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異能監獄記  作者: 濃支あんこ
2 救済

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弔い

「おや、瑪瑙さんではないですか。奇遇ですね」

「神構じゃねえか。まーたしかに奇遇だよなー。始番号会議以外で会うこと早々無えし」


 まあ奇遇などではなく、ある程度瑪瑙の行動を予測してこの場に出向いたのだが。口にしない方が好感度が上がる事柄など、この世には掃いて捨てるほどある、何も問題などないと神構大誠は判断する。自分と同程度の身長しかない年上は、人の良さそうな笑みを浮かべていた。


「先日はありがとうございました。あの後榊さん達から怪しまれたりはしませんでしたか?」

「大丈夫だったぜ!心配してくれてありがとな~」


 自殺屋さんでの一件にて。瑪瑙とN4の面々、I配属が会話をしていた所に神構が現れたのは偶然ではない。元々二人が口裏を合わせて実行されたものである。

 おそらくI配属は海漣が榊、菫色に接触するだろう、自殺という言葉を聞いて榊が瑪瑙を呼び出すだろうと神構は考えたのだ。それならばと瑪瑙に話をつけ、わざと自殺屋さんの正体が精神干渉系異能者であるという説を話してもらった。そこから、神構が精神干渉系であることも流れで伝えてもらったのだ。そうすればI配属は警戒して、精神干渉系を無効化できる花厳を出してくるだろうと踏んでいたのだが……。結果は、ご存知の通りである。


「んで、結果はどうだったんだ?」

「……救えませんでしたよ。先日、円の死亡報告を監獄から聞きました」

「そっか」


 ある意味、これぐらい素っ気ない方が気楽かもしれない。N6を見渡している方が、誰も彼もがギリギリで落ち着けるが。あれはまた、別の安堵だ。


「残念だったな~。まっ、オレにこんなこと言われたって君は何とも思わねーんだろうけど」

「ええ。俺も円も納得した上で、不可能だと断じた上での結果ですから。もしも、など存在しませんよ」

「相変わらず薄情なのかそうじゃねーのかよくわかんねーな」

「心外ですねえ」


 そう見えるように振舞っている節も無くはないので、否定はしないが。神構だって普通に親愛ぐらいは持ち合わせている。それが発露される機会が少なすぎるのでは?と言われても神構は営業スマイルを浮かべているだろうが。


「円の後任を見つける事が今の俺の課題ですから。感傷にひたっている暇などありませんよ」

「おーおー、仕事人間でご苦労なこって!」

「……貴方みたいな理由で始番号(ナンバー)をやっている者など、早々居ませんから。俺ぐらいが普通でしょう」

「そうかー?N配属総代の嬢ちゃんなんて、神構の言う例外の塊みたいなもんじゃねーか」

「アレはバックに監獄が居ますから、また別でしょう」


 平常時はおどおどした普通の少女が、脳裏を過る。彼女とはなるべくやり合いたくないものだ。それこそ、先日の一件のような事で無ければ敵対が確定した時点で神構なら身を引いている。似たようなことは相手にも思われていそうだが。


「にしても、ひでーじゃねえか。オレの異能も言っちまうなんて。オレ異能隠してんのによー」

「一度目の俺に対する罵詈雑言があまりにも酷かったので、つい」

「あー、仕方ねーじゃんか。あれはちょっと……ハッスルしちまったんだよ、うん」


 どうにも嘘くさい。が、神構には彼女が何かについて嘘をついていることは把握出来ても、具体的に何が嘘なのかまではわからないのである。

 異能【嘘好】。嘘をついている相手が神構に対して微かに親近感などの好感を抱かせるだけの、しょぼい精神干渉系異能。異能は自動発動故に、逆説的に相手が嘘をついていることがわかるという知覚系的な側面もあるが。前述したように詳細は分からない上、この異能は舞台上で演技する役者にも反応するようなポンコツである。つまり、基本的にはまるで使い物にならない異能なのだ。


「まあ追及しても貴方は口を開かないでしょうから、そのことについては何も言いませんけど」

「よくわかってんじゃねえか」


 精神干渉系ではないが、それに近い真似事ができる。なお、それは異能由来か何ら関係がないのかすら不明。その時点で、瑪瑙珠雀という人物の底が読めないことは明白だ。監獄側がどこまで把握しているのかも分からない、という意味でも。


「しかし些かアンフェアではありませんか?俺はあなたに自分の異能を教えたというのに……」

「いやだって君の異能しょぼいじゃんか。こんなん知ってたって大して変わんねえよ」

「酷い言い草ですねぇ。情報というものは利用価値が全てですが、利用価値がわかるまでは情報に値をつけない、なんてことは現実的には不可能ですからね。だからこそ交渉というものが成立するというのに」

「そんなこと言っていいのか~?オレが協力してやんなきゃ誘導できなかったくせによー」

「ええ。ですから言ったでしょう?追及する気は無い、と」


 神構からすれば、何故瑪瑙が協力してくれたのかが謎だが。別に報酬を用意していない訳では無いのだが、その報酬も見合うものとは思えない。が、正直諸々を守り忠実に動いてくれればなんでも良いのだ。情報は多いに越したことはない、という意味では少々不服だが。


「ならいいけどよ。まっ、再三言うが、オレが言えるのは精々お悔やみ申し上げますーぐらいだ。君にはこんな言葉もいらないだろう?でも一応言うぜ。なんたって後輩の友人が死んだんだからよ、それぐらいは先輩として言うべきだっての」

「……そうですか。では、俺はこの辺りで」

「おーまたなー!」


 後輩、という言葉の響きは。神構にとっては、久方ぶりに聞いたものだった。外にいた頃は毎日のように聞いていたような気がするが、ここでは自分は恐れられる対象だから。そう思えば、随分自分も変わったものだ。去っていく瑪瑙の背中を眺めながら、神構はそんなことを考えていた。

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