権利とは
父の葬儀は俺だけで執り行われ簡潔にして迅速に終わってしまった。
人一人の人生がこんな簡単に終わってしまうと実感して虚しさが胸を覆った。
葬儀は誰も来なかった。親戚も母も…彼らは父が堕落しきった生活をした瞬間に疎遠になりそして…他人のふりをするようになり父と関わった過去をなかったものにしたのだ。
そんな状態に不信感を抱いた行政の人たちにこれまだどういった生活を過ごしてきたのかと葬儀が終わって間もない段階で聞いてきたのだ。…笑えてきた…お前らに、何もかも崩され崩壊させられた家庭の話など聞いて楽しいものではないだろうに…。
「父は…前は行政の職員でした…世界経済を予想してお偉いさん方に何度も警告していましたが聞き入れてもらえず……面倒になった父を捨て今の行政職員の若手ホープでした…」と言えたらどれだけ楽だろうか…。だが、それはできない…。
なので嘘半分真実半分の話を聞かせてやることにした。
「…父は公務員でしたが、あ景気悪化にともない職を失ったです。…それで、酒依存症になりまともな職にもつけなく…それを知った母が父と俺を捨て家を出っていったんです。…それが原因でさらに酒に溺れる形になり賭け事にも嵌り…謝金が増え闇金にまで手をだし…バイトなども続かなくなり…俺は中学生なのを偽ってバイトなどを掛け持ちしながら…どうにか生活していました。」
「…そうか、大変だったね良く頑張った」
あぁ何も知らない貴女達だからこそそんな事が言えるのだろう。
そもそもの話父は行政をクビになる必要はなかったのだ。
父は所詮金融…数学の天才だった。…だからこそ、日本の経済と世界の経済の数字や過去の数字を独自に計算し、研究しブレーキを掛けるタイミングを場所を見つけたのだ。
そして、それを逃してしまうと日本経済はとんでもないことになって仕舞うこともその時気づいてしまったのだ。
言うかい言わないか父は悩まなかった…日本の未来の為に言って損はないとその時は思っていたからだ。
だが…上司にそれを話し終わって時に父はさぞかし絶望しただろう。
普通日本の経済が崩壊するかもしれないと聞いたら、どうにかしなければと動くが…此処でも日本政府の動きは遅かった。
まず、父の話を信じなかったのだ。…こんな景気がいいのに崩壊などしないと高を括っていたのと…まだ行政で働いて三年しかたってない若者の意見なんて、聞く必要が無いといった意見が大多数だった。
好景気の中の崩壊など誰もが鼻で笑うなか、父は必死に訴え続けたが……上司により役職を取られ…職を失ったのだ。
母は、それに激怒した。
「何でありもしない事を言ったの…御蔭で貴女は職を失い私は、笑いものよ」
泣きながら怒り、父を罵倒していた…父は、役職を失った事が相当辛かったのだろう…母の罵倒も…聞こえていなように見えた…ただ空っぽの人間がそこには座っているように感じた。
何りも自分の仕事に誇りを持ち、国の国民の力になると誓って入った行政職員…そんな誇りを打ち砕かれた時父はその時もう…ある意味で……死んでしまったのかもしれない。
だが、それが現実になったら母は受け入れるだろうかその現実を…自分の過去の愚かさを過ちを…母は、それを受けいる事が出来ただろうか。
…あの人は父が職を失って直ぐに離婚届を突き付け意気消沈す続けている父に書かせ…班を押させ通帳と最低限の荷物を持ってこの家を後にした…。
最後まで俺のことは見づに……。
母にとって俺は存在してはいけない子みたいものだから…最後の最後まで目を合わせなかったのだろう。
最低限の世話しかしていなかった母に俺はそれほど感情が動かなかったが…父は違った…。愛していたからこそ失った衝撃もより大きくなって襲ってきたのだろう…一日中の家具家電を投げ力が尽きるまで泣き叫びそのまま朝を迎え…廃人と化していった…この時父は本当の意味で壊れたのだろう心身共に…。
それから、半年が過ぎ父の懸念していた崩壊が始まった。
母は、この時何を思ったのかとても気になる…父を無職にした管理職の者達もこの悪夢のような現実を目のあたりにして何を思ったのだろうか……自分の愚かさを思いっ知っただろうか…そう考えてしまう。
父は自分の思っていたことが現実となり「すまない…すまない…」と泣きながらテレビの前で塞込み丸一日その場所から動かなかった。
父はこの国に生まれてくるべきでは、無かったのかもしれない…。俺は、そんな姿を目にしながら思った。
この国…日本の特徴は、皆が同じ能力の方が好まれる…。
皆違って皆良い…といった言葉もあるが…この国ではそれが行われるのは稀だと俺は思っている…。「出る釘は打たれる」まさにそれを体現したかのような社会では、父はとても生きずらいと思う。
縦社会、派閥、…数えたら切がない…その会社独自のルール…相変わらず生きずらい世界である。
そんな中父は「出たら打たれる釘」の状態だった。
一般人よりはるかに突飛していた数式の頭脳を持ちそれらの分野ではトップを独占していたそうだ。
留学経験もあり父の能力を認めた海外企業からは沢山のオファーが有ったそうだが、父はそれを全て蹴って日本の為に働きたいと考え行政の仕事に就いたのだ…。
だからこそ、一層遣る瀬無さが積もる…父だけ大きな貧乏くじをひて…クビにした連中は…今もノウノウト…役職についているのだからな…。
事情を聴いた行政の奴らは俺に選択権を与えることになった。
…虐待の後はないが…健全な生活を送れてない俺の今後を心配しての事で…俺の今までの生活が憲法に引っ掛かるそうで、俺は自分の今後を決める権利手に入れた。
有り難い事だと思った…。
正直俺は施設には行きたくなったからだ…憲法に掠らなかった者は問答無用で施設入りだが…小耳に聞いた話施設は監獄と言っていいくらい最悪な生活だと聞いていたからだ。
父もそこ等へんを考慮してなのか毎日最低二回の食事を俺に取らせていた…。
「…お前をあんな糞なところに…入れさせる訳にはいかない」
確かな決意の一つだった…。
だから…最悪な生活の割には俺の体は健康児とそう変わらないのだ…何か父も施設に思うところが有ったのだろう…そう考えると本当に俺は愛されてるんだなと…感じることが出来る。
権利を手にした俺は施設に行くのを拒否
安い今のぼろアパートにそのまま生活することを望んだ。行政はそれを許可した。…勿論…条件付きで。
まず、三食必ず食べさせる為にヘルパーみたいな家政婦が家に毎日派遣で来て俺の様子を行政の者に伝える事の許可…また心のケアの為に週に一回行政が指定した病院に問診しに行く事を条件にし、此れからの高校までの生活をサポートする事とした。
…大学のサポートも受けられるが俺は此れを断り「…早く働いて恩返ししたい」などと思ってもみない事を言って納得させた…本当に何処までも傲慢な人たちだ…。
「じゃ、龍君明日雅という男性の家政婦さんが来るからね…これが写真…なにかあったらこの名刺の電話番号にかけてね」
「何から何までお世話になります」
「いいのいいの…何かあったらお互い様だから…今は辛いかも知れないけど…きっと良いことがあるよ」
「…はい」
「じゃね」
笑顔で手を振って帰る馬鹿を見送って決意を確固足るものにした俺は…復讐の準備を始める。
…拝啓父さんへ
笑ってしまうくらいこの世界はおかしのかもしえません…でも許してください…こんなおかしな世界をどうにかする様に変えていきます…それが、俺の罪滅ぼしです。