第七十二話 そういう訳で
〈ルイス視点〉
自分でも意外だった。彼らに隠し事をされていたことに動揺して背を向けてしまったが、そのまま事が進めば自分は立場上彼らと一緒には居られなくなると思い当たったのだ。
その途端に頭の中が真っ白になった。そして、この動揺が自分の彼らに対する心情の答え合わせのように感じて愕然とした。
自分はこんなにも彼らとの関係を心地よいと思い、手放したくないものと捉えているとは思わなかった。しかし、帝国に今もいる父や母には恩義がある。
思えば、政争に負けた帝国貴族の運命は悲惨だ。
帝国貴族は能力を認められた世襲制を取る軍人の家系で一代のみの一般的な軍人とはその性質は異なる。その為、帝国貴族はほとんどの場合その立場を失うことはない。
そう、ほとんどの場合は……。
お人好しだった父は没落した軍人を多く庇い、その結果立場を悪くしていった。
その父が惚れただけあって母もたいそうなお人好しだった。大切にしていた家財やアクセサリーを売って父の助けた軍人の妻子に服や食料を買い与えていた。
しかし、いくら帝国貴族といえど財産には限度がある。元々慎ましい生活をしていた為かみるみる内に財産が減っているのも気づかず元部下や同僚を助け続けた。
もちろん家は貧乏になり人望と引き換えに財産の大半を失った。
さらに追い打ちをかける出来事が起こる。
父は彼の人望を危険視した各派閥から徹底的に目の敵にされ、でっち上げの罪によって大佐の階級を少佐まで落とされてしまった。現在は近衛師団付きから外され前線に引っ張り出されているらしい。
そんな、父と母を見てきたので人に情はかけまいと思ってここまで生きてきた。
ルークやベル君に声をかけたのだって、彼らを助ければ一人で訳のわからない粗野な帝国兵と行動を共にしなくていいと思ったからだ。
それからヘレナとあってルークもベル君もお人好しで、ルークの奴がバラト大佐に気に入られて、アイツはカナリア人のはずなのに帝国人ともすぐに打ち解けて本当に変な奴らだ。
彼らの能天気具合には時折悩むこともあったがいつの間にか自分の方がアイツらに似てきて居たなんて気づきもしなかった。
結局、俺はあの父と母の息子で間違いない。なんだかんだで絆されてアイツらについていきたいと思ってるんだからな。
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〈ルーク視点〉
俺とルイスが抱擁を交わすと目の端に涙を溜めたベル君も抱きついてきた
ついでとばかりに俺はヘレナもと思い彼女に目配せをすると彼女もやれやれといった感じで抱擁に参加した。
「おや、話はまとまったようだね」
声が聞こえた方を見るとトリノが微笑ましいものを見るような目で腕を組んでコチラを見て居た
「あぁ、一先ずはな」
俺が応じるとみんなそれぞれの席につく
「では、改めて。わしは父から継いだパンドラ国内のカナリア解放軍を率いている。まぁ、解放軍と言ってもカナリアから亡命した5000人の兵士の子孫なんだがな。しかも、今はすっかり数も減ってせいぜい400人ってとこだな」
嘘だろ?5000人はいるんじゃなかったのか……?
この50年の間に何があったんだよ。
「そんなに人が減ることってあるのか?」
俺が問いかけるとトリノは節目がちにため息をついた
「話せば長くなるんじゃが」
あ、これは本当に長くなるやつだ
俺は茶の用意をしておかなかったことを後悔しつつ話に耳を傾ける
次回更新は土曜予定です。うまくいけば金曜更新もあるかも…?(無さそうです)
追伸:誤字報告ありがとうございます!普段ゆっくり修正している関係でガッツリ誤植していると気付くのが遅れがちなのでありがたいです!




