表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/117

112.試走回数X

 海魔国に忍び込み、エビルが過激派を束ねる前に暗殺を試みた。

 エビルを倒すことはできたけど――


 結局、別の誰かが海魔神官の役割をこなすだけだった。


 穏健派の手からメイを救いだそうとしたこともある。

 その時はシャチ子と戦うことになった。


 シャチ子を殺してしまった。やり直しだ。


 もっと前に戻る。


 エビルが過激派にならないよう、海魔国で少年のエビルと友達になってみた。


 すると――


 メイの監視役はシャチ子ではなくエビルになった。

 良い先生だった。


 まるで別人だ。


 けど、エビルは別の過激派の手により命を落とした。

 メイはショックから海魔王となって暴走。


 ただ、世界中に散らばる闇の力の欠片で、クラゲ少女はまだ満たされていなかった。


 最後はシャチ子の手で、メイの命にピリオドが打たれた。


 失敗だ。やり直し。



 少しずつさかのぼり、修正を加えて変化を見届ける。

 何度挑戦してもメイを救えない。

 メイを人間にすることもできない。


 同時にそれぞれの時間軸で、神のスキル持ちを探してみた。

 けど、たった一人、僕が訊いて回ったところで見つかるものでもなかった。


 百年も前になれば、もう知る人は誰もいない。


 そういえば、メイの両親の仲を取り持つようなこともしたっけ。


 無事、メイが生まれてくれた時には本当に嬉しかった。涙が出た。生まれてきてくれてありがとうと思った。


 けど――

 その世界でもメイを救えなかった。


 メイが生き残るパターンを引けば、必ず世界を滅ぼす海魔王化してしまう。


 気づけば僕は……。


 千年前にいた。

 人間にスキルが与えられた「始まり」の時代にまで流れ着いていた。


 そして理解する。

 もう「戻せ」ないと。これより過去はスキルの概念が存在しないんだ。


 時間の行き止まり。


 終着地点で目が覚めると――


 僕の記憶が始まるのは、水晶の棺の中からだ。


 外に出る。


 どことなく、エルに似た少女が跪いて祈りを捧げていた。


「大丈夫……ですか?」

「あなたは神様……ですか?」

「僕が神様?」

「違うのですか?」


 お互いに疑問系を投げ合った。


「どうか人間を……この世界でもっとも弱き我々をお救いください」


 僕の手の中には青く光る球体がある。


「お救いって言われても……」

「お願いします天使様」


 どうやら僕は天の世界からこの地に降り立った「天使」らしい。


 王家の書庫で見た伝承そのままに、僕は祈りの巫女に告げる。


「じゃあ、ええと……これ……どうぞ」

「これはなんですか? とても美しいですけれど」

「スキル……だと思います。人間を救う力で、貴女が世界に広めるはずのものです」

「わたしがですか?」

「子々孫々と受け継がれる人間の固有スキル……海魔族にも獣魔族にも負けません」


 僕が球体を渡すと、フッと背中が軽くなった。


「天使様……翼が?」

「翼?」

「ええと……その……」


 みれば少女の背中に光の翼のようなオーラが立ち上っている。

 青白く清浄で息を呑む美しさだ。


「あ、ああ、ありがとうございます天使様! この力でわたしは……この闇に閉ざされた世界を照らしてごらんにみせます!」


 エルとうり二つの少女が胸に手をあて宣誓する。

 青い球体は少女の胸の中に吸い込まれ、翼のオーラが閉じて彼女の背に収まった。


 伝承通りだ。


 けど、相手が違う。


 彼女が誓い契る相手は僕じゃなく、聖祖ルシフのはずなのに。


 このまま王国が建国されなかったら、世界の歴史が大きく変わりすぎてしまう。


「どうかなさいましたか天使様?」

「ええと、ちょっと考え事をしてました」

「天使様はこれからどうなさるおつもりですか?」


 放ってはおけない。


「君のお手伝いをしたい……かな」

「ありがとうございます! あの、天使様のお名前をうかがっても?」

「僕は……」


 歴史通りにするなら――


「ルシフ……」

「ルシフ様ですね!」


 こうして、王国の歴史が始まった。


お読みいただき、ありがとうございます!


『面白い』『続きが読みたい』と思ったら、広告下の☆☆☆☆☆から評価をいただけるとこれは……ありがたいッ!!


応援よろしくお願いいたします~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