第八十二話 謁見
しれっとね〜
<アラスター視点>
そして、部屋のドアが開いた。出て来たのは小柄な女だった。
俺は何度も目を瞬かせて思考がフリーズしてしまった
後ろからは先ほどの男が神妙な顔で付き従っているのであの女が首領であるのには間違いないのだろう。俺は慌てて頭を下げた
「ふん!」と言って女は正面の立派な椅子に座った
「貴様ら!面を上げよ!」
男が声を上げ、俺たちは顔を上げた
女はこの荒くれ達をまとめ上げているにしては幼く見えた
髪は後ろで束ねてあり袖のない服に裾の広がったズボンを履いていた。服はシルクの上等な物でこんな未開の島の奥地に居るにしては余りにも気品に溢れていた。しかし、幼さは端々に残っており10代くらいの様に見える
「海賊ってこんなに儲かるのかぁ……。俺もやろうかなぁ」
と、後ろの部下が隣の部下に耳打ちしているのが聞こえた
たしかに、女の服装に比べれば俺たちの服装は余りにもみすぼらしく見えるだろう
「貴方達はなんの用があって、私達の暮らす島にやって来たわけ?」
女は訝しげな目で俺たちを睥睨していた
「我々は帝国軍を駆逐し、カナリア共和国の再興を目指す組織『カナリア解放軍』です」
俺が自分たちの所在を口にすると女は興味がなさそうに、「ふーん」と言うと続きを促す様に顎で示した
俺は頷いて目的を語る
「この度、貴方様の島に来た理由は是非とも我々にご助力を賜れないかとお願いに参った次第でございます」
「却下!なんで、貴方たちの手伝いなんてしないといけないの?そもそも、こちらに利を提示するのが先ではなくって?」
む、この女……。幼いように見えて鋭いな。上手いこと言えば言いくるめられるかと思ったが一筋縄では行かなそうだ
俺はすくと立ち上がると大仰な身振りで説明を始めた
「ご助力いただき、国を取り戻した暁には皆様を我が国の正規の海軍として迎え入れ海上の利権の一切をお預けいたしましょう」
俺の言葉に海賊たちのどよめきが聞こえる
彼らも漁民や海上商人の出が多いのだろう海の利権の一切を任されると言う振ってわいた
幸運に動揺が隠せていない
ただ、初老の男はため息をつき、玉座の女はつまらない物を見るようにフンッと鼻を鳴らした
「貴方達が差し出せるものと言ったらそのぐらいしかないでしょうね。後はせいぜい金品ぐらいかしら?」
うーむ、図星だ。
俺たちは今ほとんど何も持っていない。独立後の権利は保障できても今何かを用意出来るかと聞かれれば否という他ない
「そうねぇ、後二つ条件を飲むなら協力するのも吝かではないわ」
「我々に可能なことならお受けしましょう」
俺の言葉に女は頷くと条件を述べ出した
「まず、協力関係の時点から私たちに独立した兵権を認めなさい。その上でそちらの兵士を400人陸戦兵として私たちに預けること」
チッ、軍規で雁字搦めにしようとしていたのが透けたか……。裏切られる心配を孕んだ協力者か、それに兵士を提供か…。俺たちの部下を懐柔して権利の幅を広げるつもりだ強かな事だ。だが、このぐらいは認めなければなるまい
「そして、二つ目は独立後、私達の戦いに協力すること」
「た、戦い……?それは何処と?」
「それはまだ言わない。ただ、其方らには後ろ盾になっていただければ良い」
戦い…?何処と戦うのかもわかっていないのに二つ返事で受けて良いものか……。だが、彼らの力を使って国を取り戻せれば後は用はない。ここは受けて、無理な相手なら反故にして仕舞えば良い
「承知した。その2点の事はコチラでなんとかしよう」
女は俺の言葉に意外だとでも言わんばかりの顔で浅く頷き初老の男の方を見た
「よし!盟約は成った!今から貴殿らは客人!皆の者、宴の用意を!」
そう言って男が手を叩くと海賊達は喜びの声をあげて隣の部屋を開けて大机を運び込んだ
「私はアン・ウィリアムズこの海賊団の首領を務めています。貴方達の事は嫌いですが、帝国の事はもっと嫌いです。可愛い部下達の地位が保証されるなら悪くはないでしょう。では、私はもう一眠りします」
そう言って女、改めアンは元来た部屋へ戻って行った
「俺の名前はバスター・モーゼンっていうんだ。一応この一団の指揮を取ってる。先程は貴殿の部下を撃ち殺して悪かったなぁ」
「なに、軽率な私の部下が悪いのです。こちらこそ無礼をお許しいただきたい」
俺とバスターは握手をして共に席についた
背後の部下達は殺された仲間の事に納得していないようだがここは我慢してもらうしかない
そうして、食事や酒が運ばれ海賊達は陽気に歌い出した
その歌は聞いたことのない故郷を懐かしむ歌だった
次回更新は金曜日の予定です




