第八十五話 戦線前進
お久しぶりでございます。更新また再開していきます!
〈バラト視点〉
パンドラ軍は帝国軍の奇襲作戦によって前線は跡形もなく崩れ去った。部隊の大半が敗走を続け将官級、佐官級が多数討ち取られた事によって指揮系統が崩壊
帝国軍はイケイケドンドンで軍をパンドラ国内へ押し込んでいった
しかし、これ以上の進軍に異を唱える者が帝国軍にもチラホラといた
補給大隊の指揮官であるバラト大佐もその1人だった
バラト大佐は苦虫を噛み潰した様な顔で前進し続ける友軍を見ていた
そこへ両翼の片割れであるセリーヌが横に並び立った
「心配ですか?」
「あぁ、心配というか。愚策だと思ってなぁ」
「愚策……ですか?」
彼女が小首を傾げるのを横目にバラトは頷いた
「俺等が前進するってことはよぉ。カナリアの土地から大きく離れるって事だ。あそこは今きな臭い本隊がこうも離れていいものかね?」
「ですが、この機にパンドラ軍を半壊させて土地を奪う形での講和でいいんじゃないですか〜?」
セリーヌの言葉にバラト大佐は渋い顔で首を横に振る
「その様にうまくいけば50年も争ってねぇよ。どうせ少し進んだ所で停滞する。確かに直近の戦闘は大勝したがそうは言っても一個師団規模を潰した程度だ。国内の即応師団ですぐに対応してくるさ」
「楽観視はできないって事ですね〜」
セリーヌは残念そうにため息を吐くと頭を軽く下げて自分の隊へ戻っていった
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〈ルーク視点〉
数日後、バラトの言った通りになった。帝国軍は前線を大きく前進させたものの二つ都市を落とした所で再び停滞。さらに都市の制圧に兵力と物資を割かねばならなくなった為に大きな足枷をつけられる事になった。
加えて、突出部の防衛も必要になった事で前進はおろか後退すら出来なくなってしまった
そして、国内からの風聞で軍港が襲われたという話が兵達の間に流れていた。
被害の具合は軍船が全て沈められたという者もあれば、無傷で撃退したと言う者も居る。おそらく被害状況を隠蔽しようとした帝国と誇張して流布している解放軍の風説が混ざっているのだろう
俺たちは敵を追わなかったバラト大佐の動きもあって比較的自由な後方で焚き火を囲んでいた
「後方が随分と荒れてるらしいじゃねぇか」
ドグが焚き火の世話をしながら昨夜聞いた風説について話題に出した
「うーん、ただ被害状況があんましわからないっすからねぇ。どのくらい深刻な事態なのか……。」
「ですが、後方の政治を見ている植民地軍の諸将は私利私欲に走りがちですからなぁ。我らとしては後方の補給が途絶える事だけは勘弁していただきたい者です」
ヤウンが不安そうにため息を吐き、ヌーベルは腕を組んで首を横に振る
なぜここまで彼らが意気消沈しているのかと言うと攻撃されたのが港だからである。
彼らはどこまで行っても遠征軍であるので故郷は帝国の地だ。帰路が無くなるとなれば士気も下がる
父は海軍を先に確保しておこうぐらいの気持ちであったのだろうが。思いの外前線での厭戦気分は高まっていた
そこへ、ルイスが俺とヘレナを少し離れた所へ呼び寄せた。
「この風聞はお前等の言う解放軍の仕業なのか?」
「あぁ、おそらくな。だが、作戦の詳細は知らされていない」
「なるほどな。動くならそろそろだろう。これから植民地出身の人間への風当たりが強くなる」
ルイスの言葉にヘレナが疑義を挟む
「なんでさ?後方のゴタゴタとアタシらは関係ないじゃない」
「帝国軍は誰が解放軍と通じているかわからない。モグラ狩りが激化すればバラト大佐も庇いきれなくなる」
それを聞いたヘレナは合点が言ったとばかりに頷いた
なるほど、そこまでは考えていなかった。スパイを疑われて幽閉されては堪らない
「わかった、他の部隊員には申し訳ないが明後日に夜逃げとしよう」
俺の言葉にルイスとヘレナは頷いた。
「だが、ドグとヤウンに話はしてもいいか?」
「アイツらにか……。奴らは近衛師団の出であるから帝国への忠誠は大きい。おそらくは賛同は得られないぞ?」
「あぁ、分かってはいるがここまで生死を共にした仲だ別れぐらいはちゃんとしておきたい」
ルイスはやれやれと肩を竦めると頷いた
「なら、やりようを考えなければいけないな」
そう言ってルイスは笑った
なんだかんだでコイツも黙って別れるのは忍びなかったのだろう
俺たちは別れの算段を決めて何食わぬ顔で焚き火の元へ戻っていった
次回更新は明日の朝9時過ぎの予定です




