109.修復スキル? いいえ時間操作能力者です。さあ時を戻そう。
『スキルレベルが99になりました。称号:時間調律士を手に入れました』
王城の一室で床に膝を付け地に伏す僕の脳裏に、透き通った声が響いた。
何が時間調律士だ。
称号なんていらない。
僕は「時間」スキルなんてとんでもない力を与えられたのに、大好きな女の子一人、守ってあげられなかったじゃないか。
部屋に残るのは海魔族たちの亡骸と僕と、記憶を失ったシャチ子だけだ。
「あの……私の名前はシャチ子……というのですか?」
本当はオルカ・マ・イールカだけど……。
「貴女はシャチ子さんです」
「言われてみるとそんな気がします」
「何も憶えてないんですよね」
「ごめんなさい。消えてしまった女の子が、私を心配してくれていたのはわかります。なのに……私は……」
シャチ子を責めても仕方ない。
ああ、もう、何も考えられなかった。
メイがいない。
この空間にあの子の笑顔が無い。
いつも元気に動き回る触手ツインテールも、抱けば折れてしまいそうな小さな身体も……。
愛くるしい瞳も素敵な声も。
なにもかも。
シャチ子が首を傾げる。
「私はこれから……どうすればいいのでしょうか?」
「わかりません。僕に……訊かないでください」
「あなたはこれから……どうするのですか?」
「どうすることもできませんよ。やり直すことなんて……」
触れたモノの時間を戻すことができる。
今の僕なら空間にまでその力を広げられた。
天の世界から見た大地は球形だ。
奇妙な胸騒ぎがした。
レベル99になった現在――
どこまでこの力を伝えられるだろう。
シャチ子が僕の顔をのぞき込む。
「どうしました?」
「僕はこの世界が嫌いです。メイがいない世界なんて……だから、これから……ごくごく個人的な判断と希望と欲望で、僕は世界を変えようと思うんです」
「世界を変えるのですか?」
「許されざる行いかもしれないけれど……」
シャチ子は僕の手を包むように握って、まっすぐに見つめてくる。
「私からもお願いします。あの女の子を……お嬢さんを救ってあげてください。とても他人のようには思えないのです。あの子のために……と、不思議と私も思うのです」
僕はその手を握り返して深く頷く。
上手くいくかなんてわからない。
けど――
僕は「時間」スキルを発動させた。
範囲は僕を除いたこの世界のすべて。
戻す時間は――
・
・
・
「生きたまま飛び込むか死んで鮫の餌になるか選ばせてやろう」
燕尾服で着飾ったシルクハットの奴隷商人がちょび髭を撫でる。
僕は今、大型船のへさきに立っていた。
海面まで十メートル。この高さから飛び降りたことなんてない。
周囲を見渡せばどこまでも広がる水平線。泳いでたどり着ける島影もなし。
ちょび髭が笑った。
「おっと、忘れていた。首輪を外しておかないともったいないからな」
商人が用心棒を顎で使う。「大人しくしてろよ」と言われるまま、僕の首から奴隷の証が外された。
――隷属の首輪。
つけられた人間が飼い主に刃向かえなくなる魔道具だ。
用心棒が首輪を雇用主に渡す。
ちょび髭奴隷商人は目を細めた。
「この首輪はお前みたいな出来損ないのクズと一緒に海洋投棄したらもったいないんだ」
外されて僕は自由になった。
さあ――
ここから再開めよう。
【タイトル回収完了】
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