第八十六話 盗人猛々しく
〈フランツ視点〉
海賊と盟約が成ったと言う話を聞いてフランツは複雑な気持ちだった
アラスターから聞いた話では彼らはただの荒くれではなくそれなりの訳ありで礼儀正しいらしいが余計な問題を抱えた様な気もする
だが、一旦その事は忘れて彼らの力を使って軍船の奪取が先決だった
盟約が成った事を聞いてフランツはすぐに地方に散っていた地方解放軍2000人を招集して帝国軍の軍港であるグダニイルに少しずつ送り込んでいった
帰還したアラスターに現地で指揮を取らせてそのまま盗んだ船と共に本格的な決起の日まで海賊の島にいてもらう事にした
アラスターは意気揚々と海賊衆100名と凱旋しフランツの元へと来ていた
「ただいま戻りました。こちらの者は海賊衆を率いるバスター殿です」
彼の手で示した先には初老の背の高い男がいた
「紹介に預かったバスター・モーゼンだ!此度は協力者として参陣する!貴殿らの配下になった訳ではないのでな」
彼の言葉に周囲の部下達が殺気立つが手で制する
「ご協力感謝する。今回の作戦は貴殿らの助力にかかっている操船術に期待する」
バスターは満足そうに頷くと角の椅子に深く座り込んで部下の海賊衆と話を始めた
あれはカナリア解放後に御するのは苦労しそうだ
そう思いながらアラスターの方へ向き直る
「改めて、交渉ご苦労。このまま彼らと軍船の奪取に動いてくれ。可能な限り艦船を奪取してくれ数に制限はかけない。現場の裁量に任せる」
「ハッ!」
そのほかに簡単なすり合わせを済ませるとアラスターと部下は敬礼をして部屋を出た。バスターもニヤニヤとしながら部屋を出ていった
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〈アラスター視点〉
その後、海賊衆との会議を済ませて帝国海軍が現在軍港に保有している駆逐艦2隻、軽巡洋艦1隻、重巡洋艦1隻の内から駆逐艦と重巡洋艦を1隻ずつ奪取する算段になった。決行は10日後、敵の警備が薄い時は更に船を狙い、警備が厚い時は奪取は諦めて艦船の破壊に注力する事とした
「よし、バスターの隊に1000の解放軍を付けて1100名として、俺たちは残る1000を率いる。バスターは艦船の制圧にのみ集中しろ。コチラは各方面から来る帝国軍の警備部隊を撃退する。それでは諸君の武運を祈る」
「「「おう!」」」
各隊は港の各所に散っていった
まずコチラは警備部隊の詰所の奇襲が必須だ。250名ずつ4中隊に分けて詰所を一気に襲わせる。フランツの手回しで帝国の師団の大半が前線に向かっているので警備兵はいても一個大隊だろう
更に武器庫を最速で抑える事でその者達も無力化できるだろう
部隊を各方面の詰所近くの宿に分散して常駐させた
そうして決行当日の夜になった
日はとうの昔に暮れ、物資を本国に回す関係で道には街灯すらついていない。街は完全な闇に包まれて兵達はカンテラを持って広場に結集した
「よし、まずは武器庫の制圧。残る3個中隊は詰所を襲え、騒ぎは大きくなって良い。名乗らずに粛々と制圧していけ」
「「ハッ!」」
彼の号令一過、部隊は次々と展開していった
アラスターはまず武器庫を押さえるために一個中隊を率いて港の倉庫群へと向かった
倉庫前には2人の帝国兵があくび混じりに談笑していた
アラスターは片手を振ると数名の部下が近寄り帝国兵の背中を剣で貫いた
帝国兵は驚いた表情を貼り付けて後ろを振り向く途中で絶命した
そして、武器庫の扉をこじ開けて積まれた木箱の中を確認すると本国へ送るはずの潤沢な銃器弾薬が満載してあった
「よし、奪取予定の駆逐艦の近くへ運べ」
アラスターは指示を飛ばして詰所の制圧状況の確認へ向かう
既に遠くから煙や銃声、叫び声がこだましており戦闘が始まっている様だ
数名の部下を伴って詰所に向かうと既に制圧していた
「ご苦労!敵兵はいかほどか?」
「ハッ!この詰所には50名もおらず周囲を囲んだ段階で武器を捨てて逃げ出すものも出る始末でまともな戦闘には発展しませんでした。数名の負傷者は既に他の都市へ向かわせるトラックに積み込んであります」
「よし、では詰所の制圧後街道の哨戒にあたれ、くれぐれも無理に戦うなよ?」
「承知しました!」
アラスターはその後の処理も中隊長に任せると踵を返して奪取の作戦が進む艦船の方へ向かった
艦船の中で戦闘は起きていないようだが、桟橋の付近で帝国海軍の水兵と戦闘が勃発していた
しかし、帝国側の水兵はまともに武装しておらず腰のハンドガンと剣で戦っており次々と桟橋の上で倒れ、海へと落ちていく者も多い
対して海賊衆率いる地方解放軍は白兵戦に持ち込まれた兵は防戦に徹して後方の兵がライフルで仕留める形をとって的確に水兵を排除していった
敵兵が減ってくると海賊衆を先頭に駆逐艦2隻へ乱入していった。
夜ということもあってか哨戒の兵士以外はまともに敵兵がおらずあっさりと船の制圧は完了した。バスターは駆逐艦の操船を部下に任せて桟橋へ戻り、重巡洋艦の奪取へと向かいアラスターは兵員に引き上げ準備に入る様指示を飛ばすために詰所に走った。
ここまでは怖いぐらい全て順調だった。そう、ここまでは……。
前後編とさせていただきましたので後編は明日朝投稿予定です




