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1.DEAD or DIE or ????

新連載です。お付き合いいただければ幸い!

初日はヒロインが登場する三話まで一時間ごとにアップいたします!

「生きたまま飛び込むか死んで鮫の餌になるか選ばせてやろう」


 燕尾服で着飾ったシルクハットの奴隷商人がちょび髭を撫でる。

 僕は今、大型船のへさきに立っていた。

 海面まで十メートル。この高さから飛び降りたことなんてない。


 周囲を見渡せばどこまでも広がる水平線。泳いでたどり着ける島影もなし。

 ちょび髭が笑った。


「おっと、忘れていた。首輪を外しておかないともったいないからな」


 商人が用心棒でかぶつを顎で使う。「大人しくしてろよ」と言われるまま、僕の首から奴隷の証が外された。


 ――隷属の首輪。


 つけられた人間が飼い主に刃向かえなくなる魔道具だ。

 用心棒が首輪を雇用主に渡す。

 ちょび髭奴隷商人は目を細めた。


「この首輪はお前みたいな出来損ないのクズと一緒に海洋投棄したらもったいないんだ」


 外されて僕は自由になった。

 けど、終わりだ。

 用心棒が剣を抜き、にじり寄る。

 他の奴隷くびわつきはみんな下を向いて目をそらした。


 女の子がひとり、口をぱくぱくとさせている。

 きっと「やめて」と言ってくれてるんだろう。

 声を上げたのは、あの子だけだ。

 首輪のせいで喋ることもおぼつかないのに。


 僕は思い出す。

 どうして奴隷船に乗せられてしまったのか。

 そして、死なねばならないのかを。



 捨て子だった僕――セツナ・グロリアスはずっと孤児院で暮らしていた。

 シスターに勉強を教えてもらいながら、農作業をしたり教会のお仕事を手伝ったり。

 裕福とはほど遠いけど、それなりに平和に暮らしてきた。


 十五歳になるまでは。


 王国では十五歳になるとスキル鑑定を受けられるようになる。

 どんなスキルが発現するかはわからない。

 けど、僕も鑑定を受けてスキルを活かした仕事をしたいと思ったんだ。


 未鑑定の僕に身元引受人の話が舞い込んで、あっという間に王都行きが決まった。


 全部嘘だった。


 シスターも身なりの良い男が奴隷商人とは知らなかったんだと思う。


 船に乗せられて海の上で隷属の首輪に運命をつながれた。刃向かえなくなるんだ。


 魔道具の首輪は所有者かそれが認めた者にしか解除できない。

 無理に外せば呪いが発動。奴隷は苦しみ、最悪死に至る。


 こんなことするのも、強力なスキルに目覚めた人間に反抗されないためだ。


 逃げ場の無い沖合の船上で、スキル鑑定をするのがこの奴隷商人のやり口だった。


 発現したスキルによってA~Gまでランク付け。奴隷に値札が付く。

 こうしてスキル持ちの奴隷が「安全に」出荷される仕組みになっている。


 奴隷商人は「今回のガチャはレアなAランクも引けてそこそこ良かったな。このカス以外は」とご満悦だ。


 カスに発現したスキルは「時間」だった。


 ゴミ同然のGランクですらないXランク。


 鑑定不能のジャンクスキル。そんなことを奴隷商人は言った。

 で、僕みたいなのは売れ残らせるより、口封じも兼ねて間引いた方が安くつくんだとか。


 奴隷商人は金の懐中時計を見せる。


「時計がなくても時間がわかるって程度のスキルじゃ買い手がつかんからな。まあ俺も鬼じゃない。自由にしてやるよ。生きたまま飛び込むか死んで鮫の餌になるか選ばせてやろう」


 ちょび髭を撫でて男は続けた。


「運良く陸地にたどり着いたら助かるかもしれんぞ。よかったな?」



 そして――



 今、僕は選択を迫られている。


 溺死か斬り殺されるか。


 このままむざむざ殺されるつもりはない。と、言いたいけど……。


 目の前には大男が剣を構えている。


 正直「時間」なんてスキル、どう使っていいのかわからない。


 ただ、一つだけ言えることがあるなら……。


 いくら自分に問いかけてみても、今の時刻が頭の中に流れるようなことはなかった……ってことだ。

お読みいただき、ありがとうございます!


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応援のほど何卒よろしくお願いいたします~!

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