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第三十三話 出会い

「アタシの父もあんた達と同じカナリアの現地徴兵軍人だった。でも、父は帝国の手先として世界中を飛び回って軍功を重ねて中佐まで成り上がった。私の母は早々に死んでしまったからアタシはいつも父と戦場を点々としていた」


「中佐というと大隊の指揮官補佐レベルか、それはすごい」

 ルイスが感心すると彼女は少し嬉しそうな表情を浮かべた後、寂しそうな顔で唇を噛み締め話を続ける


「だけど、危ない戦場ばかりでいつも戦地に行く度、父は体のどこかに傷を増やして帰ってきた。だけどバカなアタシは父がこの世で1番強いのだとと信じて疑わなかった。この世界で1番強い父はいつだって私の所へ帰ってきてくれると思ってた」


 そこで一呼吸おき彼女は何かを飲み込むように俯く

 その目にはうっすらと涙が溜まっていた


「でも、パンドラとの激戦地に行った日、父は帰ってこなかった。でも、アタシは父が死ぬはずなんてないと思ってた。父の副官が涙を堪えながらそのリボルバーをアタシに渡して。父の死を淡々と告げるまでは」


 当時を思い出したのか彼女は肩を振るわせながらそれでも嗚咽混じりに話を続ける

 まるで誰かに聞いてもらいたかったかのように彼女の口から出る言葉はとめどなく溢れていた。


「それからは酷いものさ、カナリア人にも関わらず中佐まで上り詰めた父を疎むものは元から多かった。ここぞとばかりにアタシを狙って襲いかかってくるようになったのさ」


「アタシは怖くなった。このまま軍にいたら殺されると感じて夜にこっそりと軍営を抜け出してこの補給基地の近くの森で小さな盗みをやって暮らしていた」

 そこまで言い切ると彼女は自重気味に薄く笑いながらまた視線を落とした


「哀れだよな、父がいなくなって気づいたんだ。アタシには父しかいなかったんだって。父を支えて生きていくことが生きる唯一の意味だったんだって。だから、父が死んだ今こうやって捕まって殺されるのを望んでいたのかもしれない」


 なるほど、合点がいった。彼女が目覚め状況を理解した時に妙に無気力で覇気がないのはそういうことだったのかと。


 こうやって内心を話したくてでも話す相手がいなかった。


 そうやって彼女の本質を見てみればどんなに強がってもまだまだ中高生くらいの子供だと認識させられる


 彼女は抜け殻だ。生きる意味をなくして死にたがっている。



 だが、一度死んだ経験のある俺からすれば言いたいことが二、三ある

「なぁ、意味を持って生きることってそんなに重要なことなのか?」


 そう言うと彼女は訝しげに顔を上げた


「俺から言わせれば、生きる意味なんてもっとしょうもないことでいいと思う。美味い飯をもっと食いたいとか、気の合う仲間とずっといたいとか、見返したい奴がいるとか。そんなことでいいんだと思う」


 俺自身、前世の生活は苦しかった。でも、死にたいとは一度も思わなかった。

 それは趣味のゲームのおかげかもしれないし、クソ親父を見返したいと言う復讐心からだったかもしれない。でも、そんな理由でもなんだかんだ生きていた


 そんな中で下らない逆恨みで殺されてしまった俺だから言えることがある


「みんな死の先に何があるかなんてわからなくて、その先が怖いから仕方なく生きてるだけさ。生きる意味を持って生きてる奴なんて逆に物珍しい。まぁ、そう言う奴が偉業を成し遂げるモンだがそんな高尚な考えばっかりじゃ息も詰まっちまうからな」


 そう言って肩をすくめて見せると彼女は唖然として目をパチパチと瞬かせ俺を見つめていた



 しばらく沈黙が続き俺がカッコつけたことを後悔し始めた頃、彼女はまるで合点が行ったかの様に大笑いし出した。

「そっか、そうかぁ。父さんの言ってた通りだ」


 突然笑い出した彼女にドン引きしつつも俺達3人はお互いに安堵のため息をついた

 だが次の瞬間彼女の発した言葉で場は完全に凍りついた


「じゃあさ、アンタ達がアタシの生きる意味になってよ」

「「「え?」」」

 俺たち3人は同時に彼女の発した言葉の真意を理解しかねてしまった



 しかし、ここでもやはりいの一番にこの空気を氷解させたのはルイスだった


「いや、流石に。軍の人間を殺した奴に情けをかけることは百歩譲ってあったとしても、仲間にするってのはちょっと……」


 俺とベル君も慌ててウンウンと頷く

 まったく、ルイスのアイスブレイク具合にはいつも助けられるよ


「ふーん、じゃあアンタら、アタシに気を持たせるだけ持たせてあとはしらを切り通すつもりだったってことかい?」

「いやぁ、それはぁ…」

 そう言いながら俺はそっと顔を逸らす。


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