いい加減な世界を創った本人!決意は?
父親が亡くなったと連絡を学校が行政の者から受けたのだろう俺に学校側から連絡と担任の先生校長などが、家の訪問に来た。
「…この度は、お悔やみ申し上げます」とお決まりの言葉を言った後、父の写真が飾ってある祭壇に行き線香を挙げ手を合わせてくれた。
「…こんな事があったんだ…学校は暫く…二週間休みを君に取って貰いたいと思っている」
校長先生や担任の先生の労わる言葉が俺の心に沁み渡る。…同じ言葉なのに言ってくれる人が違うとこうも違うものなのかと思うと…変な気持ちになった。
「…今…此処では聞かないが…後々仕事の事…アルバイトの事についても話も後から聞かれることになるから覚悟しておいてくれ…事が事だから御咎めは無いと思うが…一応形だけのものだ…」
「分りました」
今後の話を諸々して先生達は帰って行った。
結構な時間滞在していたのだろう…空が夕焼けに染まっている事に今更になって気が付いた。
「…アルバイトの事なんて言おうかな…」
ふとそんな言葉が自然と口をついて出てしまった。…普段はこんな間抜けな失態しないのだけど…家の中に居た父はもう居ないし…今は一人だからこそ…口から零れ出てしまったのだろう。そう考えるとこの家は随分と…住み心地がしない家になってしまったと今更ながらに思うのだ。
そもそもこの世界…いや日本は本当に治安が悪い…スラム外みたいな所はあるし…銃声は飛び交うし話していた人が何分かごには死体で見つかったなんて…前世の日本では考えられない程に酷い有様である。
比較的安全なのが政府の御膝元近くの市やだろう…完全的な安全地帯は経済の中心地の東京圏の東京市である…あそこは官僚の人間が多く警備システムがゴリゴリの体制で…不審な動きをしたら捉逮捕といった隣人国のような厳しい体制なので…犯罪など起こそうと思う人はほぼいない…裏取引は…賄賂を払い目を瞑って貰い行っているが…主な道具や資金源は国外の国で売っているから……東京都の人間が犠牲になることはない……絶対はないが…たまにポカをやって警察に連れて行かれる議員のニュースを聞く位で本当に…珍しいこの日本では貴重と言って良いくらい東京都は安全だ…昔いた場所なだけに…変な思いが胸を駆け上がる。
俺はこの日本の状態が後八十年は続くと知っている…。
此れからを考える時間を貰った俺は今後の事を考え始めた時に…昔立てていた仮説に…確信を持った。
それは、この世界が俺が考えた仮想世界日本だという仮説だ。
昔の俺は…前世の俺は「もしも何々だったら」といった感じの小説が好きだった。
もしも動物になったら…歴史上の人物になったら…異世界に転生したら…日本がこう動いていたら…世界大戦が起きなかったら…などなど挙げていたら切がない。
そんな中で特に気に入ってたのが歴史のもしも小説だった。
好きが高じてヘタなりに世界観を作って前世の日本の歴史観をそのままにして…と考えていたのだが…日本の歴史は複雑なうえに長い歴史を擁している国なので…そうそう作れたものではなかった。
そんな中手にしたのが…比較的最近の出来事からそうそう時が経ってない…バブル崩壊の出来事を舞台にした、日本の仮想世界だった。
何で、そっちにシフトしたのか…一瞬その時の自分に解いてみたくなったが…俺は…今も前世も日本史や世界史といった物が苦手であり…歴史を調べて早々に書くことを諦めた事を思い出した。
そして、その中で一番改装しやすいだけど日本にとって代打できの歴史で有るバブル崩壊を選んだのだ。
…我ながら何と単純でめんどくさがりなんだと思う。
そんな俺が作った、世界は単純に言ってしまえば日本がバブル崩壊した後どん底に落ちて…回復できなくなり…治安が悪化世界有数に麻薬や銃製造大国になってしまうが、そこで主人公が来てお決まりの展開になり政界が綺麗になって日本国内も徐々にでは有るが元の日本に戻っていくという話だ。
その主人公は…生まれる前の記憶で昔の日本を知っていて…その知識と政界子供といった一種の権利を持って日本を驚異の八十年といった短い期間で立て直すのだ。
なんとも無茶苦茶な話だと今では思うが俺は…この無茶苦茶な話を書き終え大満足していた。なんなら第二話も書こうと本気で考えていた位だ。
それ位いい出来だと本気で思っていた。…だがいざ自分が体験するとこの世界は糞だと思うしまったくいい出来だとは思わない。
まず、面倒だからと…行政のほとんどの少数派を残してほとんどの人間を裏と繋がるようにして何かあったら裏に任せる事にするシステムを考えた自分に怒りを感じる。
