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第八十三話 実践

かなり遅れてしまいました。スミマセン…。

 俺たちの隊は塹壕の中で敵の砲撃を受けていた


「ちくしょう、なんで俺たちはこんな所で塹壕になんて居るんだ。後方の警備が任務だったんじゃないのか」

 ルイスはヘルメットを目深に被って頭上から降り注ぐ瓦礫のカケラに舌打ちをした


「仕方ないだろ、ここはさっきまで後方だったんだ。それが敵の大攻勢でここが全線になったんだよ」

 そう、別に俺たちが前線に出てきたわけではなく敵の攻勢によって前線が後退してきたのが原因なのだ


 遡ること2日前パンドラ軍は近年でも類を見ないほどの大攻勢を仕掛けてきた。

 おそらく、帝国軍が前線から軍を引き抜いて本国の戦争に回している事に感づいたのだろう帝国軍は前線の陣地を次々と失陥し後方の基地が前線となる事態となっていた

 バラト大佐の命令で俺たちも塹壕に入りパンドラ軍の攻勢を受け止めて居るところだった


「ルーク殿、ただいま戻りました」

 その声の方を向くと司令部から戻ってきたヌーベル伍長が塹壕に戻って来たところだった


「連絡役ご苦労様。それで、大佐はなんと?」

「うむ、8時間後に反転攻勢を行うとのことでしたな」

「反転攻勢だと?ウチは今押されてるんじゃないのか?」

 俺の疑問にヌーベルが頷き声をひそめて俺に耳打ちしてきた


「実はですな、帝国軍は今回の敵の攻勢が本腰を入れて来た事を把握してからは逃げに徹しているそうで、前線の後退と軍の損害は必ずしも比例していないとのことでしたな」

 なるほど、戦略的撤退を繰り返して伸びた戦線を整理した訳か。これは前線の師団長も相当なキレ者かもな


「我々、補給大隊付きの部隊も攻勢に参加する事が決まっており日の出前の8時間に攻勢に備えよとのことでした」

 くそ、俺たちも攻勢に参加しなければいけなくなるとはなぁ

 しかし、命令なら仕方ない俺は渋い顔をしながら部隊員達に攻勢作戦の開始を伝えて準備をさせる、ドグとヤウンは慣れたことなのか淡々と荷物を整理し始めヌーベル達はサーベルの手入れもそこそこに渋々とライフルの手入れにも手をつけている


 その間に俺とヤウンはどうすれば生存率を上げられるか話していた

「やはり、突撃ラッパの数秒後に出るのがいいんじゃないか?」

「いや、逆に魚鱗状に整列して先陣を切った方が弾は当たらないと聞くぞ」

 ルイスは後ろから部隊について行く案、俺は先陣を切る案を出した


 これは状況によるのだがどちらも生存確率を上げる手ではある

 味方を盾にしても弾は絶対に当たらないということはないし、突進しても敵の弾の精度いかんでは先頭の方が弾を受けやすい結局は気休めに過ぎない


 中世の戦列歩兵やマスケット兵なら同士討ちを避けるために後方にいるのが正解なのだが、帝国のように塹壕手前までの射撃を禁じて突撃を旨とするドクトリンを取る場合結局は塹壕手前に辿り着けるか否かが生死を分けるだろう


 こうした、塹壕間の突撃は初めてなのでどうするのがいいのかわからない

 シュミレーションゲームでは歩兵の被害はある程度は折り込み済みで肉の壁程度にしか考えていなかったがこうして一歩兵となるとそうした戦術はたまったもんじゃないな何処ぞの国では歩兵は畑から取れるそうだが、そんな事を言える奴は到底人の血が流れているとは思えない


 そう思い俺とルイスが意見を交換しているとドグが寄って来た

「少し、寝ておけ。一度攻勢が始まれば上層部は元の攻撃線まで軍を進める気だろう。次にいつ寝れるかわからん」

 流石に実戦経験の豊富な叩き上げだいう事が違う


 俺とルイスは頷き合って、他の部隊員にも声をかけて一眠りすることにした。

 一眠りすると言っても塹壕の中に横になるスペースなどないのでひんやりとする土壁に体をもたれて眠る


 ただ、この数時間後には命のやり取りをするのだという緊張感もあってあまり眠ることはできなかった

 横を見るとドグが大いびきをかきながらヤウンの肩に腕を置いており、鬱陶しそうな顔でヤウンは寝ている。ため息をついて反対側を見るとルイスも静かに寝息を立てて寝ていた

 キャンプとかで自分だけ寝付けず非常に長い夜を過ごした事を思い出す

 置いて行かれた様な、それでいて寝ていたら見られなかった光景を見ていると言う謎の背徳感の中で過ごす悪くない時間だった

 しかし、俺はこれから何の益もない殺しをしに行くのか……。自国の利益にもならず怨嗟を生むだけの戦いだ。それに、カナリアを解放した暁には友好関係を結ばなければならない相手だ。そう思うと嫌でも重い気持ちにならざるを得ない

 そんな悶々とした感情を抱く俺を置いて夜は次第に明けていった

 ーーーーーーー


 そうして予定時刻の一時間前になった

 あまり寝る事はできなかったが時間なのだから仕方ない

 俺たちは武器を構えて突撃ラッパが鳴るのを待っていた

「俺たちはラッパが鳴って少ししてから飛び出す。うちの隊は近接攻撃が軸になってるからな、まずは敵の陣地へ辿り着くことを旨としてくれ」

 俺の言葉に部下達は頷くとヘルメットを目深に被り、ヌーベル隊はヘルメットではなく軍帽のつばを掴んだ


 そして、ラッパの音が鳴り響いた

次回更新は金曜日の予定です

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