第五十六話 あの時
完全に土日を満喫していたら予約投稿し忘れてました…。スミマセン
今回はトリノのお父さんのウッツの過去編のなります
トリノはぽつりぽつりと語り出した。
彼の父であるウッツ・コルネイアはカナリア軍内の各師団の裏切りを察知した時、ほとんど無傷の連隊を率いて各町に点在するカナリア軍人の家族を回収して隣国であるパンドラに保護を要請した。
この時、軍人の家族のみを収容したことが後々カナリア人の中でも不和を生むことに繋がってしまうのだが、それはまた別の話である。
そうして、本土防衛に際して全滅したカナリア共和国軍に変わってパンドラに拠点を置き対帝国戦線の構築を大陸中の各国に呼び掛けた。
しかし、各国は帝国の侵攻はカナリアの占拠に時間がかかるモノと考えて日和見を決め込んだ。
その結果カナリアの隣国であるパンドラとアトラス王国は対帝国戦線に参加したが、その他の国は国内の軍備は増強の方針をとったが帝国と戦うポージングはとらなかった。
その結果としてウッツは約5000人のカナリア共和国軍人と4万人の難民を抱え宙吊りの状態になってしまった。
ウッツはパンドラの国軍に借りた仮設駐屯地にて地図の前で頭を抱えていた。
「なぜ、他国の連中は帝国の脅威を理解しねぇんだ!クソッ!ルフェインがいればな……。」
今は行方不明の同僚の名前を出してため息を吐く
「なんで、俺なんだろうなぁ」
そう言って、彼は帝国の侵攻直前の作戦会議の後のルフェインとの会話を思い出していた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「なぁ、ウッツ」
「あぁん?どうした、この後に及んで気後れか?」
それぞれの連隊長が各々の隊に散っていく中でルフェインに呼び止められたウッツはおのれの緊張を隠すように笑って見せた。
「お前には悪いが、お前は手勢と軍の家族を連れてパンドラに行け」
あえて、逃げるという言葉を使わなかったのはルフェインなりの優しさだったのだろうが、ウッツにとっては尻尾を巻いて逃げろと言われたようなものだった。
「はぁ?テメェ何言ってるんだ?俺はここで国を枕に死ぬんだ。ここで逃げるなんてあり得ない」
「あぁ、わかってる。だがな、絶対に裏切らないと断言できる人間があまりに少なすぎる」
その時、ウッツには裏切ると予想される人間には想像がつかなかった。
「そんな役目、俺なんかじゃなくて老将のバフリル准将かサルボ大佐に任せればいいだろ」
そんな言葉を返すが、ルフェインは首を横に振り諭すように語りかけた
「ダメだ、この戦いは長引くだろう。俺たちの世代では終わらないくらいにな。そうなった時、今すでに孫がいるような世代では戦える時間が少なすぎる」
それを言われた時、コイツはそこまで先までの戦いを考えているのかと驚愕したものだ。
「なるほどなぁ…。だが、それならお前だってその条件に当てはまるだろ?」
言われたルフェインは痛いところをつかれた様な顔で頭をぽりぽりとかくと戯けた様な笑顔で答えた。
「俺には可愛い子供と美人な嫁がいるからな。尻尾巻いて逃げ帰るわけにはいかない」
「ヘッ、こんな時に家族自慢かぁ?言っとくがなぁ、俺だって後数年すれば可愛い嫁さんがだな……。」
「だが」
俺が弁明しようとするのを遮ってルフェインは俺の顔を正面から見据えた
「だが、まだ守るべきものがいない。そうだろう?」
「ま、まぁな」
「なら、お前の死ぬべき場所はまだここじゃないってことだ。頼んだぞ」
そういって彼は俺の肩を叩くと軍帽を被り直して天幕から出ていった。
それが、彼と交わした最後の言葉だった
次回の投稿は水曜日の昼頃を予定しています。




