第七十話 またもや
声のした方へその場にいた全員が目を向けると階段の手すりを掴みながら降りてくる老人がいた
その老人を見て俺たちは息を呑んだ
そんな俺たちを尻目に周囲の兵士たちは口々に老人に向かって口々に声を上げた
「あぁ、コルネイアさん!この帝国軍人を殺す許可をください!たかだか4人殺したところで…!」
俺はここぞとばかりに彼らの声をかき消さんばかりの声で老人に声を掛けた
「トリノ爺さん!?アンタどうしてこんなところに?」
俺たちの見上げる先にいたのは何を隠そうつい先日別れたばかりのトリノ・コルネイアだったのだ
俺がそう叫ぶと爺さんは目を瞬かせたあとため息をつき声を荒げた
「者ども!静まれい!その者は敵ではないわい!」
その声に圧倒され、兵士や集まっていた人々は黙りこくった
「ヘンリー!その者達を2階の応接室にご案内しなさい。その間に、わしは其奴らの素性を話してやろう」
トリノは一名の兵士の名前を呼ぶと彼に俺たちの案内をするように言った
「あ、あのぉ。外にいる馬の側にパンドラ人の方を連れてきてます。そちらの方をお願いしにきたんですけど……。」
ベル君が恐る恐る来た訳を説明し終わらない内に兵士の何人かが外へ飛び出していった
「そうじゃったか、それはわざわざすまなんだな。おい!ヘンリー!いつまでぼさっとしておるか!」
爺さんが傍の兵士に叫ぶと我に返ったその男は慌てて俺たちの方に向き直り
「こ!こちらへどうぞ!」
そう言って彼は階段の方へ歩いて行った
俺たちは状況の展開の速さに追いつくのが必死で彼の後を慌てて追いかけた
背後ではトリノが俺たちの素性を説明してくれているようだ。一先ずは安心だ
ヘンリーと呼ばれた男についていくと他の部屋よりは幾らかまともな部屋に通された
「それでは、こちらでお待ちください」
ヘンリーは軽く頭を下げると部屋から出て行った
彼が出ていくと俺たちは空気が抜けたように椅子の深く身を沈めた
「はー、殺されるかと思った……。」
「そりゃ、そうだよ。門でこの軍服で通れたのがそもそも奇跡みたいなものなのに」
ルイスがため息をつきヘレナは肩を落としてやれやれと言った感じで両手を投げ出している
「ごめんね、僕も名前を名乗れば話を聞いてもらえると思ってたんだけどそんな余裕もなくて……。」
「ベル君は悪くないさ。俺たちが思っていた以上にアイツらに余裕がなかったのさ」
俺は落ち込むベル君の肩に手を置いて励ますが彼は相当キているようで俯いたまま顔を上げなかった
そうして俺たちが束の間の休息をとっているとそこへトリノ爺さんが入ってきた
「まったく、ここにいる連中が帝国を敵視しているなんて分かりきっているコトだっているのに。馬鹿者どもめ」
「すまない、考えが回っていなかった。ここまでパンドラ陣営の色が濃いとは」
トリノの指摘は尤もなので素直に謝っておく
「それでトリノ爺さんはなんでここに居るんだ?」
俺がそう聞くとトリノはフッと息を吐いた
「わしはなこう見えてパンドラ内のカナリア解放軍を率いているのじゃよ」
なるほど、そう言えばそんなことを言っていた気がする。
「ここにはカナリア解放に賛同してくれる同志を集めに来ていたんじゃ」
そうか、そうだったのか。俺が納得している後ろでガタリと音がした
「どういう事だ?カナリア解放軍?なんの話をしている」
声の主は一人カナリアの現状を理解していなかったルイスから発せられたものだった
しまった。ルイスのいるところで話すべき事じゃなかった
しかし、後悔した時にはもう遅かった
ルイスは信じられないモノを見る目で俺とトリノを交互に見ていた
「なんじゃ、お主の隊は皆カナリア系かと思っていたが、一人帝国の人間がいたのか」
トリノは意外と言わんばかりに肩をすくめているが悪びれる風もなく話を続けようとする
「ちょっと、待ってもらっていいか?俺はその話を聞いてしまうとお前たちと敵対しないといけなくなる」
ルイスは壁際まで行きフイとそっぽを向いて壁の方を向いたまま動かなくなった
「すまない、トリノ爺さん。俺たちは少し話がある」
そういうと、トリノはさもありなんという風で頷いた
「ではわしはしばらく外で待っておるから話が終わったら呼べ」
そう言ってトリノは部屋を出た。
さぁ、営業トークの時間だ。そう思い俺はルイスの方を向き覚悟を決めた
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