第八十四話 突撃
ラッパの音と共に周囲の帝国兵達が走り始める
俺は左手をあげて部下達を静止して少し待つ
ドグは今すぐにでも飛び出したい様だったがヌーベル隊の2人に押さえさせてあるので飛び出しはしないだろう
目の前では帝国兵は次々と飛び出し、砲兵による厚いバックアップを受けて殆ど数をうち減らされる事なく進んでいる
それを見た俺はルイスと頷き合い、手を振り下ろした
待ってましたとばかりにドグはライフルを片手に塹壕を飛び出して駆け出した
俺たちもそれに続いていく
粉塵の中で数メートル先は何も見えない。目の前のドグの背中を追いかけるしか出来なかった。
パンドラの弾幕が薄いのが唯一の救いであったが、時折腰ぐらいの高さを風切り音を響かせながら弾丸が過ぎていくので何度か冷や汗はかいたが幸いにしてウチの隊から脱落者は出なかった
粉塵が晴れてくるとチラホラと帝国軍の死体が目立つが大半の部隊が無傷でパンドラ軍の陣へ到達している様だ
遅れて飛び出したこともあってパンドラ軍の塹壕は既に制圧されている様で各所から煙が上がり残兵を掃討しているみたいだ
しかし、パンドラ軍は後陣に控える本陣が後手に回ったらしく撤退が間に合わなかった為に大将首がビュッフェの様になっているらしい
「撤退する敵を追うのは趣味じゃ無い。向かってくる敵のみ標的としろ!」
「「「はっ!」」」
そんな俺たちの元へまだ戦意を失わずに向かってくる一団がいる
全身は血だらけで足や手を引きずっている者も多いがその眼は闘志を燃やしている
「ざっと30人か…。手負とはいえ油断はできないぞ」
ルイスは遠目に一団の数を数えるとため息をついた
俺としてはパンドラ人は殺したく無いがあの狂戦士みたいになってる奴らに話をしようとしたら先に撃たれるだろう。ここは忍びないが彼らは殺すしか無い
「総員!整列!牽制射撃からだ!」
俺の号令と同時に部隊は横に並び、ライフルを構えた
15の並んだ銃口を前にしても彼らは臆する事なく進んでくる
「よく狙え、放てっ!」
一斉に15の銃口が火を吹き前を走る数人が倒れ伏すが倒れた兵士を超えて走ってくる
「ヌーベル隊!抜刀!残りは順次号令を待たずに放てっ!」
5の銃口は引き続き攻撃を続行し10人は抜刀した
そして近づいてきた敵と正面から切り結ぶ
ヌーベルは真正面から切り込んできた大男を逆袈裟に切り上げて一刀で沈黙させたが彼らも歴戦の者たちのようでヌーベルを除く9人は一刀では決めきれず激しい鍔迫り合いが始まった
「こうなりゃライフルなんていらねぇ!」
そう言ってドグはライフルを捨てて腰から刃渡りの長いナイフを取り出すと後続からくる敵の腹に突き立て、ヤウンもライフルに銃剣を取り付けて槍の如く振り回している。ヘレナはどこから拝借して来たのかスコップを持って敵の頭をかち割ってはトドメを刺している
俺はと言えば、拳銃を抜いたルイスに伴われて少し引き、パンドラ軍別部隊の接近の警戒にあたった
数こそ負けていたものの疲労感や目立つ傷の残る相手は剣を振るうのがやっとな様で次第にヌーベル隊の面々に斬り殺される者が増えて来た
それでも、引くことは選択肢にない様で腕を切られても残った手で殴りかかってくる始末だ。しかし、ヌーベル隊もそこは容赦せずに喉笛を掻っ切ってトドメを刺している
そうしている間に敵はみるみる数を減らして残りは隊長と思しき大男とその部下4人になっていた
残る四人は各々が大きな傷を負い立っているのもやっとと言うほどだったが大男だけはかすり傷は多いものの目立った大怪我は無く、目をぎらつかせていた
「もう勝敗は決した!これ以上の戦闘は無用!直ちに降伏せよ!」
俺の声に大男はハッと不敵に笑うと持っていた剣を俺に向かって投げて来た
剣は風切り音を立てつつ俺の眼前に迫るがルイスが片手に持っていたスコップで弾き落とした
普通に怖かった……。
い、いや。俺はルイスを信じていたんだぞ?ウン
降伏の色なしと見るやヌーベル隊の兵士が一人剣を大上段に構えて切り込んだが、男は拳を握り固めると兵士の土手っ腹に思い切り振り抜いた。
兵士は血反吐を吐き後方へ押し返され倒れ伏した
どうやら、兵士は内臓にダメージがいった様で声にならない声を上げて血を吐いている
しかし、その間に他の兵たちは残った大男の部下を切り殺し9人で包囲していた
その中からヌーベルが一歩前に出て横に手を伸ばした
「この男は某が相手仕る」
そう言ってヌーベルは太刀をダラリと下ろすとゆっくり大男の方へ近づいて行った
大男は両腕を胸の前に持って来て油断のない構えを見せるとジリジリと数歩後退りした
「シッ!!」
ヌーベルが口の端から息を吐くと同時に懐に入り込む様に低い姿勢で急接近し大男の横を通り過ぎる様に一回転して大男の背後に回った。当然正面からくるものと思っていた大男の拳は空を切り振り抜いた状態で静止してしまう。
そのまま切りつければ勝てると俺が思った時、ヌーベルは太刀を納刀して、ふぅと息を吐いた。次の瞬間男の脇腹から背中にかけて血の筋ができ、ぶしゅっと血を噴いて大男はゆっくりと傾き倒れていった
どうやらとんでもないのが部下になったらしい……。だが、フランツよ。俺たちはこんなのと戦わなきゃならんらしいぞと冷や汗が一筋垂れたのは内緒にしておこう
投稿が遅れ気味なことに加えて体調が最近芳しくないので会社の休暇と合わせて1週間ほど投稿をお休みさせていただきます。最新作の用意もしているので楽しみにしていただけますと幸いです




