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変わったあいつ…。(一馬視点)①

 俺には昔ながらの知り合い…所詮幼馴染といった奴が存在する。

父親同士が仲が良く、近所に住んでいることもあり家族行事などに招待する仲にまで発展した…幼馴染兼腐れ縁みたいな仲だと俺は認識していた…。


 そんな、何気ない日常の風景に幼馴染の…木下一家がいるのは当然だといえた。が、そんな当然の風景が少しづつ壊れていったのは…突然だった。

 最初は何気ない変化だった。

何時もは…部署は違うが大体同じ時間に出社している父親達を見て俺も家を出る準備などをするのだが…その日は、父一人で会社に行くのを家の窓から眺めていた。

 部署が違うと仕事の内容も違ってくるから…よくある事だと思い気にしないで…見てその日は学校に行く準備をしていたが……それが二日三日…はてや一週間も続くと不審に思うのも無理はない。

 

 そんな中…決定的な事態が起きたのだ。

それは、俺の誕生日で、何時も呼んでいる木下一家を……家に呼ばなかったことだ。

流石にこれは可笑しと母も思ったのか「…木下さんは呼んでないの?」と困惑を隠せない様で父に聞いていたが、それに対する父の答えは「……」無言であった。



 誕生会は何とも微妙な雰囲気と困惑の中で行われ終始それがなくなる様子はなかった。

母は、その日何日かは父に誕生会で木下さん一家を何で呼ばなかったのか、何が有ったのか聞いていたが何度聞いても父の答えは「……」無言で答えてくれなかった。

 それに、何かを悟ったのか、母も木下さん一家の話を父にする事はしなくなった…その日を境にその話は俺たち家族の一種のタブーになったのだ。



俺の誕生日から二ヵ月が過ぎた時…母が爆弾を落とした。

「…今日、木下さんが引っ越しの挨拶に来たの……あなた何か知らされてなかったの?」

「…ハア…」

「…その様子だと…一馬は知らされてないのね…」

 

知らなかった。

何時もどうりだったしなんなら…先生もそんな話何も言ってなかった。

何より…本人に何も聞いてなかったし、そんなそぶり見せてもいなかった。まさに寝耳に水状態だ。


だが、そんな俺たちとは真逆な状態なのが…父であった。

「…あぁ…自主的に仕事を辞めて……違う場所に行くみたいだ……」

父はそう言ったきり、何も話さなかった。もう、この話はするなと……父の醸し出す雰囲気がそういていた。


母は、困惑しながらも「そ、そうなの」と言って無理やりこの話を終わらせた。

まだ、言いたい事は沢山あったろうし、何よりあの人が今の仕事を何よりも誇りに思い働いているのを知っていた、母や俺からしたら、自主的に仕事を辞めるなど考えられないのだ…何が合っても。

だからこその困惑で有り…混乱…であり、父に対しての不信感みたいなものが……俺の中で見栄えた出来事でもあった。

確実に、何かが少しづつ変化して崩れ……取り返しのいかない事になっていっているそう感じた…。


……俺は、後で後悔する事になる。もしこの時…父にもっと強く聞いていたら…怖気づいてさえいなければ……未来は変わったのかもしれないし…彼奴の助けになれたかもしれえない……と。




 壊れた日常も続けば何時もの日常になっていて……欠けた日常に何も思わなくなっていた頃にそれは訪れた…。

歴史で言うバブル崩壊…経済危機だ。

多くの人間が職を失い路頭に迷うことになるそれが…起きたのだ。

その中に俺の父も入っていて…一般家庭より少し裕福だった家庭は、一転地の底に落ちるはめになってのだ。


父は、望来プライドが高く……そんな現実を見る事が出来なく…家庭はさらに荒んでいった。

家庭内暴力、アルコール依存、暴言、しまいには母に…夜の店で働く事を強要している始末だった。

母は、日に日に痩せていき精神が病んできて限界を迎えていた……そんな最悪の日常の中何とか生きていけたのは…母の収入が有ったからだろう。


父の洗脳のせいで母は夜仕事をしてその収入を家の事などに充てていたが……そのほとんどが父の手によって消えて無くなっていた。

そんな狂った日常の中…母は突然家から姿を消した。


何時もより着飾って仕事のため家を出て行った母が…消えたのだ…。子供ながらに思った…あぁ、母はもう帰ってこないのだと。そして俺は…俺たちは…捨てれたのだと。


母の失踪が父のプライドをさらに傷つく今まで以上に荒れた日常を送ることになった。

毎日体は痣だらけになり…半袖を着れなくなった。

ご飯を食べれない日が三日、四日続くことなんてざらだ。…だから万引きが初めての俺の犯罪デビューだった。

金が無ければ…今の家には住めないから…ボロアパートに住むことになる…それでも毎日月電気ガス水道が…止まって…生活が困難で……父は働かないし、働けない…こんな奴から早く抜け出したくって…危険なバイトに目を付けた……もうドウセマトモニセイカツデキナイト……半ば諦めての考えと…人生金が物を言うと思っての行動だった。

 そんな絶望の中で…まさか……幼馴染の龍に…会うなんて思ってもいなかった…だってあいつは…今の幸せに暮らしていると思ったから……。



 バイトでの驚きの再会で感じた事は向こうも同じらしく「…お前何で此処にいるの」と言われた時は…あぁこいつも俺と同じで…相手が幸せに暮らしていると思っていたんだなと思うと……なんだか笑えてきた…。


お互いの近況報告で龍が相当劣悪な環境にいる事が分りビックリしたが……それは龍も同じらしかった……。なんか…此処まで今まで人生の大半が一緒に生活送っていたから…似ている部分も有ったが…此処まで似る必要もないのになと思ってしまったのは…内緒だ。



最悪な環境で有ったが…何とか息できる場所を見つけた俺はそれなりに……いや、前よりは人生を悲観しなくなっていた。

だから、龍が……何日もバイトを休んだ時は…とても焦った……また息がし辛くなるのかと…。


一週間して……龍は…以前教えた俺のボロアパートに突如姿を現した。

会ったらまず先に文句を言ってやろうと思っていた俺は……龍の姿を目にした瞬間そんな考えが吹き飛んでしまった。

一週間……その時時間に何が有ったのか知らないが……いいことではないのだろう……だって…此奴の目が…顔が…全てにおいて……絶望しているのが分ったから……ほんの一週間前までは……かろうじて残っていただろう光さえも今はなくなっているのだ。

いったい何が有ったというのだろうか……俺は震える体を無視して龍を…家に招きいれた。


どうか何もないことを祈りながら。

たとえそれが叶わない願いだと分っていても願わずにはいられなかったのだ。

此処から少しづつ勘違いに入ってイキマース?

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