マジでちゃんと考えろ…ほんの少しの事で命がなくなるなんて…手抜きの設定すぎるだろ…考えるのが面倒で全て裏で片すとか……この世界生きるのにハードすぎるだろ…マジで…裁判や法律もっと調べて小説に書いておくべきだった…。
此処の法律は…此処の世界を書いて…創った俺が法律を曖昧に作っているので…穴がいっぱいなのだ。唯一まともなのが新しく作って設定した「子供保護人権法」位なものだ。他の者や考えは全てその場凌ぎの穴だらけの設定が満載だ…。
こんな曖昧な穴だらけの日本で過ごせばなんとなく…もしかしてといった仮説が生まれる。そして…俺が考えまくった渾身の…自分でいうとは恥ずかし…法律を耳にしてそれは確信になり…身に振り掛かった事でさらにそれが現実味を帯びる事となる。
確信したからには…仕方ない。
現実逃避など出来ないしそもそもそんな事をしている暇など無い…そもそも此処が俺の創った世界なら…此処は超ハードゲームの世界なのだ。
主人公と準主人公みたいなやつら以外対外重い過去を背負って生きている設定にしていて……そのほとんどが脇役なのだ。
脇役なのに辛い過去を背負って主人公の人柄に惚れ…主人公たちを守るため殆どの者が命を絶ち未来への希望を託す…。
感動あり、シリアスあり、最後はある意味ハッピーエンドみたいな終わり方で幕を閉じ…小説は終わったのだけれど…俺は今その脇役であり、死亡が確定している人物の一人かも知れないという現実に…直面しているのだ。
そもそも…小説を書いた俺はどうしたら関わらないでいいか知っているし…なんならこの後の展開も分るので何もしないで…復讐などしないで…最低限の生活をしていけばだけの話なのだが…それが、できたらどれだけ良いか…。
当たり前の物を当たり前に貰えない世界の中で…貰った愛情を俺は…無視する事は出来なかった。
だから、…俺は俺の創った世界に抗って見せようと思う。
元々穴だらけの設定の世界だ。如何にかなるだろう…。
決意を新たに俺は亡き父に誓った。
「父さん…俺のこんな考え聞いたら怒るだろうけど俺…決めたから…父さんの居る天国にはいけないと思うけど…どうか許して」
元々生活していく必要な、お金を稼ぐ為に働いていた…が、この世界で年齢を偽って働ける所が真面な訳がない。
そもそもまともな…働き場所など…俺が今住んでいる所では片手で事足りる位少ないのだ…。
父も、黒とまではいかないが…黒寄りのグレーといったぐわいの仕事をしていたが…当然それだと…二人で暮らして往くにはお金が足りなかった…だから俺が代わりに…そういった仕事をばれない様にしながら…やっていた。
こういった事をしている俺みたいな子は多くいる…そしてそんな子の環境を行政の人間より分っているのが裏社会の人間だ。
何にも言わず…年齢を偽っている事を分っていても…見逃してくれるのが裏の人間だ。
理由は簡単だ…昔の自分達もそうだったからだ…。ある意味…行政の人間より情に熱い…やっている事は道徳に反する事だが…こうするしか生きていけなかったのだろう。
…彼らも自分たちがやっておる事がいい事ではないと自覚しているのだから…金儲けだけ考え何かあったら直ぐに消すといった考えを持っていて…自分たちは正しいと考えている行政の方が厄介だ…。
考えを…決意を…。
思考錯誤した、何もなかった事にしても良かったのかもしれない…なんたって父はいい親では…なかったのだから…でもそれをするには、あまりにも俺は…父の愛を沢山貰ったと自覚していて…なかった事には出来ないのだ。
自分の手を汚してまでも父との生活をい維持事態と思うくらいには…。
だからこそ俺は、父の祭壇に手を合わせ…決意表明をする。最初で最後の決意表明を…。
「この腐った世界で…この腐った…もう手は汚れているならせめて…あなたの父さんの決意は汚さないようにする…。それ以外は無理かもしれない…この世界はそんな考えが通用しない位酷いから…本当は父さんがくれた愛をなかったことにして…最低限の暮らしをすればよかったのかもしれない……けど、貴女が俺に注いだものは本物だから…俺はこの世界で足掻いていくつもりです……。」
何処までいけるかは分らないでも、…今まで築いてきた人間関係を利用して…最初は小さな組織を創ってその中で主人公達と出会って…未来ある年号を…いや、明るい未来を速めていこうと思う。
そんな…小さな野望を…父の祭壇で伝え俺は…これからの事に思考を廻らせるのだった。