第七十八話 例の
大変遅れました。すみません!
その後、ベル君と別れた俺たちはそのまま大隊に付き従って前線まで目と鼻の先というところまで来ていた
森での奇襲によってバラト大隊は1000人いた兵を750人まで数を減らしており、
俺の配属された後続のコリン少佐の隊も戦死に加え、負傷兵を後方に下げたこともあって250人の兵が100人まで削られていた
ドグとヤウンは本来はバラト大佐の直参であったが人員補充の意味合いも兼ねてコリン少佐の元にいる俺たちの分隊に配属されていた
正面からは幾本もの煙が立ち上り砲兵による迫撃がパンドラ、帝国両軍の頭上に降り注いでいた。
バラト大佐は最前線の塹壕からほんの数キロ離れた指揮所へコリン少佐とセリーヌ少佐を従えて指揮官に挨拶へ行った。
俺たちはその間運んできた荷物の積み下ろしや後方へ送り返す予定の前線で負傷した帝国兵を担架に乗せてトラック運び込むなど着いた瞬間から仕事は山積みだった
ヤウンはこっそりと荷物の陰で休もうとしていたところをドグに引っ張られて嫌そうな顔をしながら木箱を運んでいる
そうしてしばらく作業をしていると塹壕の方から将校を先頭にゴマスリみたいな奴が揉み手で逆三角形に後をついてくる院長回診のような一団がコチラへ歩いてくるのが見えた
「ルーク、少し顔を下げたほうがいいかもな」
ルイスが荷物を運ぶ手を止めてこっそりと俺に耳打ちした
「どうして?」
俺が問うと彼は神妙な顔で将校の一団を顎で示した
「あいつらは俺たちを後方に送った小隊長とその取り巻きだ。下手に顔を見られると絡まれるぞ」
彼がそう言うので俺も荷物の隙間からその一団を見ると確かに俺たちが一瞬だけ所属していた小隊の面々に見える
「だけど、どうして一介の小隊長風情にあんなに取り巻きが?アイツは確か士官学校卒業してすぐの少尉だったろ?」
「あぁ、たしかに階級は少尉だ。だが、いわゆる名門軍人貴族の出でな。将来の出世が約束された彼らは本国で大きな戦争が始まる直前に貴族達は子弟を比較的安全な植民地の戦線に移動させるよう便宜を図ったんだ」
たしかに植民地の戦線なら現地徴兵組を盾にすればいいって考えだろうし、最悪総督府の雑用でもさせれば安全だ。逃し場所としては最適なんだろう。
もっとも、後方の補給大隊が移動中に襲われる程度には危険な現状、彼らの判断も悪手だった可能性はあるがな
「なるほどね、彼は出世した後に直属の部下を持つからそれに選んでもらおうと必死ってわけか」
「そういうことだ」
俺たちは頷きあい逆の方を向いて腰を落としながら作業を続けた
一団がゾロゾロと通り過ぎる音を背後に聞きながらホッと息を漏らしていると大勢の足音が止まった音がした
「おぉ、なんと美しい女性か……!そこの木箱を運んでいる御方!」
例の小隊長が声をかけた先を恐る恐る見ると案の定と言うか何と言うか、ヘレナがいた
「はい?何か御用でしょうか?」
ヘレナは人前に出る時用の笑顔をベッタリと顔に貼り付けて彼の目を見ていた
「一体、どこの所属なのだ?最近来たところを見るとバラト大佐の補給大隊の者か?そんな閑職より私の隊に来い!貴方の様な方なら大歓迎だ!」
そう言って彼は両手を広げた
「畏れ多い事です。私の様なものなどにお構いなさいませぬよう」
彼女はそう言いながらはんなりと頭を下げた
小隊長殿はその様子にさらに惚れ込んでしまったらしく鼻息を荒くしている
その様子を見ていた俺たちは笑いを堪えながら、いつ割って入るか様子を伺っていた
「頼む!今すぐにでも私の小隊へ!」
そう言って小隊長殿が駆け寄って行こうとするのを見て流石にマズイかと思い、割って入ろうとするとヘレナと小隊長の間に巨漢が割って入った
その正体は何を隠そう、俺たちの上司であるバラト大佐だった
「相変わらず、腑抜けたバカはどこにだって居るもんだなぁ。えぇ?」
「まったく、フーリ准将も部下の教育をどう考えてるんでしょう」
横からついてきたノッポはコリン少佐だろうな
二人はニヤニヤとした笑みを浮かべており、バラト大佐に至っては小隊長の肩を掴んでいる
「バ、バラト大佐!?今、フーリ師団長と話しているはずでは……?」
彼はあからさまに動揺して目を泳がせている
「そんなこたぁ、どうでもいい。ウチの部隊の人間のケツ追っ掛けてる暇あったらよぉ。無い知恵絞って戦況を改善する策でも考えろ!テメェらの体たらくのせいでウチの人間が大勢死んだ!」
「な、貴様ら平民出身の失態までコチラのせいにされては構わない……。」
最初は威勢の良かった小隊長はバラト大佐の剣幕を前にしおしおと弱っていく
「あぁ!?貴族ってのはそんなに偉いのか!なら、貴様の腕の一本でも切り取って本当にテメェの血が青いかたしかめてやろうか!?」
バラト大佐に凄まれて彼らはすごすごと引き下がり少し距離を取ったところで取り巻きと一緒に駆け出して行った
次回更新は土曜日の予定です。次回分は書き上がっているので遅れることはないはずです




