第七十一話 答え合わせ
「ルイス、ここへ」
トリノが出て行った後、俺は目の前の席を手で示した
しかし、彼は呼吸荒く肩を上下させながら無言を貫いていた
それを見て俺はもう少し声を和らげてもう一度彼を呼ぶ
「ルイス、ここへ座ってくれ。お前には謝りたい事と頼まなきゃいけないことがある。それを聞いてからでも遅くはないだろう?」
俺は前世の部下に話しかける時を思い出してできる限り誠意を込めて語りかけた
「ダメだ」
ルイスは肩を震わせて首を横に振った
「なぜ?」
俺が問いかけると彼はバッとこちらを向いて叫んだ
「俺は……!この数ヶ月でお前たちのことが大好きになってしまった!可能なら本国の父に推薦状でも出して本国でも無二の友となりたかった……!」
彼は一呼吸挟むとさっきの倍の声で叫んだ
「お前の謝罪を、頼みを聞いたら俺はきっとお前たちについて行ってしまう!いくら政争に負けたと言っても父や母にあんな無体を働く帝国に忠義なんてない!」
彼の絶叫に俺たちは呆気に取られていた
え、お前ってそんなに情に熱い人間だったの?もっとドライなやつかと思っていた。
でもたしかに、この世界の人間は皆しっかりしているから忘れがちだが、彼もまだ18歳なのだ。前世では高校三年生。まだまだ多感な時期だ。
そんな中で本国のゴタゴタで植民地なんぞで戦わなければいけないのだ。
今までのクールさは彼の一面ではあるが、それが彼の全てではなかったのだろう
「だが、本国には父や母がいる。ただでさえ本国での立場の悪い父の立場をこれ以上悪化させるわけには……。」
彼は彼なりに俺たちとの関係を心地よいものと捉えてくれていたようだ。しかし、父や母への愛も本物であるが故に板挟みに悩まされているといったところか
俺たちが向き合ってお互いに頭を抱えていると横からずっと聞いていたヘレナが声を上げた
「じゃあさ、帝国に忠義はないんでしょ?じゃあさ帝国と本格的に戦うまでは一緒にいればいいじゃない」
ヘレナは何をそんなに悩んでるのと言わんばかりの呆れた声で腕を組んでいた
なるほど、確かに直接戦闘する時に騙されていたということにすれば問題はない。最悪、捕虜という扱いにしてしまえば当面の問題は解決か……。
「だが、それでは問題の先送りになるんじゃ」
「もし、そうだとしてもさ。今が詰んでる状況である以上。時間に解決を委ねるしかなくない?」
ルイスはその提案を渋る様子を見せるがヘレナは自分の頭の後ろに腕を組んでやれやれと言った風で笑っている
「そうだよ!僕もルイスとは離れ離れになりたくないよ。せっかくここまで一緒にやってきたのに……。」
ベル君も恐る恐る声を上げる
ここだ!
「なぁ、ルイス。今まで俺たちの素性を黙っていたことは謝る。だが、その上で頼む!俺たちと一緒に帝国と戦ってくれ」
俺の頼みにルイスは目尻を拭って静かに頷いた
「わかった、まだしばらくは答えを保留にしておく。戦闘が始まったら俺は帝国側で戦闘を終わらせられるように努力する。俺にはソコが限界だ」
もちろん大満足の回答ではないが俺たちが一緒にいる理由がまだあることが確認できた。決断の時期はまだ先だ。時には時間が解決することがあってもいいだろう。
そう思い俺は両手を広げた。
ルイスはぎこちない笑みを浮かべると少し腰を下げて俺の腕の中に入ってきた。
次回更新は火曜もしくは水曜の予定です。早めに書きあがればその限りではありませんがあまり期待しないでお待ちいただけますと幸いです




