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22.海老

【前回までのあらすじ】

蟹襲来。メイの命を狙う刺客を前にセツナとシャチ子の連携技が炸裂!

これをどうにか退けたのだが、蟹の持っていた真珠(?)が光りだして……。

 僕はメイに駆け寄り彼女の触手ツインテールを元通りにする。


「もう痛くもなんともへっちゃらちゃーですね! さすが先生は……神……超えてんなぁ」


 金色の瞳がキラキラとしている。


「神様超えちゃったか」

「超えますねぇ。だってメイは見ましたもの。カニバーンをよわよわにして、一撃をくらわせて、シャチ子を治して、刀も元通り! 控えめに言ってヤバイ! ヤバイ先生です!」

「それだと僕が犯罪者みたいなんだけど」


 困惑する僕の元へシャチ子がやってくると地面に膝を突いた。


「セツナ様に心よりの忠誠を誓う」

「や、やめてくださいよ。急にどうしたんですか?」


 シャチ子は顔を上げると鞘に収めた刀を僕に見せた。


「イールカ家の家宝でもある名刀月光。折られるとは一生の不覚。だが、こうして元通り直していただいた恩義に報いねばならぬ」

「い、いいですよ。そんな改まらなくても」

「気持ちが収まらぬのだ。ど、どうすれば良いか言ってほしい。その、私の胸が欲しいというのであれば……いつで……もぎゃ」


 メイの触手ツインテールがシャチ子の頭をペチペチ叩く。


「色ボケ-! バカ-! 先生を誘惑するのはダメですからね!」

「し、しかし私には支払える対価もなく、人間の世界では体で払うというものもあると風の噂に聞きますし」

「いいですかシャチ子よ。先生がどうしてもっていうなら、メイは大人の女性なので大目にみてあげましょう。だがしかし! シャチ子から先生におっぱいして差し上げるのは不許可ですからね!」

「は、ハッ! 承知いたしました」


 二人は真面目に会話しているのに内容が頭に入ってこない件。


 ひとまず落ち着こう。

 辺りを見回す。

 

 列車が倒れて貨物もめちゃくちゃだ。


 港町駅からの乗客は少なかったけど、それでも乗客に負傷者が出ている。

 車掌と運転手だけじゃ避難誘導もできてないっぽい。


「けが人の手当が必要そうだね」

「先生! さすがです!」

「二人も車掌さんたちを手伝って……」


 と、言い終える前に――


 白い神官服の男が目の前にスッと浮かび上がった。

 まるで蜃気楼みたいに揺れている。


 シャチ子が刀で居合抜きを男に叩き込んだ。

 かすみを斬ったような手応えで、男の姿も揺れたままだ。


「おやおやおやカニバーンはしくじりましたか。それにしても手が早い。これは通真珠の映像ですよ?」

「神官エビルよ。貴様が黒幕か?」

「黒幕は裏で暗躍するものです。わたくしは正々堂々としておりますから。それより、そちらの人間にお話させてください」


 神官――エビルは僕の方に向き直る。

 こいつがメイを狙っている過激派の親玉だろうか。


「お初にお目にかかります。わたくしはエビル。海魔国の神官長です。国を守るため逃亡した魔王の器を回収するか、現在の器の破壊によって次の者への継承。もしくは婚姻によって器を次の世代に移譲するかをせねばならないと考える者です」


 メイが声を上げた。


「だ、だめぇ! 先生には言わないで! メイは悪い子にはなりませんから! メイの事を知ったら先生は……メイを嫌うやもしれぬ!」


 僕はメイを抱き寄せた。


「大丈夫だよ。嫌いになったりしないから」

「で、でもぉ……」

「僕はメイの先生だよ? 信じて……ね?」

「は、はぁい」


 メイの白いぷにぷにほっぺたがほんのり赤らんだ。

 エビルが目を細めてわらう。


「なるほど、事情は把握済みのようですね。では話が早い。人間よ。その魔王の器が魔王にならない限りは、常にある一定の波動が発信されます。わたくしの配下でなくとも、魔王を目指す海魔族であれば感じることができますから」

「今後も狙われ続けると言いたいんですか?」

「ええ。親切心からの忠告です。すぐに魔王の器を捨てなさい。でないと他の人間を巻き添えにしてしまうかもしれませんよ?」


 列車の線路を寸断して事故を起こしたのはカニバーンだ。が、入れ知恵したのはきっと、このエビルという神官なんだと思う。


 メイの唇が震えた。


「あう……けど……メイは……だから! メイは人間になるのですから!」

「ご冗談を。外の世界を知ったというのに、相変わらず夢みがちなお姫様気分ですね。あなたが器である限り、周囲に不幸という毒を撒き散らし続けるんですよ。早く楽におなりなさい」


 僕はエビルをにらみつけた。


「まるでメイのせいだって口ぶりですけど、破壊活動をしたのは全部そっちじゃないですか」

「ええ、そうですとも。それがなにか?」

「なにか? って……」

「責任の所在などどうでもいいですからね。地上の人間が何人死のうと私に罪悪感はありません。あなた方がどう感じるかもご自由に」

「最低ですね。あなたって」

「今後も同じようなことが起こり続けるとだけ思っていてください。では、ごきげんよう。また次の満月の夜にでも……」


 カニバーンの足下で光る真珠がパキッと割れて砕けた。

 今度こそ敵の気配がなくなり、僕らは救護者を助ける。

 線路を元に「戻し」て、倒れた車両も事故が起こる前の状態に立て直した。

 町で修復士として経験を積んできたおかげで、大きな車体も元に戻すことができた。

 いつもより、少ししんどい。

 大物相手に「時間」スキルを使った時の疲労感だけは、自分の時を戻しても残り続けた。

 気をつけなきゃだな。


 辛うじて死者はゼロ人。 

 不幸中の幸いだ。


 けど、その幸運がこれからも続くとは限らなかった。


 透き通った声が頭の中で響く。


『スキルレベルが45になりました。一つ前の状況に戻すことができるようになりました』


 なんだろう、一つ前って。

お読みいただき、ありがとうございます!


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応援のほど何卒よろしくお願いいたします~!

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