第六十三話 方策
お待たせいたしました。引き続きフランツ視点になります
フランツはアラスターが言ったことが信じられなかった
「か、海賊だと!?そんな過去の遺物、とうの昔に帝国に滅ぼされたはずだろうが」
俺が訝しげな目でアラスターを見返すと彼は肩をすくめた
「えぇ、私もそう思ってました。でも違ったんです。私が沿岸都市のグダニイルにいたことは知ってますよね」
「あぁ、知っている。確か人の伝手と物資の貯蔵庫を探しに行ったんだよな」
「はい、ちょうどその時に海賊たちが帝国の沿岸警備基地を襲撃しているのを確認しています」
まさか、まだこの厳しい時代に海賊を名乗る者がいるとはな
「しかし、そいつらは民間人も襲っているのでないか?だとしたらこの国を取り戻した後彼らとも戦わねばならん、ここで下手に協力などしたら恩を受けることになる……」
海賊は帝国より話のわかる連中とはいえ庶民の暮らしを脅かすものという事に変わりはなかった
「それがですね、私が見た海賊はどうやら義賊と呼ばれる類のようでして。民間人が襲われているという情報はありません」
「うーむ、だとしても軍律とは無縁の輩だ……。我々と歩調を合わせられるとも思えないな」
義賊とはいえ野放図に生きてきた彼らと規律の厳しい軍人とでは部隊の中に不和を生みかねないというのが本音だった
それに、下手に賊に借りを作っては国を建て直した時に権利を要求されかねない。
「今回の戦いは我々だけの力で完遂しなくてはならない。周辺国家はおろか我々以外のカナリア国内の組織の力を借りるわけにはいかない」
俺がそういうとアラスターは俯いて唸った
その様子を見ながら俺は言葉を続ける
「もし、彼らの力を借りて勝った時、それは本当の独立とは言えない。私の目指す独立はこの国の事を真に憂い、この国の未来のために死んで行った仲間たちの意思を受け継ぐ事なのだ。ヴィルト中佐はそこが中途半端で帝国の尖兵として死んだ。だが、私はそうはならない」
彼はやり方は違えど同じ目標を目指した戦友の顔を思い浮かべていた。彼は帝国との共生を望んで使い潰されて死んだ。だが、俺はそうはならない
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ここに、ルークなどがいれば「この人結構歪んでない?」などと思ったろう。しかし、この場には狂信的な独立主義者であるアラスターしかおらず彼の考えに疑義を挟むものはいなかった
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「えぇ、その通りです。その独立の方針は私も大いに賛成です。ですが、ここは奴らを利用すべきです。最悪の場合は彼らを海軍として独立後は取り込んで仕舞えばいい。ある程度、最初の期間は泳がせておき支配を強めた後で軍律で少しずつ雁字搦めにすればいい」
アラスターはそれでも海賊たちの力は必要だと考えていた
海というのは陸とは勝手が違う。可能な限り不確定な要素は排除したい。海の事は海の人間の知恵が必要だ
フランツは腕を組んで悩み込んだ
「ひとまず、我々の作戦に加担するかどうか交渉する必要がある。彼らが見返りに何を求めるかわからない以上、我々としても扱いに困る。どちらにせよ将来的には対処する必要がある相手なら、今でも問題ない。アラスター、地下に潜らせている部下を20人ほど貸す。交渉を頼めるか?」
アラスターは深く頷くと急いで会議室から出ていった。
フランツは再び椅子に腰掛けると地図の前で唸り声を上げた
「我々の力だけではままならぬモノだな……。」
彼のその悔しそうな声は会議室の天井にこだまして消えていった
次回の投稿は少しお時間をもらいまして、金曜朝8時〜9時ごろとさせていただきます。よろしくお願い致します。




