第七十七話 別れ
コリンと対で考えられることの多い2人目の中隊長であるセリーヌは肩をすくめて、車両に戻ってきたバラト大佐を迎えた。
「大佐〜、あの子仮病じゃないかしら」
その言葉を聞いてバラト大佐はフンっと鼻息を吐いた。
「そんなこたぁ、重々承知よ。わかった上で後方に下げさせた」
「それはなぜ?」
セリーヌは微笑を浮かべながら不思議そうに小首を傾げる
「ガキを戦場から下げさせる理由なんざなんでもいい。あー言うガキに戦わせない為に俺は軍人になったはずなんだけどな」
「使えるものはなんでも使うくせに〜?」
セリーヌがイタズラっ子のような顔でバラト大佐の顔を覗き込むと彼はニヤリと笑った。
「戦場で戦いたいって志願してここまで来たやつは問答無用で使う。その決意は踏みにじらねぇさ。それに、あの分隊の奴らは使えるしな!」
「それは彼らの生存率の高さかしら?」
セリーヌの質問にバラト大佐は軽く頷いた。
「それ以外にも、奴らはあの歳にしては珍しく分隊単位での単独行動ができる。それで生存率も高いと来たら使わざるを得まい」
セリーヌは彼の言葉にうなずきつつ窓の外を見た。
ちょうどルーク伍長たちがベル上等兵を運んでいく様子がみえた。
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「それじゃあ、ベル君一旦のお別れだね」
俺が言うとベル君は寂しそうに頷いた。俺もベル君と離れ離れになるのは寂しい
考えてみれば彼とは幼少の頃から5年以上一緒に過ごしてきた。彼の存在は俺の癒しであり、心の拠り所だった
「お互いにまた生きて会おう。俺もまだまだ悩まなければいけないしな」
ルイスがベル君の肩をポンと叩く
「そうだね。でも僕はルイスは最後には僕たちと戦ってくれるって信じてるからね!」
ベル君の純真な目を向けられてルイスは頭をポリポリとかいて困ったような、それでも満更でもないような顔をしている
「まだ会ってすぐなのにあっという間にお別れになっちゃった。次に一緒に行動する時はもっと話せるといいなぁ」
ヘレナははにかんだ笑みをベル君に向ける
あ、コラコラ、ベル君が顔真っ赤になってるじゃない。年若い男の子に色目使わない!
俺たちが挨拶を済ませて他愛のない話をしていると遠くから見覚えのある二人がやってくるのが見えた。
「おーい!俺たちに挨拶は無しか!?」
「薄情な人達っすよほんと」
逞しいシルエットと気だるそうに歩いてくるシルエットは俺たちの想像した通りドグとヤウンだった。
「おぉ!久しぶりだな!」
俺が二人に寄っていくとドグが不機嫌ですと言わんばかりの顔でため息をついた
「なぁにが、久しぶりだぁ!俺たちのこと忘れかけてたんじゃないかぁ?」
「いや、忘れてなんていないさ。でも、一回か二回しか一緒に戦ったことがないからわざわざ探して声をかけに行くってのもどうなのかなって思ってさ」
俺が言い訳じみたことを言いながら笑うとヤウンはドグを肘でつついた
「ほーら、だから言ったんすよ。ドグが思ってるほど人ってそう簡単に心を許さないものっすよ」
「バカ言え!会っただけならともかく死地を共にした中だぞ?別れの挨拶くらいあって然るべきだろうが」
ドグの言葉が俺の脇腹にチクチクと刺さる。
別に忘れてたわけじゃなかったんだ。ただ、探すのはめんどくさいなぁって思ってただけで
そんな俺の心の内はそっとしまってニコニコとしておく
「それで?ベルが国に帰るんだって?」
ドグがベル君の方に向き直るとベル君はビクッとしてコクコクと頷いた
「それは、軍役ご苦労だったな。ゆっくり休むといい」
「そっすね、命あっての物種ですからね。無理はするもんじゃないっすよ」
近衛師団出身の二人ならもっとスパルタかと思ったが意外と優しいんだな
「給料も自分らより少ないですしね」
「給料のことなぞ心配しとるのは貴様くらいだ!」
「いやいや、軍人なんて八割方給料目当てでしょうよ」
この二人は相変わらずだなと思いつつ苦笑していると後方に下がる負傷兵達の波が動き始めた。
「じゃあ……。そろそろ行くね」
「うん、またすぐ会えるさ」
泣きそうなベル君を抱きしめて背中をポンと叩いてやると頷きながらベル君は涙を拭った
「じゃあね!」
そう言ってベル君は後方に下がる一団に駆け足で合流して行った。
次回投稿は明後日の予定です。




