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episode 4  カキツバタの青年



カキツバタ色の髪と大きく見開かれた瞳は深い碧の青年




「ステ・・・ラ・・・?」そう呟いた口が震えているのがわかる




「あなたは、誰?」



そういうと彼の瞳から動揺が消え敵意の目に代わる



「そんなわけない。ステラが、ここにいるわけない。おい女。お前は一体誰だ?」



じりじりと近づき彼の刀の先が私の喉まで近づく

なに。この人・・・。



「確かにここら辺からあの人の波動を感じた。来てみると女が一人。そして肉食獣が一頭倒れてくたばってやがる。答えろ女。お前はなんだ?」



その瞳には殺す。その一文字だった。

動けば死ぬ。答えても死ぬ。もう結局死ぬじゃないか。



「あーもう」



笑えてくる

なんでここ最近こんなことばっかなんだ

別に平穏に生活したいだけじゃないか。

なんで見ず知らずの男にそんなとやかくいわれなきゃいけないの



「・・・誰って私は神崎彼方よ。それ以外の何者でもない!!トカゲをやったのはお前!?そうよ!知らない間に斬ってたの!!私だって知らないよ!ここどこよ!あなた誰よ!!なんで毎度毎度殺されそうにならなきゃいけないの!!!!!」



はぁはぁ。と息をあげる

わかってる。そんなこと言ったってどうしようもないんだ



「私は、生きたいだけ・・・」



やばい。泣きそう

悔しくなって顔を男からそらす


顔をそらした瞬間立ち眩みがする

あれ?なんだろう、視界が、グワングワンする



「おいっ!」


カキツバタ色の青年が手を伸ばすのがわかる


そこで私の視界は真っ暗闇に包まれた





ゆらゆら 揺れる



あーなんだろう

すごく懐かしいな



心地よい揺れに重たい瞼を開く


目の前にはサラサラのカキツバタ色の髪


綺麗


気づけばその髪に手を伸ばしていた


さわ さわ



「・・・・おい」



「・・・ん」



「お前、馬鹿にしてんのか・・・」




「・・・え?・・・っ!!!!えええええええええええ!!!!!」



どうやら心地よい揺れはカキツバタ君におぶられていたみたいだ



「~っ!!おい!耳元でうるせーよ!!」



「だって!どーゆー風の吹き回し!?」



「お前がスクーリグの毒を食らったからだろ」



「スクーリグ?」



「さっきのトカゲみたいなのだ」



思えば尻尾で飛ばされたときに脇腹から出血したのを思い出した



「スクーリグには尾に毒がある。誰もが知ってることだけどな」



「へー、知らなかった」



脇腹を見ると綺麗に薬草などで応急処置がしてあることが分かる

なんだ。この人、いい人なんだ。見た目で人は判断しちゃいけないっておばちゃんがいってたなぁとしみじみ思う



「言っておくけどな、お前のことまだ敵だとおもってるからな。変な動きしたらすぐに斬る」



「でも、治療してくれたんだね。ありがとう」



「・・・お前には死なれちゃ困るからな。大事な情報源だ」



ゆらゆら揺れる 揺りかごみたいに

安心したらどんどん眠くなってきた

なんだろう

・・・落ちてく・・・



「カキツバタ君、ありがとう・・」



「っ!!!」




その言葉にカキツバタ色の青年は後ろを振り返るとすやすや眠る女



「なんでお前が・・・」


その先の言葉を飲み込む

さっきまで刀を向けてた相手の背中で無防備に寝てる女があの人と重なる



《カキツバタ色の綺麗な髪!よろしくねカキツバタ君!!》



無邪気にそう言って微笑んだあの人

確かにあの女に会う前にあの人の波動を感じた。俺が間違えるわけない


青年は空を見上げた




「どこにいるんだよ・・・ステラ・・・」



切なく零れた一言は森に消えていった








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