせる。


 僕の「時間」スキルを期待してもらっていいかもしれない。


 説明を続けながら、狐巫女の尻尾が得意げに揺れる。懐から護符を一枚取り出してリズミカルにぴらぴらさせた。


「ふふん♪ であれば遠距離攻撃が得意な巫術の出番というわけじゃ。わちきの護符は文字が消えるまで使うことができる。火球を放つ狐火なら五~六発といったところじゃの」


 使い切るとそれっきりなので、適度に温存しなきゃならない……と、フゥリィは締めくくった。


「それって僕にも使えたりしないかな?」

「残念じゃが無理そうじゃの。セツナからは巫力の匂いはせぬ」

「火球以外はどんな感じなの?」

「どんなと問われれば、まあ色々じゃ。どのような護符があるかは秘密にしておる。たとえセツナでも安易に教えるわけにはいかぬのじゃ」


 メイの触手ツインテールが僕とフゥリィの間に入って「ぐぐっ!」と距離を遠ざけようとする。


「距離が近いんですが? メイとイチャイチャして! どうぞ!」

「イチャイチャしてるんじゃないよメイ。フゥリィがどれくらい強いのかを確認してたんだ」

「し、し、知ってますよ! イチャイチャじゃないって知ってますよー! けど! 距離! 距離感! メイと先生は白浜で運命の出会いをしてからうんヶ月と、信頼と友愛を深めてきたが、今日、ぱっと会った相手とそのようなガチ恋距離は……ダメですから!」


 フゥリィがにんまり笑う。


「運命の相手というものは、巡り会った瞬間にビビッとくるものじゃろ?」

「ビビッてなんないで! もう! はれんち! はれんち狐!」

「なんじゃとふわふわクラゲ娘が!」


 二人はにらみ合うように正対すると、お互いのほっぺたを掴んで引っ張り合った。


「ふひゃおにうyhぱjぽうすっほあぽう!」

「おいhdふぉいっspすdpsjpdのじゃ!」


 と、その時――


 しんがりの女剣士が飛び出し刀を抜くと構えて正面の闇を切り払った。


「前方から敵襲だ! セツナ様はメイ様の護衛を! 狐娘は手を貸せ!」


 闇の中でドサリと何かが分断されて崩れ落ちた。


 獣魔族らしきゾンビだ。腐敗臭が広がった。

 上半身と下半身を分断されても地面を這ってこちらに向かってくる。


 フィリィが護符を指に挟んで声を上げた。


「巫術狐火ッ!!」


 指先から火球が飛んでゾンビを焼き尽くす。

 亡者は黒い消し炭になって崩れた。


「同胞よ……往生するのじゃ。どうか安らかに」


 焼きすぎってくらいなんだけど、ここまでしないといけないのか。


 メイがブルリとなる。


「やばいやばいやばいやばい」


 珍しく語彙が消失してシンプルにやばい連呼するくらい、フゥリィの巫術の威力は高いみたいだ。


 メイは触手ツインテールをスッと短くする。伸縮自在っぽいとは思ってたけど、縮めることもできたのか。


 ちょっとショートヘアっぽくて、これはこれで……うん。可愛い。


 おずおずとクラゲ少女は呟いた。


「あのですね、メイはえっと、ばっちいのはお触り禁止です」


 女剣士が刀を払う。


「お任せください。メイ様の手は患わせません」

「お頼み申したシャチ子よ」


 頷きながら剣士の視線がフゥリィに向けられる。


「しかし狐娘よ……少しはできるようだな?」

「デカチチこそ悪くはない太刀筋じゃ。褒めてやらんこともないぞ」


 素直にお互いを褒めたりはしないのかな。


「二人ともすごいよ。初めてとは思えないコンビネーションだったし」


 と、シャチ子が恥ずかしそうに視線を手元に落とした。


「も、もしセツナ様がお手すきであれば……その……切れ味を戻してもらえると助かる」


 振ってなお刀には汚泥のようなものがこびりついていた。僕は刀身を指でなぞる。


「お手すきですからいつでも気軽にお願いしてください」

「かたじけない。お願いする」


 メイがきょとん顔になった。


「シャチ子は先生におねだりですか?」

「ち、違います! メイ様! 普通のお願いですから!」

「後生ですか?」

「ええと……その……はい」


 説明しきれなくなってシャチ子は俯いた。

 なんだか恥ずかしそうだ。


 やりとりの間に僕はスキルを発動させる。腐敗汁にまみれた刀身はすっかり元の美しい波刃を取り戻した。


 女剣士は「さすがセツナ様だ」とうんうん頷く。


 そういえば、先ほどレベルが上がった時に、気になるメッセージがあったっけ。


 試してみよう。


 僕はフゥリィに向き直ると、彼女が手にする護符に触れた。


「なにをするのじゃ? セツナでは使えぬぞ」

「まあまあ、ちょっと待ってて」


 一分前に戻す。

 使用して薄くなったお札の文字がくっきりして新品状態だ。


 あっ……出来ちゃったよ。魔法的なモノでも時間を戻せるみたいだ。


 途端にフゥリィの尻尾が風船みたいにぶわっと丸くなった。


「な、な、なんじゃ!? 護符が戻ったのじゃ!? わちきは巫力を込めておらぬぞ!!」

「そういうスキルなんだ。触ることさえできればいつでも戻せるから、ばんばん使って大丈夫だよ」

「お、お主は……なんと……すごいのじゃ」


 フゥリィのふわふわ尻尾が左右にふりふり揺れる。なぜかメイが「そうでしょうそうでしょうとも」と、腕組みして後方でどや顔になった。


 と、メイは金色の瞳を丸くする。


「ということは、メイがばっちいのを触ったら先生が戻してくれるのですか?」

「もちろんだよ」

「こ、これはもしもの時は……メイも戦う覚悟をキメキメでした」


 一度は短くした触手ツインテールが元の長さになった。


 短命だったな。ショートヘアなメイの姿。レアかもしれない。


 ともあれ――


 シャチ子とフゥリィの連携はばっちりだ。これにメイも加わることになりそうだ。


 僕は全力でバックアップに回ろう。

お読みいただき、ありがとうございます!


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応援のほど何卒よろしくお願いいたします~!

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